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卒前・卒後教育と生活行為向上マネジメント〜第5回:卒後教育における生活行為向上マネジメントの活用〜

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竹林崇 大阪府立大学 教授

日本作業療法士協会は,生活行為向上マネジメントをすべての作業療法士が実践することを方針として示している.協会の卒後教育の柱である生涯教育制度においても,2016年度以降は生活行為向上マネジメントに関する研修や認定制度がその中に組み込まれており,より多くの作業療法士が生活行為向上マネジメントを学ぶ機会を得ている.本コラムでは,卒前・卒後と一貫した教育の中で,臨床場面で生活行為向上マネジメントを導入する方法や活用について解説していく.

目次

    日本作業療法士協会が目指す生活行為向上マネジメントの臨床への普及

    「理学療法士作業療法士学校養成施設指定規則」1)および「指導ガイドライン」2)が改定され,実習時間の規定,臨床実習指導者資格,診療参加型への実習形態の変更等が示された.この卒前教育の変更は,卒後教育のあり方にも大きく影響するものであり,臨床現場での教育指針も必然的に見直しが迫られている.

    日本作業療法士協会(OT協会)は,生活行為向上マネジメント(MTDLP)をすべての作業療法士が実践することを方針として示している3).そもそも,MTDLPは新しくつくられた作業療法ではなく,経験の有無に関わらず,誰もが同じ臨床思考過程で作業療法実践ができるように,その過程を「見える化」したツールである4).

    誰が使っても,標準的な思考過程に即した実践やトレーニングができるようにつくられていることから,特に臨床経験の浅い,若い療法士に活用してもらうことを想定している.「作業療法の質の標準化」を目指したものであり,卒後教育へのMTDLPの導入は当然の流れといえるかもしれない.

    生涯教育制度における生活行為向上マネジメント研修制度の位置づけ

    MTDLPの研修制度は,2016年度から生涯教育制度内に位置付けられた(図1).まず MTDLP研修制度の基礎研修を,生涯教育制度・現職者選択研修の必修研修することで,卒後により多くの作業療法士が受講することになった.

    次にMTDLP 研修制度の実践者研修と事例検討会での事例発表を,生涯教育制度・現職者共通研修の「10.事例報告」に読み替えすることとなった.さらにMTDLP指導者認定に必要な1事例の登録は,認定作業療法士取得要件と連動することとなり,卒後のスキルアップの一環にMTDLPが組み込まれている3).

    認定作業療法士を必ずしも全協会員が目指している訳ではないかもしれないが,生涯教育制度に組み込まれたことで,より多くの作業療法士がMTDLPを卒後にも学び実践する機会を得ている.

    図1)生涯教育制度におけるMTDLP研修制度(日本作業療法士協会:作業療法ガイドライン2018より転載)

    卒後教育としてのMTDLPの導入

    柴田5)は,MTDLPの各シートを電子カルテに組み込み,MTDLPを業務として回復期に導入する取り組みを報告している.その結果,職場のおける職員の変化として,①ICFに配慮し,バランスのとれた作業療法の評価・介入に対しての意識が向上したこと,②クライエントや家族はもちろんのこと,病棟の看護師や介護スタッフ・医師・リハビリテーション職種・ケースワーカー・介護支援専門員・申し送りを行う訪問リハスタッフなど,多職種連携の動きが活発化してきたこと,③在宅訪問や退院後訪問など,具体的な地域生活をイメージするために行動を起こすことが定着し,入院中から地域生活ヘの展望をもった介入を行えるようになってきたと述べている.

    また,電子カルテなどハード面の整備と,研修などのソフト面の整備により,いつでも実施できる環境を作る必要があるとも述べており,施設全体としての取り組みの必要性が理解できる.

