目標設定介入に活用されるツール③〜COPM、ACE〜

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竹林崇 大阪府立大学 教授

前回までで目標設定ツールの一つであるADOCについて解説した。今回は同様に目標設定ツールとして用いられるCOPM、ACEについて解説する。

【参考記事】 ▶目標設定介入に活用されるツール①目標設定介入に活用されるツール②~バリエーションの増えるADOCシリーズ~

カナダ作業遂行測定(COPM)

カナダ作業遂行測定(Canadian Occupational Performance Measure:COPM )は、作業遂行を定量的に表す自己報告型のアウトカムである1)2)。半構造化面接を通して、対象者の「大切な作業」を特定し、重要度・遂行度・満足度を10段階にて測定する。所要時間は20-40分程度とされており、カナダ作業遂行理論(CMOP-E)3)を基盤に1991年に開発された。信頼性や妥当性の検証も行われており2)、一部ガイドライン4)上の使用も推奨されるなど、作業療法領域では広く用いられてきた背景がある。(図1)

臨床的に意義のある最小変化量(MCID)は遂行度3.0、満足度3.2 5)。遂行度0.90〜1.37、満足度1.45〜1.90 6)と報告によって分かれる。この他にKjekenら7)は測定方法によるMCIDの変化を表しており、直接面接評価・電話評価・メール評価でのMCIDの差異を報告している。(図2)

図1 COPM評価カード http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA03084_04 より引用

図2 COPMのMCID

COPMの限界(レスポンスシフトの観点から)

COPMは半構造化面接を用いた、自己報告型の評価尺度である。そのため、面接者の経験やスキルによって、測定結果にばらつきが生じる可能性が指摘されている。結果のばらつきが生じる原因について具体的に説明すると、レスポンスシフトという問題点が指摘されている。レスポンスシフト8)とは、COPMなどの自己報告型のアウトカム(PRO)に特徴的な問題であり、対象者が何らかの自己評価を行う際に、その内部基準が変化することを表す。臨床でよく見かける場面としては、COPMの遂行度・満足度の測定の際にこのレスポンスシフトが生じやすい。例えば介入初期に「トイレ」について測定したとする。介助量(FIM2点など)を要するにも関わらず、初回評価で遂行度5・満足度5などの得点が申告されたとする。次に1か月後など、介入期間を経て再度測定した際に、介助量(FIM4点など)が減ったにも関わらず、遂行度・満足度がほとんど変わりない、もしくは点数が減少するという場面に時折遭遇する。

これは対象者自身が「初回評価時に考えていたトイレ」と「再評価時に考えていたトイレ」の達成基準が変化することが原因の一つだと考えられている。これがレスポンスシフトの一例である。

対策としては「具体的で明確な目標設定」「反復した自己評価測定の確認」などが挙げられているが、有効な対応はいまだ見つかっていない。現状では、測定の際には対象者と定期的に測定結果を確認し、その信憑性を担保する対応が現実的であると考えられる。

以上の内容から、COPMは対象者個々の特異的な目標に対する自己評価を知る稀有な評価という利点があることが分かる。しかし、その欠点として、単一使用での効果検証のアウトカムとしては不十分な評価スケールである。臨床で使用する際には、COPMに加えて、課題特異的・客観的な評価スケールを併用することで、欠点を担保することが望ましい。

Assessment of Client’s Enablement(ACE)

COPM実施時の課題としてあがったレスポンスシフトであるが、これは対象者と療法士の認識の差異から生まれる側面もあると考えられている。目標設定に関して、この差異を測定するツールがAssessment of Client’s Enablement(ACE)である。ACEは2017年に澤田らが開発し、信頼性・妥当性の検証が報告されている9)。測定方法は「現在の心身の状態でその作業をどの程度生活で行うか」という質問を行い、面接で特定された作業を「行う」と思えば左側・青の方に、「行わない」と思えば右側・赤の方に垂直線を記入する。COPMやADOCの面接時にあがった作業に対して、対象者と療法士それぞれの現在の認識の差異を可視化することができる面接補助ツールである10)。(図3)

図3 ACE 文献9)より引用

北橋ら10)は、この面接補助ツールACEを用いて、対象者と療法士の認識の差異を明らかにし、協働を促進した事例を報告している。必要に応じて、目標設定の中にこのようなツールを併用することを試みてもよいと思われる。

【共著】  高瀬 駿(川崎協同病院 作業療法士)

【引用文献】 1)Law M,et al:The Canadian occupational performance measure: an outcome measure for occupational therapy. Can J Occ Therapy. 1990;57 (2):82-7. 2)Low M,et al: Canadian Occupational Performance Measure.Ottawa:CAOT Publication ACE;2014 3)Polatajko,Helene J.,Elizabeth A.Townsend,and Janet Craik.Canadian model of occupational performance and engagement (CMOP-E).Enabling occupation Ⅱ:advancing an occupational therapy vision of health,wellbeing,&justice through occupation .Ottawa:CAOT Publications ACE;2007.38. 4)脳性麻痺リハビリテーションガイドライン,日本リハビリテーション医学会,2013 5)Tuntland H,et al:Psychometric properties of the Canadian Occupational Performance Measure in home-dwelling older adults.Jornal of multidisciplinary healthcare 19:411-423,2016 6)Eyssen IC,et al:Responsiveness of the Canadian occupational performance measure.J Rehabil Res Dev 48:517-528,2011 7)Kjeken I,et al:Reliability of the Canadian Occupational Performance Measure in patients with ankylosing spondylitis.J Rheumatol 32:1503-1509,2005 8)Carolyn E Schwartz,et al:Applications of Response Shift Theory and Methods to Participation Measurement: A Brief History of a Young Field.Arch Phys Med Rehabil. 2010 9)Sawada T,et al:Reliability and validity of the Assessment of Client’s Enablement (ACE).British Journal of Occupational Therapy.2018;81(7),369-375. 10) 北橋ら:ACE(Assessment of Client’s Enablement)を 使用したことでクライエントと作業療法士の 協働が促進された事例.日本臨床作業療法研究.2017 1;1-6.

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