前回のコラムでは、Scapular Dyskinesisの評価方法について記載していきました。これまでのコラムからもわかるように、オーバーヘッドスポーツや日常生活動作のいずれにおいても肩甲骨の動きが重要であり、少しでも動きが阻害されると腕が上がりにくくなり、肩の痛みにつながるリスクを秘めています。今回は肩甲骨の動きについて、代償動作なども踏まえながら解説をしていきたいと思います。私が実際に用いているエクササイズを少し紹介させていただきます。

肩こりの正体は僧帽筋上部と肩甲挙筋。ストレッチ方法は?

スポーツ選手もそうでない人も、肩こりに悩まされている人は多いと思います。

肩こりの一般的な原因として考えられるのは、肩甲骨から首につながる筋肉の疲労蓄積によってこわばり(筋緊張の増大)や柔軟性が低下する事が挙げられます。そして肩甲骨から首につながる筋肉の代表的なものが僧帽筋上部と肩甲挙筋になり、主に肩甲骨の挙上(肩をすくめる)作用があります。

生活の中で、手を動かすということは何かの目的を持って動かすことが多いです。荷物の運搬や調理、食事、着替え、入浴など、列挙すればキリがありません。それだけ普段から手を使う場面は多く、動かせば動かすだけ肩甲骨周囲の筋肉にも筋活動が求められます。

また上の図を見ていただくとわかるように生活動作で手を使う場面は、腕の下垂位や最大挙上位というより60〜120°あたりの中間位付近での作業が多いと思います。このポジションは肩関節中心から手までのレバーアームが長くなり、筋活動量が多く必要になります。

そこでさらに荷物を持つなどすると、よりたくさんの負荷が筋肉へかかります。

この際、肩関節には前下方回旋の回転モーメントがかかることになり、それを防ぐために肩関節の屈曲(外転)筋である三角筋前部・中部線維や、肩甲骨を挙上させ肩関節から見ると後上方に付着する僧帽筋上部と肩甲挙筋に負荷がかかるということになることが容易に想像できると思います。

これに加えて、スポーツ選手では一般人の何倍もの負荷を肩にかける事が多く、またパフォーマンス向上のためにトレーニングを積むことになります。

トレーニングを積めば、それだけ前述した筋肉にも負担がかかり疲労蓄積→筋肉の柔軟性低下というふうにつながってしまい、肩こりが発生することが考えられます。

私自身は、これらの筋肉に対して、下記のようなストレッチを指導しています。

一般の主婦の方やデスクワーク、スポーツ選手など様々な選手に対応できる個人的には万能なストレッチだと思いますので、ぜひ使用していただければと思います。

前鋸筋と僧帽筋下部に対するおすすめの運動

前々回のコラムでは肩甲骨のフォースカップルに関する記載を行いましたが、僧帽筋上部と肩甲挙筋への負担を減らすためには、肩甲骨の上方回旋および後傾に関わる筋肉の働きが重要になってきます。

肩甲骨の上方回旋に重要な筋肉の代表例は「前鋸筋」、後傾に重要なのは「僧帽筋下部繊維」です。実際にScapular Dyskinesisを有する女性のオーバーヘッドスポーツ選手では、僧帽筋上部が過活動かつ前鋸筋と僧帽筋下部の活動性が低いことが報告されています1)。

腱板断裂の患者でも、挙上にラグ(他動と自動での可動域に差がある)があるような状態ではやはり肩甲骨周囲のフォースカップルが非常に重要になる印象です。

そのためにも前鋸筋や僧帽筋下部に対してのセルフエクササイズ指導は極めて重要です。

そこで私がよく臨床や現場で行っているエクササイズを1つずつ紹介させていただきます。

前鋸筋へのエクササイズ:アームプッシュ

前鋸筋の作用は肩甲骨を外転(外旋)させる機能になります。よく実施されるのは片手をついて、地面を手で押すことで体を持ち上げるようにすると、肩甲骨の動きが出やすいです。難しい方はまずは両手をついて行うと感覚がわかりやすいのでオススメです。

僧帽筋下部へのエクササイズ:壁面挙上

120°くらいで壁に手を置き、手を壁から離すことで肩甲骨の後傾を出す運動になります。

この運動に関しては健常人での筋活動量が調べられており、無負荷及び500gでは僧帽筋下部の筋活動量はおよそ30%mvcになっており、これが2kgになると約45%mvcになります2)。以前記載したファンクショナルトレーニングの項目では「総負荷量」のことを記載しましたが、それで考えれば回数を重ねることでも無負荷〜500gで十分な筋活動量を得ることが可能であり、また肩に痛みがあるような方ではこのレベルで十分だと考えられます。

またパフォーマンスアップのためには2kg以上で行うことが一つの目安になることを示唆しています。

肩甲骨のカップリングモーションが動作のパフォーマンスを向上させる

肩に何らかの症状がある人はほぼほぼ肩甲骨の運動が正常から逸脱しています。ここまでのScapular Dyskinesisに対しての評価や運動に対して何らかの工夫を行うことで日常生活〜スポーツパフォーマンスの向上につながると思われます。次回は肩甲骨から少し離れて、肩甲上腕関節の部分について触れていきたいと思います。

【参考文献】 Ghanbari L, et.al, Prediction of Scapular Dyskinesis Through Electromyographic Indices of Scapulothoracic Muscles in Female Overhead Athletes, JRSR vol5 issue3, 74-80, 2018 2)北川裕樹ら,肩挙上位での壁面挙上訓練時の肩甲骨周囲筋活動:負荷量による差,第16回肩の運動機能研究会,2019

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