パーキンソン病では,病初期から認知機能障害が比較的高率に認められる.これに関して,病態・メカニズム・認知機能障害の特徴などが報告されている.本稿では,パーキンソン病における認知機能障害の概要について紹介する.

パーキンソン病と認知機能

パーキンソン病は中脳黒質ドーパミン神経細胞の変性1),Lewy小体の出現2)により,運動緩慢,振戦,筋強剛を中心とした特徴的な運動症状を生じる神経変性疾患である.また,運動症状のみならず,多彩な非運動症状も高頻度で合併3)し,比較的初期から認知機能障害が出現する.Braakら4)は,パーキンソン病の重症度に伴った,Lewy小体の浸潤の広がりを検証した.その結果,病変は最初に舌咽神経,迷走神経の背側運動核および嗅覚前核に発生する.脳幹病変は概ね個人差なく上行性の経過をたどり,前頭葉から大脳皮質へ浸潤する.そこから,高次の感覚連合野や前頭前野,大脳新皮質へ進展する(図1).認知機能障害やパーキンソン病に伴う認知症状の出現はこれらのLewy小体の進展が影響することが示唆される.

認知機能に関わるシステムとして,解剖学的研究では大脳皮質,大脳基底核,小脳を接続するループが存在することが明らかになっている.Alexanderら5)は,大脳基底核は一次運動野への運動出力だけでなく,前頭前野や前頭前野の特定の領域をも標的にしているとした.これらの領域は,前頭眼野,背外側前頭前皮質,眼窩前頭皮質,前帯状皮質の領域を含んでいた.その結果,大脳基底核は運動制御だけでなく,いくつかの異なるタイプの認知機能や大脳辺縁系機能にも影響を与えることが考えられた.

パーキンソン病における認知機能障害(Cognitive dysfunction: CD)は,病初期において比較的高率にみられる.それらは主に前頭葉に関連した症状であり,前頭前野と大脳基底核を結ぶループが関与しているとされる6).パーキンソン病患者の認知機能障害は,皮質下認知症(subcortical dementia: PDsCD)と特定の前頭前野機能障害(specific prefrontal dysfunction: PDpFCD)の2つの構成要素を示すと仮説がたてられている.以下に2つの構成要素およびパーキンソン病における認知機能障害の概要について説明する.

皮質下認知症(PDsCD)

2005年のシステマティックレビューでは,パーキンソン病における認知症の有病率は31.3%であった.また,一般人口における推定罹患率は0.2~0.5%である7).

PDsCDは前頭葉,頭頂葉,大脳辺縁系など新皮質下層の萎縮など構造的な変化と関連している8).病理学的検査では,Lewy小体と呼ばれる蛋白質や脂質の細胞質内包物の顕著な蓄積が認められ,Lewy小体の総数および進展の程度と認知症の重症度は相関関係が示されている9).

皮質下病理に関連する神経疾患の特徴的パターンは,物忘れ,思考緩慢,感情や性格の変化(無気力や抑うつ,時折過敏さを伴う),獲得した知識を操作する能力の低下である10).これは,PDpFCDと臨床的に類似するが,アルツハイマー病などの皮質認知症の認知機能障害パターンとは明確に区別される6,11).パーキンソン病における認知症の初期段階を特徴づける認知機能障害パターンは,語流暢性の低下である可能性が高く12),主に記憶機能や言語機能の低下で特徴づけられるアルツハイマー病とは異なり13),パターンに不均一性がある.

特定の前頭前野機能障害(PDpFCD)

パーキンソン病患者における認知機能障害の複雑な病態生理学的機序として,Btuckら14)は,初期段階のパーキンソン病患者と健常対照者を,MRIによる海馬および前頭前野の萎縮,前頭葉機能および記憶機能の神経心理学的検査により比較した.その結果,パーキンソン病患者の前頭葉および海馬は有意に萎縮を有した.また,記憶障害および持続的注意・警戒心の有意な低下を示した.これらの機能障害は線条体におけるドーパミン枯渇の結果として起こりうるものであり,皮質の損傷がなくても皮質下前頭葉ネットワークの機能障害により出現するとされる15).これらの現象は,前頭前皮質を起点とした線条体,大脳基底核,視床核を結ぶ3つの皮質下ループが存在する(図2).このループは,機能的に異なる神経行動の特徴に関与しており,背外側前頭前野,眼窩前頭前野,前部帯状回はそれぞれ遂行機能障害,社会行動異常,意欲低下と関連している6).

