前回,介護保険制度や介護保険分野でのリハビリテーションの変遷を解説してきた.今回は介護保険の中でも通所リハビリテーションの時代的背景や実際の訓練内容,近年行われているConstraint-Induced Movement Therapyについて解説していく.

通所リハビリテーションの時代的背景

介護保険の中で通所リハビリテーション(以下,通所リハ)は厚生労働省の第141回社会保障審議会介護給付費分科会1)の中で「当該施設において,その心身の機能の維持回復を図り,日常生活の自立を助けるために行われる理学療法,作業療法その他必要なリハビリテーションを行うものである.」と明記されており,介護保険の対象である65歳以上の高齢者や40歳から64歳の特定疾患が原因で,要支援・要介護状態になった方に対して自立を助けるために重要な役割を担っていると考えられる.これらの定義を前提として,通所リハに関する時代的背景を解説していく.

通所リハは介護保険制度が制定された平成12年に集団でのリハビリテーション(以下,リハ)や個別リハを中心に始められた.平成15年度改定では個別リハビリテーション加算,平成18年には短期集中リハビリテーション加算が導入され,短期間で集中した個別リハビリを実施することに対して加算が与えられた.また,平成21年には認知症短期集中リハビリテーション加算が導入され,認知症と診断された方にリハビリを早期から短期集中的に行うことで加算が与えられたこのように通所リハは短期間に個別性を重視し,認知症の方に対しても手厚くリハビリを行う必要性を説いた2).平成27年度改定で活動と参加に焦点を当てた報酬体系として「生活行為向上リハビリテーション実施加算」が導入された3).

表1:各年代における介護報酬改定の加算3)4)

上記に示した加算を算定可能とすることにより,退院後早期に重度な方もリハビリをすることのできる施設を増大させようと努めていることが分かる.しかし,平成28年度の調査で認知症集中リハビリテーション加算を算定している施設は6~13%,生活行為向上リハビリテーション実施加算を算定している施設は11%と低い算定率であることが分かった5).

通所リハビリテーションでの訓練内容

前項で示したように生活行為向上リハビリテーション実施加算などの加算を算定している施設は少ない状況である.そこで,通所リハで実施されている訓練はどのような訓練が多いか解説していく.平成28年度の調査では通所リハで行われている訓練の上位5項目は「歩行・移動」,「移乗」,「姿勢保持」,「トイレ動作」,「趣味や社会活動」とされている6).5項目のうち,「趣味や社会活動」以外は全体的に関節可動域訓練などの機能回復訓練と起居・移乗動作訓練などの基本的動作訓練が7割以上を占めている状況である6).これより機能訓練や起居動作などが多く行われており,活動や参加に焦点を当てた訓練は少ないことが理解できる.しかし,活動や参加に焦点を当てた訓練も行われている.例としては,生活行為全般を対象とした生活行為向上マネジメント7)を利用することや,上肢麻痺に対しては脳卒中ガイドラインの上肢運動障害に対するリハビリテーションでグレードAとされているCI療法があげられる8).今回は脳卒中後上肢麻痺に対してエビデンスの確立されているCI療法について解説していく.

通所リハビリテーションで近年取り組まれている慢性期脳卒中後上肢麻痺に対してのConstraint-Induced Movement Therapy

通所リハが必要となった原因の疾病で脳卒中が一番多く上がっている1).特に上肢麻痺は活動や参加の阻害因子になりえるため,活動や参加に焦点を当てることのできるConstraint-Induced Movement Therapy(以下,CI療法)を通所リハで実施している報告について解説する.

まず,CI療法とは対象者と目標を共有し,その目標を達成するための介入である.練習内容は,機能改善の意味合いが強いshapingと目標として決めた動作に対して環境設定や自助具を使用して取り組むTask Practiceの2つを含む課題指向型訓練を行う.さらに,訓練場面で獲得してきた成果を日常生活に転移させるTransfer Packageを用い支援する9).

