四つ這いでのエクササイズはリハビリテーションの場面や、スポーツ選手のトレーニングでも多く導入されています。そのレパートリーは多岐にわたり、運動の目的や身体に及ぼす影響も様々です。今回は四つ這いでのエクササイズの効果を、正常発達と姿勢制御の視点から考察していきたいと思います。

赤ちゃんが四つ這いを取れるようになる身体機能の条件は?

人間の最大の特徴は「2足直立位」をとり、「2本足で移動する:歩く」というところだと思います。ですが、生後間もない頃には歩くことはおろか、立つことすらできません。

出生から歩くまでには「姿勢と運動」の発達段階に従って、首が座る→座る→這う(ずり這い及びハイハイ)→つかまり立ち→歩くという段階を踏み、およそ1年間の準備期間を必要とします1)。この段階を見ていくと発達が進んでいくと徐々に身体重心の位置が高くなっていくことがわかります。

そこで四つ這い(ハイハイ)ができるようになるための条件としては「頭部が安定する」「体幹を垂直に保持することができる」の2点が絶対条件になります。これらは重力に対して脊柱を伸展位に保持する能力「抗重力伸展活動」と言えます。

そこからうつ伏せで肩甲骨の上方回旋を伴った上肢でのプッシングが必要になり、これができるようになると、身体重心位置を高めることで腹這いでの移動が可能になります。

さらにそこから下部体幹を動かせるようになって、四つ這いを保持するようになり、初めて脚に荷重が加わり膝の内側付近で支持します。

この際、骨盤が前後に同様しないように、股関節周囲の筋肉による安定化が行われており、そこに足指の蹴りが加わって移動が始まります。

また四つ這いを取る際は、四肢〜体幹がくずれないように筋収縮による姿勢保持が行われますが、このように身体部分が多数接地し、下から持ち上げるようにアーチをかける筋活動のことをブリッジ活動と呼びます2)。

四つ這い運動では大胸筋や腹筋群や股関節屈筋によってアーチを作って姿勢の保持を行うことになります。

これらから四つ這いが可能になる条件としては ①頭頸部〜体幹及び下肢の抗重力伸展活動 ②上肢〜肩甲帯での荷重支持 ③股関節周囲筋による安定化 ④ブリッジ活動 と私見ですが考えています。

姿勢制御能力の向上で重心を高い位置で保持できるようになる

前述したとおり、人間は生後1年ほどで歩けるようになり、その過程は頭頸部・体幹・下肢の伸展と体重支持、そして姿勢制御に必要な神経機能を獲得するプロセスと言えます。

この過程で運動は「爬虫類の体幹運動」、「イヌ・ネコの四つ足移動」、「人の2足歩行」というふうに進化する系統発生と同様のプロセスを生後の発達でも行っていると考えられます。

高草木はこの発達の過程を以下のように考察しています3)。 ①基盤となる歩行の神経機構は脳幹や脊髄に存在し、これは動物が生存するための自律神経機能と密接に関係する ②歩行は捕食や逃避など情動行動のヴァリエーションの一つ ③大脳皮質の発達は手の精緻運動のみに留まらず、2足歩行の獲得にも重要な役割を果たす ④環境と相互作用する身体構造(重力上における筋・骨格系や精緻な感覚需要の仕組み)の発達が適応的な歩行の発現に重要

特に③・④で書かれているように、手や足から感じとる感覚刺激が大脳皮質にある感覚野へ入力され、そこから姿勢制御に置いて重要な先行性・随伴性姿勢制御(いわゆるAPA’s)に繋がっていくことになります。

正常発達では四つ這いを通して、様々な感覚刺激が加わることが、大脳皮質の発達に寄与し、そこから姿勢制御能力が向上し、結果的に歩行や四肢の精密な随意運動につながるということになります。

つまり四つ這いでの運動には「適切な姿勢制御及び運動制御の再強化(再学習)」といった側面があるのではないかと個人的には考えます。

姿勢制御能力の改善に四つ這いは適している

ここまでの流れから、発達の過程(系統発生の過程)はまさに姿勢制御能力の向上の流れにつながっていくと考えられます。この能力が身につくことでさらに難しい上肢や下肢での巧緻動作へと繋がっていくことになります。

姿勢制御にエラーが起これば、巧緻動作にもエラーが生じる可能性が高く、日常生活動作であれば代償動作や使い痛み、スポーツ動作であれば重大な故障への繋がるリスクと秘めています。

この姿勢制御を行っている筋肉はいわゆるローカル筋(コアマッスル)になるわけで、実際に四つ這いでの運動はこれらの筋肉に対して効果的であるという知見も得られています。

姿勢制御や運動制御の部分で何か問題がありそうであれば、四つ這いでのチェックやエクササイズを処方することも是非検討してみてください。

次回はこの四つ這いやそれに近い運動での評価方法について記載していきたいと思います。

【参考文献】 1)関勝男, 幼児の運動発達について. 運動生理 9, 215-221,1994 2)冨田昌夫, クラインフォーゲルバッハの運動学. 理学療法学 21(8), 571-575, 1994 3)高草木薫, 歩行の神経機構, Brain Medical 19(4),307-315, 2007

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