    さらにOT協会では,「MTDLP実施・活用・推進のための情報ターミナル」(図2)と題して,協会が発刊する機関紙「日本作業療法協会誌」に2018年以降6),MTDLPに関する情報を連載している.MTDLPアプリに関することや各県士会での取り組み,MTDLP合格事例のダイジェストなど,臨床場面で活用できる情報が多く載っているため参考されたい.こうした特徴のある施設や,MTDLPを活用した事例や取り組みの報告が増えることで,卒前・卒後のMTDLP教育がさらに深まっていくのではないかと期待される.

    ただし,作業療法に関する理論には代表的なものだけでも,OS(作業科学)7),CMOP-E(作業遂行と結びつきのカナダモデル)8),MOHO(人間作業モデル)9),OTIPM(作業療法介入プロセスモデル)10),OBP2.0 11)など,多くのものが存在する.前回のコラム『第4回:卒前教育における診療参加型実習での生活行為向上マネジメントの活用』でも述べたように,MTDLPはあくまでもひとつのツールでありシート群に過ぎない.

    MTDLPは日本のOT協会が,主に介護保険領域での日本の作業療法の「見える化」「標準化」を図るために開発したもので,現時点ではまだひとつの実践モデルとして確立したものではなく,他の理論に比べ必ずしもエビデンスの高いことが実証されているわけではない.

    OT協会が勧めるからと盲目的にならず,作業療法士という専門職として,眼前の対象者にとって適切なツールや理論を組み合わせ,エビデンスレベルの高い効果的な評価・介入を行うことが求められる.また,MTDLPを推進する関係者は一刻も早く公衆衛生・疫学の観点からエビデンスを調査する必要がある.

    図2)MTDLP実施・活用・推奨のためのターミナル情報(日本作業療法士協会:日本作業療法協会誌2018より転載)

    【共著】
    小渕 浩平 氏(JA長野厚生連 長野松代総合病院 リハビリテーション部 作業療法士)

    【参考文献】
    1)文部科学省 厚生労働省 令第四号(指定規則改正)(http://www.japanpt.or.jp/upload/japanpt/obj/files/aboutpt/03_shiteikisokusyourei_181005.pdf)
    2)厚生労働省医政局長:理学療法士作業療法士養成施設指導ガイドラインについて(http://www.japanpt.or.jp/upload/japanpt/obj/files/aboutpt/01_Guideline_181005.pdf)
    3)日本作業療法士協会:作業療法ガイドライン2018(http://www.jaot.or.jp/wp-content/uploads/2018/07/OTguideline2018-0.pdf)
    4) 日本作業療法士協会:事例報告書作成の手引き(第2.2版)生活行為向上マネジメント事例(http://www.jaot.or.jp/wp-content/uploads/2010/08/tebiki-MTDLP2.2.pdf)
    5)柴田八衣子:生活行為向上マネジメントを導入する.澤田辰徳(編):作業で結ぶマネジメント―作業療法士のための自分づくり・仲間づくり・組織づくり.医学書院,pp134-135,2016.
    6)日本作業療法士協会:MTDLP実施・活用・推進のための情報ターミナル.日本作業療法協会誌77.pp44-45,2018(http://www.jaot.or.jp/wp-content/uploads/2018/09/8c562c58bdc88cbe6e5f7ab83e37f28e.pdf)
    7)ルース・ぜムケ(著),吉川ひろみ(訳):作業療法のための作業科学の未来.作業科学研究6:2-14.2012.
    8)カナダ作業療法士協会(著),吉川ひろみ(監訳):作業療法の視点―作業ができるということ.大学教育出版,2000.
    9)Kielhofner G(編著),山田孝(監訳):人間作業モデル―理論と応用.第4版,協同医書出版社,2012.
    10)Fisher AG; Occupational Therapy Intervention Process model. Three Star Press, 2009.
    11)寺岡睦,京極真:作業に根ざした実践と信念対立解明アプローチを統合した「作業に根差した実践2.0」の提案.作業療法33(3):249-258,2014.

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