近年,エビデンスが示された上肢運動麻痺への併用療法として電気刺激療法が挙げられている.本稿では実際の臨床場面での電気刺激の使い方について,症状別に解説していく.

電気刺激療法の使用方法

Hatemら 1)の脳卒中後の上肢運動麻痺に対する手法選択のためのデジジョンツリーでは,病期や手の運動の有無,痙縮の程度によって,対象者に有効と考えられるリハビリテーション戦略と効果を増大させる併用療法が示されている.このデジジョンツリーで電気刺激療法は併用療法として有効性が示されており,実際に使用する際は電気刺激療法単体で使用するのではなく,エビデンスが示されているCI療法やミラーセラピーに併用していくことが望ましいと考えられている.

神経の促通における電気刺激療法

Yangら 2)の脳卒中後の上肢運動麻痺の改善における電気刺激療法の効果に関するMets-Analysisでは,電気刺激療法実施群はプラセボ群と比較し,FMAやARAT,WMFTやBBTなど,機能および活動能力を評価するアウトカムで有意な改善を示したと報告している.

また参加評価であるMALにおいても有意な改善があったと報告している. ①感覚閾値の電気刺激 ②運動閾値の電気刺激 ③筋電図誘発神経筋電気刺激(以下,EMG-NMES) の3種類の電気刺激の比較では,身体機能や活動評価のアウトカムに有意差は認めなかったと報告している.

しかし,Katiaら 3)のEMG-NMESと脳卒中後の上肢運動麻痺に関するSystematic Reviewでは,EMG-NMESの使用は特に慢性期脳卒中者の上肢運動麻痺の機能改善に有効と示されている.そのため電気刺激機器が筋電図を読み取れる程度の随意収縮が可能な対象者であればEMG-NMESの積極的な使用,筋電図を読み取ることが出来ない重度運動麻痺を呈した対象者であれば,通常の運動閾値の電気刺激やIVES外部アシストモードを使用するなど,運動麻痺の重症度に応じて用いる電気刺激を選択していく必要があると考えられる.

臨床場面では手指の伸展を促通する際に,努力性となり拮抗筋である手指屈筋の緊張が高くなり,反復するにつれ手指の伸展が出現しにくくなる対象者がいる.そのような対象者であれば,電流強度を高めに設定し努力性を軽減させるなどの配慮が必要となる.

また課題指向型訓練で,手指の随意伸展が乏しい対象者にEMG-NMESを用いると,移送中に手指伸筋の筋電図を読み取ってしまい,手指が伸展して物品を落下させ課題の遂行が困難となることが多い.そのため課題指向型訓練と併用する際は,感覚閾値レベルの電気刺激の方がストレスなく課題を遂行できる.

このように3種類の電気刺激はともに効果的であり,それぞれに有意差は認められていないが,運動麻痺の重症度や行う課題によって電気刺激の種類を選択していくことが重要となる.

肩関節亜脱臼に対する電気刺激療法

脳卒中後の肩関節亜脱臼に対する電気刺激療法では,電気刺激療法実施期間には亜脱臼の軽減が認められているが,電気刺激を撤回してからの長期的な有効性は示されていない.そのため亜脱臼の改善には運動麻痺自体の改善を図ることが重要である.

脳卒中後の亜脱臼は棘上筋の機能低下から生じる可能性が高いと考えられており,対象者によっては上腕骨頭が下方だけでなく,痙縮により前方や内旋方向へ偏移していることもある.そのため電極は棘上筋と,前方や内旋方向に偏移した骨頭を後方に引き付けるため,三角筋の後部線維に貼付し実施されることが多い.棘上筋と三角筋後部線維の間に存在する棘下筋へも電気刺激が加わるため,外旋方向への修正も可能となる.

Leeら 4)のMeta-Analysisでは,亜急性期の脳卒中患者において,亜脱臼の改善に必要とされる電気刺激時間は①短時間(1時間以内),②長時間(1時間以上)の使用ともに有意差はなく,使用すること自体に有効性があったと報告されている.加えて運動麻痺自体の回復を図るには,効率よく運動回数を確保する必要性が高いと考えられるため,電気刺激の実施時間に捉われるのではなく,電気刺激を併用しながら肩関節外転や伸展の反復運動を行っていくことが重要である.

