本稿では,クライエント中心の作業療法を実践プロセスについて,その代表的な実践モデルである作業遂行プロセスモデル(Occupational Performance Process Model:OPPM)に基づき,本邦におけるトレンドを交えながら概説する.

はじめに

OPPMは,1997年にカナダの作業療法士Fearing,Law,Clarkらによって提唱されたクライエント中心の作業療法の実践モデルである1).OPPMはクライエント中心の作業療法を7段階に分け,その実践プロセスを明示している(図1).

引用)Mary Law編,宮前珠子他訳:クライエント中心の作業療法 カナダ作業療法の展開.協同医書出版社.2006.72p

作業遂行上の問題の命名-確認-順位付け

第1段階でOTとクライエントは,作業遂行上の問題を共有し,優先順位をつける.この段階で使用される評価の代表例がカナダ作業遂行測定(Canadian Occupational Performance Measure:COPM)である.

COPMでは,クライアントが自身の生活をセルフケア,生産活動(仕事),余暇の観点から振り返り,作業遂行上の課題を焦点化し,それらの重要度,優先順位,満足度,遂行度を数値化する.Larsenらは,COPMに関するスコーピングレビューを実施し,COPMを使用することでクライエント中心の作業療法を促進できると述べている2).一方で,COPMはOTの面接技術やクライエント中心の実践に関する概念理解の程度によってその効果に差が出やすいとする報告もある2).

近年本邦でも作業に焦点化するためのツールが開発されており,イラストを取捨選択することで作業に焦点化できるADOCや,クライエントの生活に対する主観的な認識から作業遂行上の課題を評価する作業機能障害の種類と評価(CAOD)等があり,この段階で用いることができると思われる3)4).

可能な介入モデルを選択する

第1段階で焦点化した作業遂行を妨げる原因を評価し,適切な介入モデルを選択する.この段階でクライエントの選択肢を狭小化しないよう,1つのアプローチ方法に固執せず,最新の知見を批判的にレビューしながら複数のアプローチを用いることが重要とされる1).ここで「自分はOTだから作業を用いた介入を…」とOT本位の理由で介入モデルを選択することは,クライエント中心の実践とは名ばかりのOT中心の実践になってしまうリスクがあり,EBP(Evidence based practice)の観点を取り入れることが重要と考える.

作業遂行要素と環境条件を明確にする

第1段階で確認した作業遂行に影響を与える要因を分析する段階である.OPPMの背景にはカナダ作業遂行モデル(CMOP-E)があり,これは人(情緒面,身体面,認知面,価値観)と作業(セルフケア,生産活動,レジャー)と環境(文化的,社会的,物理的,制度的)は互いに関連し合っているとするものである5)(図2).これに基づき,第3段階ではクライエント個人の能力だけでなく,クライエントを取り巻く様々な環境因子にも焦点を当てて分析する点が,OPPMの特徴の1つといえるだろう1).

引用)吉川ひろみ著:作業療法がわかる COPM・AMPSスターティングガイド.医学書院.2008.9p.

利点と資源を明確にする

この段階でもクライエント自身がもつ利点に加えて,クライエントを取り巻く環境的資源の利点にも焦点を当てることが重要とされる.環境的資源には家屋構造や気候などの物理的環境だけでなく,家族や友人などの社会的環境,地域の規則やサービスなどの制度的環境,所属集団が共有する行動様式などの文化的環境も含まれる1).

目標とする成果を協議し,行動計画を立てる

クライエントと目標とする成果を共有し,その達成に向けた行動計画を立てる.この際,クライエントが意思決定するために必要な情報(提供できるサービス内容や利用できる資源など)を共有することが重要であり,その上で目標の達成が困難と判断された場合,目標自体を見直す必要が出てくることもある1).また,この段階でOTはプロセスに関係するすべての人々がとるべき行動を明確にし,多職種を巻き込みながら行動計画を立てることが重要とされる1).