パーキンソン病における軽度認知機能障害

軽度認知機能障害(Mild cognitive impairment:MCI)は元来アルツハイマー病で用いられた概念16)であるが,近年では認知症の前兆としてパーキンソン病におけるMCI(PD-MCI)の概念が注目されている17).Aarslandらの研究では18),1,346人の認知症を伴わないパーキンソン病患者のうち,25.8%がMCIを有していると報告した.また,未治療の早期パーキンソン病患者群は治療された患者群と比較し,認知障害を有する割合が2倍に増加することが示された19).

Pedersenらの研究では,PD-MCI患者の27%が3年以内に認知症へ移行したのに対し,PD-MCIのない患者では認知症に移行した割合は0.7%であった.また,PD-MCI患者の中には,1年後,3年後の経過のなかで正常な認知機能に戻った患者もいたと報告した20).

以上のように,パーキンソン病における認知症は,アルツハイマー病などの皮質性認知症とは異なる特徴を示す.また,軽度認知機能障害の存在は,認知症へ進行するリスクとなることが示されている.このことから,パーキンソン病初期からの認知機能の評価が重要であると思われる.

【共著】 山本 勝仁(北播磨総合医療センター リハビリテーション室)

【引用論文】 1) Barbeau A et al. The Pathogenesis of Parkinson’s Disease: A New Hypothesis. Canad Med. 1962,Vol.87 2) Engelhardt E et al. Lafora and Trétiakoff: the naming of the inclusion bodies discovered by Lewy. Arq Neuropsiquiatr 2017;75(10):751-753 3) Goetz CG et al. The History of Parkinson’s Disease: Early Clinical Descriptions and Neurological Therapies. Cold Spring Harb Perspect Med 2011;1 4) Braak H et al. Staging of brain pathology related to sporadic Parkinson’s disease. Neurobiology of Aging. 2003;24:197-211 5) Alexander GE et al. Parallel organization of functionally segregated circuits linking basal ganglia and cortex. Ann Rev Neurosci. 1986;9:357-81 6) Vale S et al. Current management of the cognitive dysfunction in Parkinson’s disease: how far have we come? Exp Biol Med. 2008;233:941-51 7) Aarsland D et al. A systematic review of prevalence studies of dementia in Parkinson’s disease. Mov Disord. 2005;10:1255-63 8) Beyer MK et al. A magnetic resonance imaging study of patients with Parkinson’s disease with mild cognitive impairment and dementia using voxel-based morphometry. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2007;78:254-9 9) Mattila PM et al. Alpha-synuclein-immunoreactive cortical Lewy bodies are associated with cognitive impairment in Parkinson’s disease. Acta Neuropathol. 2000;100:285-90 10) Albert M et al. The ‘subcortical dementia’ of progressive supranuclear palsy. J Neurol  Neurosurg Psychiatry. 1974;37:121-30 11) Darvesh S et al. Subcortical dementia: A neurobehavioral approach. Brain and Cognition. 1996;31:230-49 12) Jacobs DM et al. Neuropsychological characteristics of preclinical dementia in Parkinson’s disease. Neurology. 1995;45:1691-96 13) Mahieux F et al. Neuropsychological prediction of dementia in Parkinson’s disease. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 1998;64:178-83 14) Bruck A et al. Hippocampal and prefrontal atrophy in patients with early non-demented Parkinson’s disease is related to cognitive impairment. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2004;75:1467-9 15) Cotelli M et al. Action and object naming in Parkinson’s disease without dementia. Eur J Neurol. 2007;14:632-7 16) Petersen RC et al. Mild cognitive impairment: transition between aging and Alzheimer’s disease. Neurologia. 2000;15:93-101 17) Caviness JN et al. Defining mild cognitive impairment in Parkinson’s disease. Mov Disord. 2007;22:1272-7 18) Aarsland D et al. Mild cognitive impairment in Parkinson disease- A multicenter pooled analysis. Neurology. 2010;75:1062-9 19) Aarsland D et al. Cognitive impairment in incident, untreated Parkinson disease: the Norwegian ParkWest study. Neurology. 2009;72:1121-6 20) Pedersen KF et al. Prognosis of Mild Cognitive Impairment in Early Parkinson Disease- The Norwegian ParkWest Study. JAMA Neurol. 2013;70:580-586

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