パーキンソン病患者に対するリハビリテーション①

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竹林崇 大阪府立大学 教授

パーキンソン病に対するリハビリテーションは,薬物療法との併用で運動症状の改善効果および有用性が示唆されており,段階的な病期に応じた介入が必要となる.本稿では,効果の報告されているいくつかの介入方法について,病期別に紹介する.

はじめに

神経変性疾患であるパーキンソン病は緩徐進行性であり,発症初期から特徴的な運動症状を認め,それらの進行に伴って認知機能障害の合併や自律神経症状の悪化などといった進行期・後期へと経過をたどる(図1)1,2).パーキンソン病患者へのリハビリテーションは,パーキンソン病における疾患過程そのものに影響を及ぼす可能性は低いが,代償的な運動戦略を指導・練習することで,日常生活機能の改善を図ることができる.また,筋力や持久力低下のリスクなど,二次的な健康問題に影響を与える可能性がある3).

パーキンソン病における運動障害は,Hoehn-Yahr重症度分類(H&Y stage)において,片側性(stage1)から両側性(stage2),姿勢反射障害の出現(stage3),身体的自立性の喪失(stage4),車いすまたはベッド周囲への制限(stage)に概念的に定義され(図2),疾患の病期およびH&Y stageに対応した目標と介入方法が推奨されている(図3)3,4).

Hoehn-Yahr重症度分類 Stage1~2.5

この時期は,通常は機能的な障害は最小限または全くないなく,日常生活も自立している4).リハビリテーションの主たる目的は身体機能の維持と疾患の進行抑制となる3,4).

レジスタンストレーニング

Shulmanら5)は,H6Y stage2~3のパーキンソン病患者67名を,(1)高強度トレッドミル運動(予備心拍数の70~80%で30分),(2)低強度トレッドミル運動(予備心拍数の40~50%で50分),(3)ストレッチとレジスタンストレーニング(レジスタンスマシン[レッグプレス,レッグエクステンション,レッグカール]で片足10回を2セット)の3群のうち1つに無作為に割り付け,週3回,3ヶ月間実施した.

結果は,3群ともに歩行性および移動能力などを改善させたが,それぞれ改善を示す側面が異なっていた.低強度トレッドミル運動は,歩行および心肺フィットネスにおいて最も効果的であった.トレッドミルとレジスタンストレーニングは歩行,フィットネス,筋力に有効であり,それぞれ異なる有効性のメカニズムと関連しており,これらを組み合わせることで相乗効果が得られることが示唆された.しかし,これらの効果には障害や生活の質の改善を伴わなかった.

Corcosら6)は,レジスタンストレーニングとストレッチやバランス運動を中心としたフィットネスの長期的効果を比較した.6ヶ月後は両群で同様の改善を認めたが,12ヶ月,24ヶ月後にはレジスタンストレーニング群で筋力・運動速度の大きな改善を認めたと報告した.

Lee Silverman voice treatment (LSVT®)

LSVT®LOUDは,パーキンソン病患者に対して,良い音声を維持しながら通常の強度で,より大きい声で話すように訓練するための集中的プログラムであり,特異性,強度,反復に焦点を当てた運動学習理論に従ったものである7).LSVT®LOUD群と努力的呼吸療法群の無作為的な比較検討の結果,LSVT®LOUD群で声量の短期的改善および2年の長期的維持を認めており,パーキンソン病患者の音声・発声障害における有効性と長期的な効果を示唆している8).

LSVT®BIGは,運動とセルフキューイングに基づいた理学療法または作業療法であり,LSVT®LOUDから派生したものである.LSVT®BIGのプログラムは,身体全体を大きく使った動作,日常動作,歩行を反復して実施するもので,振幅を大きくし(大きな四肢運動),無動を軽減させることを主な目標とする(図4)7).パーキンソン病患者における任意速度の歩行では,歩幅が概ね規則的に減少する9).LSVT®BIGにおける運動振幅を大きくすることを強調するプログラムは,大きな四肢運動だけでなく,より速く,より正確な動きを実現することが可能である9,10,11).

ダンス・エクササイズ

パーキンソン病は疾患の進行により,運動症状,行動障害,情動症状などが重なり,多くの場合健康関連Quality of Life(HRQOL)が大幅に低下する12).エクササイズやダンスをはじめとした運動療法の効果を調査した研究13,14,15,16)がいくつかなされており,それらはうつ状態を軽減し,HRQOLを向上させる可能性が示唆されている17).

Fosterら18)は,パーキンソン病患者における地域でのタンゴプログラムへの参加の効果を調査した.パーキンソン病患者62例を週2回,12ヶ月実施するタンゴダンス群または介入なしのコントロール群に無作為に割り付けて実施した.その結果,タンゴ群では社会参加の頻度が増加し,喪失した活動の回復および新しい活動への参加も報告されており,タンゴなどのダンスの介入が,社会への参加とその後の生活の質の向上に寄与することが示唆された.また,タンゴやワルツなどのダンスの介入は,パーキンソン病患者において,Berg Balance Scaleや6分間歩行距離などバランスおよび歩行機能に有効であるとした報告19)や,2週間の短期間の介入でも転倒恐怖やQOLが改善するとした報告20)もされている.