実際,多職種と連携したクライエント中心の作業療法は,IADLを改善するという強いエビデンスもある6).本邦で開発された生活行為向上マネジメントの生活行為向上プラン演習シートにも役割分担の要素が組み込まれており,クライエントの作業課題を解決するためにOTとクライエントの1対1の関わりに終始せず,多職種連携をしながら課題の解決を図ることは,介入効果を左右する重要な要素と考えられる7).しかしながら従来の作業療法関連のモデルや理論には多職種連携の方法論は組み込まれていなかった.

このような状況を受け,本邦では従来のOBPに多職種連携の哲学的実践論である信念対立解明アプローチを組み込んだOBP2.0という新理論が寺岡らによって提唱されている8).現状OBP2.0のエビデンスは急性期整形外科領域,発達領域,訪問リハビリテーション領域における事例報告に留まっておりエビデンスは不十分であるが,これらの事例報告は多職種連携によってクライエントの作業課題を解決するという点で共通しており,クライエント中心の作業療法の実践において有用なツールに成り得るかもしれない8)9)10).

作業を通して計画を実行する

第5段階で立てた行動計画を実行する段階である.この段階でOTはクライエントが主体的に問題解決に関われるように配慮することが重要とされる1).

作業遂行における成果を評価する

この段階でクライエントは第1段階で確認した作業遂行上の問題がどのように変化したかを確認する.解決に至れば介入は終了するが,一連のプロセスを通して新たな問題が生じた場合は,それに対して再び7段階のプロセスを実行する19.

【共著】 高野 大貴(安曇野市社会福祉協議会 作業療法士)

【引用文献】 1)Mary Law編,宮前珠子他訳:クライエント中心の作業療法 カナダ作業療法の展開.協同医書出版社.2006. 2)A. Enemark Larsen,et al. Enhancing a Client-Centred Practice with the Canadian Occupational Performance Measure. Occup Ther Int. 2018; 2018: 5956301. 3)Hirofumi Nagayama,et al: Effectiveness and Cost-Effectiveness of Occupation-Based Occupational Therapy Using the Aid for Decision Making in Occupation Choice (ADOC) for Older Residents: Pilot Cluster Randomized Controlled Trial. PLoS One. 2016; 11(3). 4)Teraoka Mutumi,Kyougoku Makoto:Development of the final version of the classification and assessment of occupational dysfunction scale.Plos one 10:e0134695,2015. 5)吉川ひろみ著:作業療法がわかる COPM・AMPSスターティングガイド.医学書院.2008. 6)Elsa Orellano,et al. Effect of Occupation- and Activity-Based Interventions on Instrumental Activities of Daily Living Performance Among Community-Dwelling Older Adults: A Systematic Review. Am J Occup Ther. 2012 May-Jun; 66(3): 292–300. 7)一般社団法人日本作業療法士協会:生活行為向上マネジメント.https://www.jaot.or.jp/mtdlp/mtdlp/(参照:2020-7-19). 8)寺岡睦 他:作業に根ざした実践と信念対立解明アプローチを統合した「作業に根ざした実践2.0」の提案.作業療法33(3):249-258,2014. 9)田中啓規 他:発達領域における「作業に根差した実践2.0(OBP2.0)」の臨床有用可能性について-子育てで生じる作業機能障害と信念対立に焦点を当てた介入に関する報告-.作業療法35(4):436-444,2016. 10)高野大貴 他:訪問リハビリテーションにおける「作業に根ざした実践2.0(OBP2.0)」の臨床有用可能性について.作業療法38(3):358-364,2019.

企業への質問

この機能を利用するには、ログインが必要です。未登録の方は会員登録の上、ログインしてご利用ください。

この記事に関連するタグ

興味のあるタグをフォローしておくことで、自身のフィードに関連するセミナーやコラムを優先的に表示させることができます。 (無料会員機能。 登録はこちら )

執筆者の他のコラム