脳卒中後上肢麻痺に対するメンタルプラクティスのエビデンス(1)

お気に入り数 3
竹林崇 大阪府立大学 教授

昨今,海外を中心に様々な脳卒中ガイドラインにて,メンタルプラクティスに関するエビデンスが報告されている.
本項は海外の脳卒中ガイドラインからメンタルプラクティスについての報告を抽出し,概要と,介入の内容について解説していく.
なお,メンタルプラクティスの基本的な概要については第一報の「脳卒中後上肢麻痺に対する運動イメージ介入(メンタルプラクティス)の概要」に詳しく論述しているため,参照して頂きたい.

脳卒中後上肢麻痺に対してメンタルプラクティスが推奨されているガイドラインについて

近年,脳卒中後の上肢麻痺を対象としたメンタルプラクティスにおいて,有用性と妥当性が示されおり,様々なガイドラインにて推奨される動向が見受けられるため,下記に紹介する(表1).

さて,それではどのような形でガイドラインに推奨されているのだろうか?各々のガイドラインから上肢機能における推奨事項をまとめながら,メンタルプラクティスを中心に解説していく.

メンタルプラクティスにエビデンスはあるのか?

本項では表1に提示した脳卒中ガイドラインの中でも,American Heart Association(AHA),National clinical guideline for stroke,CANADIAN Stroke BEST PRACTICE RECOMMENDATIONS,Clinical Guidelines for Stroke Managementの4つのガイドラインを参照し解説を行う.

1)American Heart Association(AHA)によるガイドライン(表2)では

メンタルプラクティスは上肢機能リハビリテーションの補助的な方法として非常に合意的であるとされている.

また,classはⅡa(証拠や意見の重みが手順や治療に有効),Level of EvidenceはA(複数の無作為化比較試験,臨床試験またはメタアナリシスから得られたデータ)とCI療法に並ぶ有用性が示されている1).

このガイドラインでは,メンタルプラクティスの初期訓練は治療時間内で行われるが,追加の練習は自主訓練として実施するものとされている.

また,メンタルプラクティスと身体機能訓練を統合することに問題はなく,介入時間をきちんと担保することで,より,麻痺手への機能的改善が見込まれるとの報告がなされている2).

2)National clinical guideline for stroke(表3)では

このガイドラインでは,メンタルプラクティスについて患者の認知機能,高次脳機能の観点を考慮した上で言及がなされている.概要では,認知機能に低下を認めない脳卒中患者を対象に上肢機能の改善のため,メンタルプラクティスを使用するよう推奨されている.

つまり,適応条件として認知機能評価であるMini- Mental State Examinaton (MMSE)は24/30点以上,高次脳機能障害が含まれない,などの基準が設けられており,比較的,認知機能が保たれている患者に有用であると報告されている.

一方で,引用論文では脳卒中急性期〜慢性期における上肢機能アプローチとして多岐にわたり報告されており,メンタルプラクティスの対象となる病期に関しては幅広い印象を受ける.

また,AHAのガイドラインと同様に,通常リハビリテーションに併用し,補助的な介入として用いられることが念頭に置かれている3).

3)CANADIAN Stroke BEST PRACTICE RECOMMENDATIONS(表4)では

メンタルプラクティスの採用について,従来の治療のみに比べて上肢機能を改善することが示されている.

このガイドラインは推奨度が早期レベルと後期レベルの2つに分類されており,早期レベルは脳卒中発症後6ヵ月未満の患者に適用可能な治療法のエビデンスの強さを意味し,後期レベルは,脳卒中発症の指標となる発症から6ヵ月以上経過した患者に適用可能な治療法のエビデンスの強さを意味する.

メンタルプラクティスに関しては早期レベルA,後期レベルBと6ヶ月以上の長期的な経過を辿った際に,エビデンスが乏しい状況にあるとされている4).

4)Clinical Guidelines for Stroke Management(表5)では

このガイドラインではメンタルプラクティスを,麻痺手の重症度に適応する形での導入が,勧められている.

概要では軽度〜中等度の上肢麻痺を伴う脳卒中患者の場合,能動的な運動訓練と組み合わせたメンタルプラクティスが推奨されている.

また,より複雑な局所疼痛症候群を呈す場合などでは,メンタルプラクティスでなく,運動イメージの要素が含まれているミラー療法が採用される場合があるなど,重症度に応じた細分化されたアプローチが示されている.

しかしながら,当ガイドラインではメンタルプラクティス,ミラー療法共に,弱い推奨(ガイドラインの開発者が望ましい効果と望ましくない効果のバランスについて確信を持てない場合,エビデンスベースはそれほど強固ではない)とされており,他のガイドラインと比べるとエビデンスが乏しい現状にあると言える5).

海外のガイドラインから読み解く脳卒中後上肢麻痺に対する,メンタルプラクティスの現状

本項では,海外のガイドラインから脳卒中後上肢麻痺に対するメンタルプラクティスについて,推奨事項を踏まえて解説した.

上記に述べた内容をまとめるとメンタルプラクティスは運動療法と自主訓練としての運動イメージ介入による併用療法が主流となっている印象を受ける.また,導入においては認知機能,高次脳機能,そして,麻痺手の重症度などを配慮する必要があると考える.

さらに,ガイドラインによっても着眼点が様々であり,推奨度や妥当性も多岐にわたる.国による特色があることも否めないため,対象者への病態を考慮し,実践する必要があると筆者は解釈している.

次回は,脳卒中後上肢麻痺に対するメンタルプラクティスの現状を中心に,本邦のガイドラインに基づいて解説を行っていく.

【共著】 岸 優斗(出雲市民リハビリテーション病院 作業療法士)

【引用文献】

  1. Winstein CJ,et al:Guidelines for Adult Stroke Rehabilitation and Recovery A Guideline for Healthcare Professionals From the American Heart Association/American Stroke Association .Stroke 47:e98-167,2016.
  2. Page SJ, Dunning K, Hermann V, Leonard A, Levine P. Longer versus shorter mental practice sessions for affected upper extremity movement after stroke: a randomized controlled trial. Clin Rehabil 25:627-637, 2011.
  3. Rudd T,et al:National clinical guideline for stroke Prepared by the Intercollegiate Stroke Working Party.1-151,2016.
  4. Hebert D,et al:CANADIAN Stroke BEST PRACTICE RECOMMENDATIONS .Stroke Rehabilitation: 40-45,2015.
  5. English C,et al: Clinical Guidelines for Stroke Management Summary-Occupational Therapy.Stroke FOUNDATION:1-28,2017.

企業への質問

この機能を利用するには、ログインが必要です。未登録の方は会員登録の上、ログインしてご利用ください。

この記事に関連するタグ

興味のあるタグをフォローしておくことで、自身のフィードに関連するセミナーやコラムを優先的に表示させることができます。 (無料会員機能。 登録はこちら )

執筆者の他のコラム