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  3. 子どもの認知面の発達と、子どもを導くための学問

生理学的年齢と運動機能について紹介した前回のコラムに続き、今回は認知的年齢(Cognitive Age)をはじめとする子供の認知面の発達と、その理解に基づいた関わりに必要な教育学について触れていきたいと思います。

目次

    認知的年齢 (Cognitive Age)

    認知的年齢とは、注意・集中・記憶・理解・応用・判断・問題解決を要する知的思考プロセスを管理する能力を推し量るものです (4)(5) 。下記の表は暦年齢と認知的成長のマイルストーンを表していますが、認知的年齢は遺伝と環境によって前後すると考えられています。

    認知的年齢には個人差があり、また測定・判断が難しいため、各種ガイドラインには暦年齢が使われます。例えば、米国小児科学 (American Academy of Pediatrics) は、4歳以下の子供はかっちりした (structured) 水泳のレッスンを受ける準備はできていないと述べており、その理由としてこの年齢の子供は水泳の指示を理解して安全・効果的に実行に移す事が身体と認知の両面で難しいことを挙げています (6)。

    教育学 (Pedagogy)

    ”to lead the child(子どもを導く)” を語源とするPedagogyは、教育の理論や実践に関する学問です。よりよく子どもを導くために、ユーススポーツに関わる大人は、前回のコラムで紹介したような発達生理学や運動学に加え、子どもの認知面の発達に適した教育学に基づくアプローチを学び、実践する事が大切です。

    ここでは、基本的な例としてスキャフォールディングと内部意識と外部意識のコンセプトを紹介します。

    スキャフォールディング (Scaffolding)

    この教育学用語は、過去の経験と現在の行動を繋げる事を目的とした「足場づくり」を意味します。子どもが与えられたタスクをこなすための手助けをするのではなく、いずれは子ども自身が自分の力で同様の問題を解決できるような能力を育むことを意図した教育方法で、スポーツや運動にも応用されます。

    足場づくりを意図したトレーニングの積み重ねにより、似たような・もしくは更に発達した動作やスキルを、より少ないフィードバックでより効果的に習得できると考えられています。ゆくゆくは子どもが自分のミスや動作エラーに気付き、自分で修正できるようになるよう、子どもの成長に応じて指導者は足場づくりを減らしていきます。

    内部意識と外部意識

    足場づくりの際に用いられるキューイングやフィードバックの基本的な分類に、内部意識 (Internal Focus)と外部意識 (External Focus)があります。前者は動作そのものへの意識を、後者は動作の結果への意識を強調します。例えば、スクワットを指導するときの「お尻を後ろに引いて」は前者、「椅子に座るイメージで」は後者と言えます(その他の例は下記表を参考)。

    効率的な動作パターンを習得する上では外部意識への指示がより効果的とされています (1)(3) 。内部意識への指示による特定の身体部位への意識の集中は、動きのぎこちなさにつながることが理由の一つとして考えられます。競技者本人においても、技術が熟練するにつれて本人の意識は前者から後者へと移行していくことが報告されています (1) 。

    まとめ

    本コラムでは具体的に触れませんが、子どもが身体と認知を統合していく過程において求められるスポーツ環境の要素として
    1.適切な難易度であること
    2.双方向であること
    3.満足感が得られること
    の三つが挙げられます。

    このようなスポーツプログラムの中で、子どもは学んだ動作をより自動的・効果的・自然なものへと昇華させていきます。子どもの認知面での発達に則した、スキャフォールディングや内的・外的意識へのフィードバックの意図的な使い分けをはじめとする学問に基づく指導は、このプロセスを加速させます。「子どもを導く」を語源とするPedagogy (教育学)は、子どものスポーツに関わる大人にとって必修科目と言えるでしょう。

    【参考文献】
    1)Benjaminse, A., Gokeler, A., Dowling, A., Faigenbaum, A., Ford, K., Hewett, T., … Myer, G. (2015). Optimization of the anterior cruciate ligament injury prevention paradigm: Novel feedback techniques to enhance motor learning and reduce injury risk. Journal of Orthpaedic and Sports Physical Therapy, 45(3), 170-182.
    2)Faigenbaum, A. D., Lloyd, R. S., & Oliver, J. L. (2020). Essentials of youth fitness. Champaign, IL: Human Kinetics.
    3)Kal, E., van der Kamp, J., & Houdijk, H. (2013). External attentional focus enhances movement automatization: a comprehensive test of the constrained action hypothesis. Human Movement Science, 32(4), 527-539.
    4)Kushner, A., Kiefer, A., Lesnick, S., Faigenbaum, A., Kashikar-Zuck, S., & Myer, G. (2015). Training the developing brain, part II: Cognitive considerations for youth instruction and feedback. Current Sports Medicine Reports, 14(3), 235-243.
    5)Myer, G., Faigenbaum, A., Stracciolini, A., Hewett, T., Micheli, L., & Best, T. (2013). Exercise deficit disorder in youth: A paradigm shift towards disease prevention and comprehensive care. Current Sports Medicine Reports, 12(4), 248-255.
    6)Weiss, J., & American Academy of Pediatrics Committee on Injury, Violence, and Poison Prevention. (2010). Prevention of drowning. Pediatrics, 126(1), e253-e262

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