倉山ら10)はサービス提供時間が6~8時間の通所リハにおいて5時間のCI療法を平日10日間実施し,15項目の動きについて遂行時間、運動スピードを評価するWolf motor function test(WMFT)の課題遂行時間,日常生活での麻痺手の使用頻度を評価するMotor activity log(MAL)の上肢使用頻度(Amount of use:AOU)とその動きの質(quality of movement:QOM)に介入前後で優位に改善が認められたと報告している.

また,増田ら11)は作業療法を1日0.5時間,自主トレーニング1.0時間の1日合計1.5時間を週2日,2か月間実施し,運動麻痺の程度を示すFugl-Meyer Assessment(以下,FMA)の上肢運動項目は臨床的に意義のある変化量(Clinically Important Differences:CID):4.25~7.25点を超える結果を示した.また,MALのAOUも臨床的に意義のある最小変化量(Minimum Clinical Importance Difference: MCID):0.5点を超える結果を示したと報告している.以上のことから通所リハの中でもCI療法は実用的であり,短時間で実施する場合でも事例報告ではあるが,良好な結果が出ており,積極的に行う必要があると考える.

上記に示したことからも通所リハビリでのCI療法は有用であると考える.しかし,時間的制約による訓練量が不十分であること,1対1での介入を行う時間が短く問題解決などTransfer Packageを行うことに対して,十分なコミュニケーションが取りにくいなど考えられる.そのため,Barzelら12)が行った研究を参考に,自宅で家族が主体となり訓練を進める家族参加型のCI療法を実施することにより,訓練量は担保され,通所リハビリ利用時には自宅で行い,困難であった動作などを確認していく問題解決の時間に費やせるため,より活動や参加に焦点を当てて訓練に取り組める可能性が考えられる.

【共著】 小林 直樹(名古屋市総合リハビリテーションセンター 介護保険科)

【引用文献・参考資料】 1)厚生労働省 第141回社会保障審議会介護給付費分科会 通所リハビリテーション 平成29年 https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-SanjikanshitsuShakaihoshoutantou/0000168696.pdf 2)厚生労働省 介護保険制度(介護報酬)におけるリハビリテーションの変遷 平成26年 https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12301000-Roukenkyoku-Soumuka/0000059452.pdf 3)厚生労働省 平成27年度介護報酬改定の骨子 平成27年 https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/0000081007.pdf 4)厚生労働省 平成21年度介護報酬改定の概要 平成21年 https://www.mhlw.go.jp/bunya/seikatsuhogo/fukusijinzaikakuho02/dl/04.pdf 5)厚生労働省 平成27年度介護報酬改定の効果検証及び調査研究に係る調査(平成 27 年度調査)(3)リハビリテーションと機能訓練の機能分化とその在り方に関する調査研究事業 報告書 平成28年 https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-SanjikanshitsuShakaihoshoutantou/0000126194.pdf 6)厚生労働省 第141回社会保障審議会介護給付費分科会 通所リハビリテーション(参考資料)平成29年 https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-SanjikanshitsuShakaihoshoutantou/0000168706.pdf 7)厚生労働省 高齢者の地域におけるリハビリテーションの 新たな在り方検討会(第3回)「活動と参加」に焦点をあてた作業療法の紹介 平成26年 https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12301000-Roukenkyoku-Soumuka/0000063344.pdf 8)日本脳卒中学会 脳卒中ガイドライン委員会,脳卒中治療ガイドライン2015 [追補2019対応]:株式会社協和企画,2019,366p 9)竹林崇.上肢運動障害の作業療法:文光堂,2018,204p 19)倉山太一,渡部杏奈,高木みなみ,他.通所リハビリテーションにおけるCI療法の効果.理学療法科学2009;第24巻6号:929‐33. 10)増田雄亮,補永薫,松永玄,他.通所リハビリテーションにおいて修正CI療法を実施した一事例.作業療法2017;36巻6号:626‐33. 11)Bazel A,et al:Home-based constraint-induced movement therapy for patients with upper limb dysfunction after stroke(HOMECIMT):a cluster-randomized,controlled trial.Lanset Neurol 14 :893-902,2015

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