卒前・卒後教育と生活行為向上マネジメント〜第2回:生活行為向上マネジメントの活用方法〜

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竹林崇 大阪府立大学 教授

生活行為向上マネジメントは,対象となる人の生活を支援する包括的な実践方法である.7段階のプロセスで構成され,3つの基本ツールと補助的なシートを用いることで,経験の浅い療法士であっても,熟練の療法士の思考過程を理解し,対象者に対してより効果的な支援を提供できるとしている.本コラムでは,各シートの特徴や実際の運用方法などを,生活行為向上マネジメントのプロセスと共に解説していく.

生活行為向上マネジメントのプロセス

生活行為向上マネジメント(MTDLP)は,対象者が大切にしている,本人にとって意味のある生活行為に焦点をあてるために,7段階のプロセスで構成されており(図1),3つの基本ツール(生活行為聞き取りシート、生活行為向上マネジメントシート、生活行為申し送り表)を用いる1)としている.

また,補助的なシートとして, ・興味・関心チェックシート (https://www.jaot.or.jp/files/page/wp-content/uploads/2018/12/interest-checksheet2.docx ) ・生活行為アセスメント演習シート (https://www.jaot.or.jp/files/page/wp-content/uploads/2018/07/assessment-practicesheet2.docx ) ・生活行為向上プラン演習シート (https://www.jaot.or.jp/files/page/wp-content/uploads/2018/07/plan-practicesheet2.docx ) ・生活行為課題分析シート (https://www.jaot.or.jp/files/page/wp-content/uploads/2018/07/subjectanalysissheet2.xlsx ) ・医療への生活行為申し送り表 (https://www.jaot.or.jp/files/page/wp-content/uploads/2018/07/medical-messagetable-excel3.xlsx ) などもある1).

今回は基本ツールとされる3つのシートについて,その運用方法を解説していく. 図1.生活行為向上マネジメントのプロセス (日本作業療法士協会:生活行為向上マネジメントのプロセスとシートより引用)

生活行為聞き取りシート

生活行為聞き取りシート (https://www.jaot.or.jp/files/page/wp-content/uploads/2018/07/hearingsheet2.docx

生活行為聞き取りシートは,対象者の困っている問題,改善したいことを聞き取り,生活行為の目標を明らかにするもので,支援の根幹となるツールである.このシートは,NPO法人地域保健研究会が実施した平成19年度老人保健健康増進事業「身体運動科学と作業療法学手法による生活行為向上プログラムの開発・介入研究」2)で使用されたIADL取り組みシートを参考に作成された.

生活行為聞き取りシートには,対象者の動機づけを図るために,「実行度・満足度」の自己評価欄が設けられている.また,新人でも使用できるよう聞き取りの例文が示されている.対象者がしたい生活行為を思いつかない場合には,ヒントを得るためにサブシートとなる興味・関心チェックを使用することもある.さらに,認知症者や長期間の寝たきり者など,対象者自身が具体的な生活目標を表出できない場合には,家族から目標を聞き取れるよう項目が設けられている.

生活行為向上マネジメントシート

生活行為向上マネジメントシート (https://www.jaot.or.jp/files/page/wp-content/uploads/2018/07/managementsheet2.docx

MTDLPでは,アセスメントの欄を記入する前に,本人のしているADLやIADLなど,生活状態を客観的に評価するために,既存の尺度を用いる.例えばADLを測定するBarthel Index(BI),IADLを測定するFranchay Activity Index(FAI),QOLを測定するHealth Utilities Index(HUI)などである.また,「脳卒中モデル」「廃用モデル」「認知症モデル」のそれぞれについて,生活行為の障害を引き起こす要因として把握すべき項目も例示されている3).

こうした客観的評価をもとに,対象者のしたい生活行為がなぜうまくできないのか,どこに支障があるのかをICFの視点からアセスメントし,生活行為の自立の可能性を予測する.この予後予測をふまえて,改めて対象者と面談をする中で,対象者のしたい生活行為と療法士が考える実現可能な目標をすり合わせ,合意した目標を決定する.

次に,決定した目標とアセスメントに基づき,具体的な支援プランを立案する.目標とした生活行為ができるようになるためには,本人の機能回復だけでなく,新たな生活行為の実施方法,福祉用具の利用などの環境整備も含め,包括的に検討し, 24時間365日連続する他の多くの生活行為も視野に入れてプランを立てる必要がある(図2).作業療法士が関わる時期は本人の生活のほんの一部に過ぎないということを念頭に置き,本人が取り組む課題はもちろんであるが,支援について,「誰が」「いつ」「どこで」「何を」「どのように」取り組むのかを具体的に記入することが大切である. 図2 24時間365日連続する生活行為 (日本作業療法士協会ホームページ:作業と生活行為(用語解説) より引用)

生活行為申し送り表

生活行為申し送り表 (https://www.jaot.or.jp/files/page/wp-content/uploads/2018/07/messagetable-excel2.xlsx

MTDLPでは,対象者が医療機関から退院した後も,在宅で生活行為の向上に向けて継続した支援が受けられるよう「生活行為申し送り表」が準備されている.対象者にとっては,在宅であっても本人がしたいと思っている生活行為が可能となるよう,支援が継続して提供されることが重要である.対象者を支援するチームに作業療法士がいる場合は,この「生活行為申し送り表」を使用し,積極的に連携を図る.連携先に作業療法士がいない場合は,実際のケアを提供するチームに申し送りを行い,対象者の生活行為の継続に配慮することが重要である.

生活行為申し送り表には,これまでの支援の内容,対象者の希望する生活行為,現在の生活状況(ADL/IADL),アセスメントのまとめと解決すべき課題,継続するとよい支援プログラムなどの情報が含まれる.これは,退院時に本人・家族・ケアの提供者に在宅での過ごし方を指導する退院時リハビリテーション指導の書式として活用することができる.また,情報診療提供書に添付する作業療法の連携シートとしても活用することができる.

【共著】 小渕 浩平(JA長野厚生連 長野松代総合病院 リハビリテーション部 作業療法士)

【参考文献】 1)日本作業療法士協会:生活行為向上マネジメント.作業療法マニュアル57:2015 2) NPO法人地域保健研究会:平成19年度老人保健健康増進事業「身体運動科学と作業療法学手法による生活行為向上プログラムの開発・介入研究」報告書,2007,p85. 3)日本作業療法士協会:平成24年度老人保健健康増進等事業「生活行為向上の支援における介護支援専門員と作業療法士との連携効果の検証事業」2013.http://www.jaot.or.jp/wp-content/uploads/2012/10/H24caremanager-report.pdf

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