脳卒中患者に対する非侵襲的脳刺激と併用療法の効果

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竹林崇 大阪府立大学 教授

非侵襲的脳刺激(NIBS)の1つに反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)と経頭蓋直流電気刺激(tDCS)がある.近年,脳卒中後遺症患者に対してNIBSと他の療法を併用の効果に関する報告も増えている.本コラムではシステマティックレビューをもとにその効果について解説する。

運動学習

Kangら1はtDCSと他の療法を併用した報告に関する長期的な運動学習の維持効果についてシステマティックレビューにより17の研究でメタアナリシスを行った.

この報告では,脳卒中患者に対する上肢麻痺や歩行に関してtDCSと他の療法を併用し、併用療法終了後に短くとも5日以上経過した時点で再評価を行っている研究が対象とされている.併用された療法は伝統的なリハビリテーションやConstraint induced movement therapy(CI療法),ロボット療法,課題特異型練習等様々であった.

結果としては, tDCSとの併用群は対照群とし比較してstandardized mean difference(SMD)で0.59(0.40~0.79)と有意に運動学習が維持されていた.

またこの報告では併用療法を行う前にtDCSを行った場合と併用療法を行っている際にtDCSを行っている場合の効果の違いについても報告しており,対照群と比較して併用療法を行う前にtDCSを行った場合がSMDで0.70(0.37~1.02),併用療法を行っている際にtDCSを行った場合がSMDで0.53(0.28~0.77)であったとしている.

歩行

Vasら2はNIBSと他の療法を併用することによる効果についてシステマティックレビューにより10の研究でメタアナリシスを行った.

NIBSの方法としてrTMSが3、tDCSが7であった.NIBSの刺激部位としては多くの報告で大脳の下肢支配領域に対して行われた.併用された療法としては,研究によって様々で伝統的な理学療法やロボット療法,体重免荷トレッドミル歩行等であった.これらの併用療法の回数についても様々であるが,7回~30回行われた.

結果として歩行速度に関して対照群と比較してrTMSとの併用群は平均で0.9m/sec(0.05~0.13m/)と有意に改善したが,tDCS群は0.02m/sec(-0.08~0.12)と有意な改善はみられず,総合するとNIBSを加えることで0.08m/sec(0.04~0.12)歩行速度が向上した.

また急性期・亜急性期と生活期で分けると急性期・亜急性期では0.08m/sec(0.03~0.14),生活期では0.08m/sec(0.03~0.13)とほぼ同等の効果がみられたことも報告している.

上肢機能

Graef 3らはrTMSと上肢機能訓練を併用することによる効果についてシステマティックレビューにより10の研究でメタアナリシスを行った.

rTMSの刺激時間は20分程度行っているものが多く,上肢訓練としてはCI療法を5時間行っているものや作業療法もしくは理学療法が40~1時間程行われているものなど様々である.

結果としては上肢機能に関して対照群と比較して,SMDで0.03(-0.25~0.32)と有意な差はみられなかった.筆者らはTMS機器が高価であることを考えても,より効果のある対象者を選んだ上で実施していく必要があると述べている.

一方Hatemら4は,脳卒中後上肢麻痺改善に向けた様々な方法に対するレビューの中で,rTMSのみで行うよりもリハビリテーションを補完する方法としてrTMSを併用することは中~高い質のエビデンスがあり上肢麻痺を改善する可能性があるとしている.

Subramanianら5はNIBSとVirtual reality(VR)を併用することによる上肢運動機能に対する効果に関するシステマティックレビューにより5つの研究でメタアナリシスを行った.

NIBSの種類は,rTMSが1、tDCSが4であった.刺激の方法としては,非損傷側脳の興奮性を抑制するものが3,損傷側の興奮性を促進するものが2となっている.使用されているVR機器は様々であるが,いずれの研究も上肢の動きがモニターに映し出され課題を実施するものとなっている.またNIBSとVRの併用を1セッションとして10~25と研究によってセッション回数も様々である.

結果として対照群と比較して,Fugl meyer assessmentに関してHedges’ g で0.75(0.15~1.35)と中等度のエフェクトサイズ,Wolf motor function testのfunctional ability scaleに関して同じく0.17(0.13~0.78)と小さいエフェクトサイズであったと報告している.

半側空間無視

Salazarら 6はNIBSと他の療法との併用による効果についてシステマティックレビューにより14の研究でメタアナリシスを行った.

この研究で抽出された報告は,多くが対象として脳卒中の急性期の患者を含んでいた.NIBSの方法としてはrTMSが10,tDCSが4であった.刺激は非損傷側の後頭頂皮質に対して抑制を目的としたものが7,損傷側の興奮性を促進するものが3,両方法を併用したものが4であった.併用された療法としては,一般的なリハビリテーション,フィードバック訓練,視覚探索練習,視覚探索練習に加えて運動機能訓練などが用いられた.

結果として対照群と比較して,NIBS併用群はSMDで1.91(1.25~2.57)と良好であった.

また刺激の種類による効果の違いとしては,興奮性のNIBSはSMDで2.34(1.12~3.34),抑制性NIBSはSMDで1.69(0.88~2.49)という結果であった.ADLに対する効果としては,14の研究のうち6つ研究で報告されており,NIBS群はSMDで0.77(0.35~1.18)と良好であった.

まとめ

脳卒中患者に対する,NIBSと他の併用療法の効果についてシステマティックレビューを基に述べてきた.

他の併用療法にNIBSを加えることで特に運動学習,歩行,半側空間無視に対して効果的である可能性が示唆された.しかしより効果的なNIBSの刺激部位,時間などのパラメーター,どのような療法を併用することがより効果的であるかは不明確であり,今後も検証が必要である.

【共著】前田 正憲(鹿教湯病院 リハビリテーション部 作業療法科)

【引用文献】 1.Kang N . et al. Transcranial direct current stimulation facilitates motor learning post-stroke: a systematic review and meta-analysis. J Neurol Neurosurg Psychiatry 2016;87(4):345-55. 2.Vaz PG . et al. Noninvasive brain stimulation combined with other therapies improves gait speed after stroke: a systematic review and meta-analysis. Top Stroke Rehabil 2019;26(3):201-13. 3.Graef P . et al. Transcranial magnetic stimulation combined with upper-limb training for improving function after stroke: A systematic review and meta-analysis. J Neurol Sci 2016;369:149-58. 4.Hatem SM . et al. Rehabilitation of Motor Function after Stroke: A Multiple Systematic Review Focused on Techniques to Stimulate Upper Extremity Recovery. Front Hum Neurosci 2016;10:442. 5.Subramanian SK . et al.. Virtual Reality and Noninvasive Brain Stimulation in Stroke: How Effective Is Their Combination for Upper Limb Motor Improvement?-A Meta-Analysis. PM R 2018;10(11):1261-70. 6.Salazar APS . et al. Noninvasive Brain Stimulation Improves Hemispatial Neglect After Stroke: A Systematic Review and Meta-Analysis. Arch Phys Med Rehabil 2018;99(2):355-66.e1.

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