2007年に発表されたノルウェーによる声明『Children’s Right in Sport (スポーツにおける子供の権利)』についての紹介

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中山佑介 TMG athletics 代表

アメリカのユーススポーツ事情を中心に情報発信をしてきた当コラムですが、今回はヨーロッパに視点を移し、前回の冬季オリンピックで参加国トップのメダルを獲得した国が2007年に発表したChildren’s Right in Sport (スポーツにおける子供の権利)という声明を紹介します。

はじめに

ノルウェーは2018年平昌オリンピックにおいて参加国中1位の計39個(金14・銀14・銅11)ものメダルを獲得しました。同国の冬季オリンピックにおけるメダル獲得数は2014年は計26個(参加国中2位)、2010年は計23個(同4位)と、この3大会で大きく数を伸ばしています。

この大きな躍進の理由の一つとして考えられるものが、同国のオリンピック・パラリンピック委員会が2007年に発表したChildren’s Right in Sport という声明です。この声明の冒頭文は、”Children are engaged in sports because they enjoyed (子供たちは楽しいからスポーツをしている)”から始まり、”(スポーツを通して)子供たちは友達と共に人生を通して活きる教訓や経験を学んでいく”と続き、”この考えはすべてのコーチ、マネージャー、保護者が守り、さらに発展させていくべき基本である”と締めくくられています。

この声明には、Provisions on Children’s Sport (子供のスポーツにおける規定)という副題が付いており、以下の点に貢献することを目的としています。 ・スポーツ活動は、子供たちが必要としている事に基づいて計画され、すべての子供たちを受け入れる ・スポーツ活動は、子供たちとその保護者の性別、人種、信仰、性的指向、身体の発達や障害によって異なる対応を受けることなく提供される ・スポーツクラブは、幅広く多様性に富んだ活動と計画を展開する ・コーチ、マネージャー、保護者は、子供たちの為の活動をより協力的に促進する ・異なるスポーツ、保護者、コミュニティー間で、ノルウェーのユーススポーツにおける価値観に基づいた良いコミュニケーションをとる

また、”この規定に例外はなく、独自の規定を設定することを禁じる”とも明言しています。

スポーツにおける子供たちの権利

同声明は、子供たちが持つ以下の7つの権利を明記しています。 ①安全と安心:子供たちは安全で安心できる環境で、不適切な重圧や搾取にさらされる事なくスポーツに参加する権利がある。 ②友情と健康・幸福であること:子供たちは友情と連帯感を育む活動に参加する権利がある。健康・幸福である感覚は学びを促進し、学びは健康・幸福である感覚を促進する。 ③子供たちが必要としている事に基づく:子供たちは各自の年齢・発育・成熟度に合わせた活動に参加する権利がある。 ④上達:子供たちは上達する感覚を体験し、多くの異なるスキルを学ぶ権利がある。多様なトレーニングや他者との関わりの機会を保障されるべきである。 ⑤影響:子供たちは自分の考え方を述べ、それが考慮される権利がある。コーチや保護者と共に、自分たちのスポーツ活動のプランと進行に関わる機会を認められるべきである。 ⑥選択の自由:子供たちは、どのスポーツを、いくつのスポーツに、どれだけ参加したいかを自分で選択する権利がある。 ⑦全員に競争の機会を:子供たちは、競争に参加するかしないかを選ぶ権利があり、平等な参加の機会を保障されるべきである。競争(試合)に参加を望まない子供に対しても、同じ練習の機会が保証されるべきである。

子供たちのスポーツにおける規定

” may(してもよい、しても差支えがない)” という表現を用い定められた規定は、以下の8つです。 ①子供たちは6歳になる年に、主に自分の所属するクラブでのスポーツ活動や競争に参加してもよい ②11歳になる年の競争から、適切であればランキングや結果発表の表を用いてもよい ③11歳になる年から、地域の競争やイベントに参加してもよい ④11歳になる年から、ノルウェーや周辺諸国のオープンイベントに参加してもよい ⑤11歳になる年から、ノルウェー周辺諸国の子供たちはノルウェーのスポーツイベントに参加してもよい ⑥スポーツイベントに賞品がある場合は、参加者全員が受け取るべきである ⑦12歳になる年までは、ノルウェーカップ・ユールカップ・ワールドカップのようなチャンピオンシップ大会に参加することはできない ⑧子供のスポーツを管理する連盟は、その責任を負う委員・役員を任命する

同国アスリートの国際舞台での活躍

同声明が発表された11年後の平昌オリンピックで、同国の若いアスリートたちが大きな活躍をしました。

スキージャンプ女子でノルウェー初の同種目金メダルを獲得したMaren Lundby(当時23歳)は、スポーツ全般が好きで特にサッカーは今でも趣味としてプレーすると公言しています。同選手は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う自粛中に流行したトイレットペーパーを使ったリフティングの精度やアイデアを競う「トイレットペーパーチャレンジ」に参加、スキー板での見事なリフティングを披露して注目を集めました。https://www.instagram.com/p/B-MhbQnh6G_/

同オリンピックで初出場にして3つの金メダルを獲得したJohannes Høsflot Klæbo(当時21歳)もまた、サッカー選手になるという夢から、自分により合った距離スキーに転向した経緯があるそうです。

競技力の強化は同声明の目的ではなく、安直にメダル数の増加に繋げるべきではありませんが、競技力を優先しないユーススポーツ環境を掲げた国のアスリートの国際舞台での活躍は注目を集めました。先日開催されたProject Playのサミットでも、ノルウェーの取り組みが紹介されました。

日本のユーススポーツ環境が、諸外国のモデルとして参考にされる日はくるのでしょうか?早期競技特化や勝利至上主義から脱却できずに世界から取り残されないためにも、私たち大人が外に目を向けて、子供のためのスポーツ環境を整えていく必要があります。

リソース:https://assets.aspeninstitute.org/content/uploads/2019/04/Childrens-Right-to-Sport-in-Norway.pdf

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