効率よく運動回数を確保するには課題指向型訓練よりも単関節運動の方が向いている.そのため亜脱臼の重症度や運動麻痺の程度によって,単関節運動を中心に行うか,課題指向型訓練の中で修正を図っていくか,対象者を評価した上で選択することが推奨される.

痙縮筋の抑制に対する電気刺激療法

Steinら 5)の脳卒中後の痙縮筋に対する電気刺激療法の効果を,29のランダム化比較試験から分析したSystematic Reviewでは,NMES単独の使用では痙縮筋の抑制効果は乏しかった.しかし他の運動療法とNMESを組み合わせることで,MASおよび関節可動域の改善を認めたと報告している.電気刺激の種類としては感覚閾値,運動閾値の電気刺激ともに効果が示されている.

またMillsら 6)のTENSによる痙縮抑制効果を調査したSystematic Reviewにおいても,運動療法や課題指向型訓練を組み合わせることで,より効果的であったと示されている.よって神経の促通や亜脱臼の修正と同様に,痙縮筋の抑制に関しても電気刺激を他の介入方法と併用することが望ましいと考えられている.

電気刺激を利用した痙縮筋の抑制メカニズムとしては,相反抑制や反回抑制が主に用いられるが,近年では相反抑制を目的とした電気刺激の使用方法がメジャーとなっている.

上腕二頭筋の痙縮抑制であれば上腕三頭筋への電気刺激と自動運動,手指屈筋の痙縮抑制であれば手指伸筋への電気刺激と自動運動を同期させることで,効果的に痙縮抑制を図ることが可能である.

前途したように感覚閾値,運動閾値の電気刺激ともに効果はあるが,より痙縮が強い対象者には運動閾値の電気刺激を用いる方が痙縮を抑制できるイメージがある.

また課題指向型訓練の途中で痙縮が強まってしまうような対象者であれば,先に電気刺激を併用した単関節運動で痙縮筋を抑制しておくと,課題指向型訓練中も痙縮を助長することなく遂行できることが多い.そのため対象者の痙縮抑制にはどんな電気刺激が効果的か,またどんな順序で提供すると効果的か,様々な方法で評価をしながら,最も有効な方法を見つけ出すことが大切であると考えられる.

まとめ

解説してきたように,電気刺激療法は様々な症状に対して有効である.しかし基本的には何らかの介入方法に併せて使用する,併用療法として効果を発揮するものである.ただ対象者に他動的に電気刺激を行うだけでなく,その効能を最大限に発揮できるよう,実際の臨床のために正しい使用方法を理解することが大切である.

【共著】 山田 順也(社会医療法人協和会 加納総合病院 作業療法士)

【引用文献】 1.Hatem SM, et al : Rehabilitation of motor function after atroke : a multiple systematic review focused on thechniques to stimulate upper extremity recovery. Front Hum Neurosci 13 : 442, 2016 2.Yang JD, et al:Effectiveness of electrical stimulation therapy in improving arm function after stroke:a systematic review and a meta-analysis of randomised controlled trials:Clin Rehabil 33(8):1286-1297,2019 3.Katia MS et al:Electromyogram-related neuromuscular electrical stimulation for restoring wrist and hand movement on poststroke hemiplegia:a systematic review and meta-analysis:Neurorehabil neural repair 33(2):96-111,2019 4.Lee JH, et al:Effectiveness of neuromuscular electrical stimulation for management of shoulder subluxation post-stroke:a systematic review with meta-analysis:Clin Rehabil 31(11):1431-1444,2017 5.Stein C, et al : Effects of electrical stimulation in spastic muscles after stroke : Systematic review and Meta-analysis on randomized controlled trials. Stroke, 46 : 2197-2205, 2015 6.Mills PB & Dossa F:Transcutaneous electrical nerve stimulation for management of limb spasticity:A systematic review. Am J Phys Med Rehabil, 95:309-318, 2016

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