卒前・卒後教育と生活行為向上マネジメント〜第4回:卒前教育における診療参加型実習での生活行為向上マネジメントの活用〜

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竹林崇 大阪府立大学 教授

「理学療法士作業療法士学校養成施設指定規則」および「指導ガイドライン」が約20年ぶりに改正され,臨床実習に関しては,診療参加型の実習形態が推奨されている.また日本作業療法士協会は,臨床実習における作業療法の臨床思考過程の具体例として,生活行為向上マネジメントを挙げ,作業療法参加型実習を提唱している.本コラムでは,作業療法の卒前教育にあたる臨床実習の現状と,診療参加型実習における生活行為向上マネジメントの活用方法について解説する.

臨床実習のいま

理学療法士および作業療法士の教育等を規定している「理学療法士作業療法士学校養成施設指定規則」1)および「指導ガイドライン」2)が,約20年ぶりに改正され,2020年4月1日より施行されている.その中でも臨床実習に関しては,実習形態として診療参加型の実習が推奨されている2).

日本作業療法士協会(以下,OT協会)は作業療法臨床実習指針2018にて,臨床実習の到達目標を 「臨床実習指導者の指導・監督のもとで,作業療法士としての,①倫理観や基本的態度を身につける,②臨床技能を実践できる,③臨床実習指導者の作業療法の臨床思考過程を説明し,作業療法の計画立案ができること」 としている3).

さらにOT協会は,作業療法臨床実習の手引き2018 4)の中で,クリニカル・クラークシップ(Clinical clerkship:CCS)方式や臨床チームによる診療参加型の指導体制を推奨(図1)している. 図1)臨床実習指導体制の概要 (日本作業療法士協会:作業療法臨床実習指針2018より転載)

作業療法における臨床実習と生活行為向上マネジメント

上記「③臨床実習指導者の作業療法の臨床思考過程」の具体例として,OT協会4)は生活行為向上マネジメント(Management Tool for Daily Life Performance:MTDLP)を挙げている(図2).

またOT協会は作業療法教育ガイドライン 2019において,実習生が診療チームの一員として加わり,臨床実習指導者の指導・監督の下で行う作業療法参加型臨床実習を提唱5)しており,小林6)は作業療法参加型では,診療参加型による指導に加え,MTDLPを活用した臨床実習を検討する必要があるとしている. 図2)臨床思考過程(左)とMTDLP(右) (日本作業療法士協会:作業療法臨床実習の手引き2018 より転載)

どう臨床実習でMTDLPを使うのか

小林は7)「診療参加型+MTDLP=作業療法参加型実習」という考え方で進めると,「対象者のニーズを把握し,アセスメントからプラン立案まで行うことにつながる」「作業療法士の思考過程が明確になる」等の意見が養成校教員より挙げられたことを報告している.

具体的には,診療参加型実習ではわかりにくいとされる対象者の全体像を把握するために,MTDLPシートを活用することと,実習指導者が学生と一緒にMTDLPシートを作成し,一緒に臨床実践を進めるやり方が望ましいと提案8)している.

2017年度に開催された学校養成施設カリキュラム等改善検討会では,学生と卒業生に対して厚生労働省が実施したアンケートの中で,「臨床実習は,臨床に役立っているか」の質問に対し,9割は「役に立っている」と回答したものの,養成校の授業と臨床実習で必要とされた知識との一致度では,3割しか「一致している」と回答せず,約7割の者が「養成校での授業は不足している」と答えている9).

このことからも,養成校の授業と臨床実習の乖離が示されており,養成校と臨床施設・臨床家との連携の強化は必須と考えられる.

診療参加型実習におけるMTDLPの使用報告はまだ多くはなく10),筆者らも取り組んでいるところではあるが11),協会も事例報告書の作成にあたり今後はMTDLPを活用した報告書も検討すべき4)としており,臨床教育でのMTDLP利用報告の増加が期待される.

臨床実習におけるMTDLPの教育効果は?

ただし,MTDLPはひとつのツールでありシート群に過ぎない.現在のところ、教育効果に関する研究や調査は皆無であり,必ずしも教育効果が高いわけではなく,あくまでも熟練した作業療法士の臨床思考過程を「見える化」したものといった認識は重要である.

それでも「30㎝の作業療法」として,学生のうちに作業療法の基本的な捉え方・思考過程に触れることで,臨床家としての一歩を踏み出しやすくなる可能性はあるかもしれない.「MTDLPを使う」という手法が目的とならないよう,眼前の対象者に合わせた適切なツールの選択と臨床思考過程の指導が,臨床教育者には求められる.

【共著】 小渕 浩平 氏(JA長野厚生連 長野松代総合病院 リハビリテーション部 作業療法士)

【参考文献】 1)文部科学省 厚生労働省 令第四号(指定規則改正)・(http://www.japanpt.or.jp/upload/japanpt/obj/files/aboutpt/03shiteikisokusyourei181005.pdf) 2)厚生労働省医政局長:理学療法士作業療法士養成施設指導ガイドラインについて・(http://www.japanpt.or.jp/upload/japanpt/obj/files/aboutpt/01Guideline181005.pdf) 3) 日本作業療法士協会:作業療法臨床実習指針2018(http://www.jaot.or.jp/wp-content/uploads/2013/12/shishin-tebiki20181.pdf) 4)日本作業療法士協会:作業療法臨床実習の手引き2018(http://www.jaot.or.jp/wp-content/uploads/2013/12/shishin-tebiki20181.pdf) 5)日本作業療法士協会:作業療法教育ガイドライン 2019(http://www.jaot.or.jp/wp-content/uploads/2013/12/Education-guidelines2019.pdf) 6)小林幸治:未来に活躍する作業療法士のための臨床教育のあり方.OTジャーナル53(6):554-558,2019. 7)小林幸治:養成教育におけるMTDLP普及の意義と取り組み①第三次5ヵ年戦略における作業療法士の技能の向上に関する事業 MTDLP推進協力校制度の紹介と養成校への取り組み啓発.日本作業療法士協会誌84:36,2019. 8)小林幸治:生活行為向上マネジメント(MTDLP)を用いたいクリニカル・クラークシップ(CCS)方式実習の進め方.小林幸治,岩崎テル子(編):今こそ変えよう臨床実習!作業療法のクリニカル・クラークシップガイド.三輪書店,2017,pp76-81. 9)厚生労働省 第3回理学療法士・作業療法士学校養成施設カリキュラム等改善検討会:資料4-1学生,卒業生に対するアンケート結果.2017(https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku-Soumuka/0000182809.pdf) 10) 松本幸樹,他:作業療法を見える化した教授法は学生の実習課題の負担軽減と自己効力感の向上に繋がった-生活行為向上マネジメントシートを活用した臨床教育の実践-.作業療法 38(3):351-357,2019. 11)小渕浩平,他:急性期病院の診療参加型実習におけるMTDLPを用いた臨床教育の有用性について-事例報告-.日本臨床作業療法研究,投稿中.

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