太極拳においてもパーキンソン病患者の運動機能改善や疾患の進行を遅らせる可能性があることが報告されている.太極拳は,一般的に深い瞑想的な呼吸を伴う一連の流動運動を伴う中国武術である.Liら21)は,軽度から中等度パーキンソン病患者500例を,1日80分間,週3回の太極拳群,トレッドミルや有酸素運動などを1日90分間,週3回実施する通常運動群に割り付けし,2カ月間実施した.その結果,歩行能力,バランス機能は両群で改善を示し,転倒発生率は太極拳でより大幅な減少を認めた.また,太極拳群では,レボドパの投与量の減少や,導入を遅らせられる可能性を示唆した.太極拳とストレッチ群およびレジスタンストレーニング群と比較した研究では,レジスタンストレーニング群より歩行距離,歩幅の長さに有意な改善を認めた.また,転倒発生率はレジスタンストレーニングと同程度の改善を示し,介入後3カ月後まで効果が維持されており,太極拳がパーキンソン病患の歩行・移動機能やバランス機能の改善に寄与する可能性が示唆された.

以上のように,パーキンソン病における軽度の病期では,予防的側面および活動性の維持・向上,社会参加を念頭においた介入が必要である.そのため,身体機能のみならず,家庭および社会的な役割,趣味趣向など広い視野を持った関りが求められる.

【共著】 山本 勝仁(北播磨総合医療センター リハビリテーション室)

【引用論文】 1) Kalia LV, Lang AE. Parkinson’s disease. Lancet. 2015;386:869-912 2) Gershanik OS. Clinical problem in late-stage Parkinson's disease. J Neurol. 2010;257:288-291 3) Keus SH et al. Evidence-based analysis of physical therapy in Parkinson’s disease with recommendations for practice and research. Mov Disord. 2007;22:451-460 4) Goetz CG et al. Movement disorder society task force report on the Hoehn and Yahr staging scale: Status and recommendations. Mov Disord. 2004;19:1020-1028 5) Shulman LM et al. Randomized clinical trial of 3 type of physical exercise for patients with Parkinson Disease. JAMA Neurol. 2013;70:183-190 6) Corcos DM et al. A two year randomized controlled trial of progressive resistance exercise for Parkinson’s disease. Mov Disord. 2013;28:1230-1240 7) Fox C et al. LSVT LOUD and LSVT BIG: behavioral treatment programs for speech and body movement in Parkinson disease. Parkinson’s Disease. 2012;2012:1-12 8) Ramig LO et al. Intensive voice treatment (LSVT®) for patients with Parkinson’s disease: 2 year follow up. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2001;71:493-498 9) Ebersbach G et al. Comparative analysis of gait in Parkinson’s disease, cerebellar ataxia and subcortical arteriosclerotic encephalopathy. Brain. 1999;122:1349-135 10) Morris ME et al. The pathogenesis of gait hypokinesia in Parkinson’s disease. Brain. 1994;117:1169-1181 11) Horak FB et al. Effects of dopamine on postural control in Parkinsonian subjects: scaling set, and tone. Journal of Neurophysuology. 1996;75:2380-2396 12) Duncan GW et al. Health-related quality of life in early Parkinson’s disease: the impact of nonmotor symptoms. Mov Disord. 2013;29:195-202 13) Ahlskog JE. Aerobic exercise: evidence for a direct brain effect to slow Parkinson disease progression. Mayo Clin Proc. 2018;93:360-372 14) Hackney ME et al. Dance therapy for individual with Parkinson’s disease: improving quality of life. Journal of Parkinsonism and Restless Legs Syndrome. 2014;4:17-25 15) Fuzhong Li et al. Tai Chi and postural stability in patients with Parkinson’s disease. N Engl J Med. 2012;366:511-519 16) Colgrove YS et al. Effect of Yoga on motor function in people with Parkinson’s disease: A randomized, controlled pilot study. J Yoga Phys Ther. 2012;2:2 17) Goodwin VA et al. The effectiveness of exercise interventions for people with Parkinson’s disease: a systematic review and meta-analysis. Mov Disord. 2008;23:631-640 18) Foster ER et al. Community-based Argentine tango dance program is associated with increased activity participation among individuals with Parkinson’s disease. Arch Phys Med Rehabil. 2013;94:240-249 19) Hackney ME et al. Effects of dance on movement control in parkinson’s disease: A comparison of Argentine Tango and American Ballroom. J Rehabil Med. 2009:41:475-481 20) Marchant D et al. Effects of a short duration, high dose contact improvisation dance workshop on Parkinson disease: a pilot study. Complement Ther Med. 2010;18:184-190 21) Li Q et al. Tai Chi versus routine exercise in patients with early- or mild-stage Parkinson’s disease: a retrospective cohort analysis. Braz J Med Biol Res. 2019;53:e9171

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