前回までのコラムでは肩峰下インピンジメント症候群について記載し、その際は肩後方組織の柔軟性やローテーターカフの筋機能、肩甲骨周囲筋のコンディションが重要ということを示してきました。その一方で、肩の中の痛みを訴えますが肩峰下インピンジメント症候群に該当しないような方を経験することも多いです。その際に可能性として頭に入れておいた方が良いのが「インターナルインピンジメント」です。今回のコラムではインターナルインピンジメントの病態について解説させて頂きます。

肩関節の前方不安定性による関節内のインピンジメントが痛みを引き起こす

Jobeらが肩の前方不安定性によって関節窩と上腕骨頭の間に後上方関節唇がインピンジメントして損傷するという報告をしています1)。また、山口らは投球障害の11症例を対象に、鏡視下で外転・外旋運動を他動で実施した際に腱板関節面断裂部と後上方関節唇損傷部との接触を確認したと報告しています2)。

上記からインターナルインピンジメントの病態としては、肩関節の外転・外旋の肢位をとった際に大結節と関節窩が衝突することで、それによってインピンジされてしまう軟部組織(ローテーターカフや関節唇)が損傷するということになります。とくに投球動作の最大外旋時(Maximum External Rotation:MER)に生じるインターナルインピンジメントが、投球障害肩で多いSLAP損傷の誘因になるという報告もあります3)。

また投球前後のインターナルインピンジメントの変化を追った研究では、投球後に関節面腱板と思われる軟部組織がインピンジメントする様子がMRIで描写され、投球前後は2nd外旋可動域の増大、及び2nd内旋可動域の減少が見られたと報告されています4)。

そのためインターナルインピンジメントにおいても、肩後方組織の柔軟性低下があり、加えて肩前方不安定性があると外転・外旋をとった際に痛みが生じることが考えられます。

これはオーバーヘッドスポーツをしている場合や、頭の上で腕を組んだり服を脱ぎ着したりする場合にとるポジションなので、こういったポジションで痛みが出る場合は画像所見などと照らし合わせながら、インターナルインピンジメントの可能性を考慮してもいいかもしれません。

インターナルインピンジメントの鑑別とコンディショニング

上記にもあるようにインターナルインピンジメントは肩関節の外転+外旋が誘発因子になります。ただ2nd外旋を強制しても痛みでないにも関わらず、実際には痛みがでてしまう場合があります。その際によく用いられるのがHyper external rotation test(HERT)です。

HERTは臥位で肩関節の過水平外旋を行うテストでインターナルインピンジメントによる疼痛の再現性テストとしても有効性が報告されています5)。水平外転を強くすることで疼痛を誘発することもあるので、特にオーバーヘッドスポーツの選手ではみておいた方が良いと思われます。

ではコンディショニングを実際にはどうすればいいのかというところですが、基本的には上腕骨頭を求心位に保持できるようにすることが重要なので、これまでのコラムでも記載してきた肩後方組織の柔軟性獲得、ローテーターカフの筋機能向上、肩甲骨胸郭関節の可動域改善が重要となります。さらに言えばオーバーヘッドスポーツでは胸郭の回旋も重要になってきますので、これも以前のコラム「意外と知らない胸郭のバイオメカニクスと実際の評価方法について」をご覧いただければと思います。

ここまでは以前紹介したエクササイズやコンディショニングを行えばいいのですが、インターナルインピンジメントの特徴として「肩の前方不安定性」があります。ここに対しては特化したエクササイズが重要だと個人的には考えています。僕自身は上肢下垂位で肩甲骨をセッティングさせた状態での内旋運動を低負荷で反復して行わせて肩甲下筋の収縮を徹底的に行います。そうすることで肩の前方不安定感が消失した選手を経験しましたので、肩前面の不安定感を筋機能で解消することも一つと思います。

今回でひとまず、肩関節についてのコラムを終了したいと思います。次回からは四つ這いでのトレーニングについて書いていきたいと思います。

【参考文献】 1)Jobe C M, Posterior Superior Glenoid Impingement : Expanded Spectrum, Arthroscopy 11(5), 530-536, 1995 2)山口哲ら, Posterior Superior Glenoid Impingementの検討, 整形外科と災害外科 50(1), 237-240, 2001 3)Walch G, et al, Impingement of the deep surface of the supraspinatus tendon on the posterior glenoid rim: An arthroscopic study, J Shoulder Elbow Surg 5,238-245,1992 4)田崎篤ら, Internal Impingementの形状は投球数の増加により変化する, 肩関節35巻3号, 953-956, 2011 5)原正文, 投球障害肩のリハビリテーション治療, Jpn J Rehabil Med 55, 495-501,2018

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