我々療法士が対象者と関わる時間は、非常に限定的であることが多い。しかし、脳卒中と代謝障害を呈している対象者と関わる場合限定的な機能練習やADL練習だけでは、日常生活への汎化が難しいことも多々経験する。そこで、生活習慣の改善のための介入について解説を行う。

はじめに

代謝障害の改善は日常生活の改善に依る。また、脳卒中者の生活はいかに活動的に過ごしていくかは生命予後にまで影響を及ぼす。しかし、我々療法士が対象者と関わる時間は、非常に限定的である。特に医療・介護保険下では時間が正確に決められている。そんな中、対象者の生活の質を高めていくためには、日常生活を健康行動に変容させる具体的な方法論が必要である。また、代謝障害に関する治療は運動療法・食事療法・薬物療法が中心であるが、作業療法士として具体的な関わり方を論じているものは少ない。

今回は、脳卒中と代謝障害を呈している対象者に対して、生活習慣を健康行動へと変容させるための関わりかたについて解説したい。

脳卒中を呈している対象者の活動性向上に向ける行動変容について

糖尿病と脳卒中を呈している対象者の場合、特に活動量の低下による二次障害の低下が問題となりやすい。例えば、動作の不安定性から、日中の活動量が低下し、血糖コントロールが不良となり合併症が進行すると言う、負の連鎖が起こる。その改善のためには、生活習慣の健康行動への行動変容が重要になる。如何に活動的に自立した生活を、過ごしていくかが今後の生活の質に影響する。

対象者の健康行動への移行や、継続のための介入にはどの様なものがあるだろうか。健康行動への変容を支援する介入に、Health Action Process Approach(以下HAPA)がある(1)(図表1)。これは、健康行動を行うことに対して意図があるものの実際の行動へと移行することが難しい要因を、「意図」、「行動」、「計画」によって解消を試みる理論である。また、HAPAでは健康行動を行動へと移行することや継続するために自己効力感(セルフエフィカシー)に重きを置いている。セルフエフィカシーとは、行動を達成できるという自信であり、それぞれの時期に応じて作用すると言われている。行動の開始に「アクションセルフエフィカシー」、継続に「メンテナンスセルフエフィカシー」、再開に「リカバリーセルフエフィカシー」が対応する。

【Health Action Process Approach】 (3)より改変引用

小沼らは4、HAPAの理論に基づき、脳卒中者の活動性向上を支援する行動変容型プログラムを試行的に作成した。この報告では、脳卒中者の活動性向上の機序について検討し、通所リハビリテーション利用者24名と回復期病院から自宅へ退院予定の15名に対して、冊子を用いた介入を行った。内容としては、対面により、療法士が一人20分程度で、知識の提供、活動の決定、行動計画および対処計画の立案、助言を行う際に冊子を用いて介入した。結果、3ヶ月後の活動性尺度Activities and participation states scale for survivorやQOL尺度MOS8-item Short-Form Health Surveyの点数が向上した。

この研究は論文内でサンプルバイアスや統制群の不備等が挙げられていたが、脳卒中者に対して、生活の中で活動性向上を図っていくかを具体的に検討されており、今後の発展に期待される。

代謝障害を呈している対象者への作業療法士としての関わり

糖尿病を呈している対象者に対する作業療法の研究として、米国で行われた研究がある。Resilient, Empowered, Active Living with Diabetes(REAL糖尿病)は、米国において、社会経済的または人種的に少数派の若年で糖尿病と診断された対象者に向けて作成された(2)。

Pyataら(3)によると、81人の若年成人がランダムに割り当てられた作業療法士によるREAL糖尿病介入と、コントロール群に割り当てられたところ、6ヶ月後のHbA1c値、糖尿病に関連したQOLや血糖測定の定着度が改善したとしている。

介入方法は、作業療法群で隔週のセッションとコントロール群では標準化された教材と隔週の電話によるサポートを受けた。介入項目を表1に示す。

表1 (2)より改変引用

対象者の糖尿病教育という点では同じだが、相違点として糖尿病の知識やケアの方略だけでなく、対象者個人の長期的な目標設定やライフスタイルに則している印象だ。これは、あくまで米国でケアの対象として対応しにくい若年の糖尿病患者を対象として作成されたプログラムだ。しかし作業療法士として、疾患を対象にするのではなく、対象者の生活に対して包括的関わり支援していくという点では、参考になる部分もあるのではないだろうか。

まとめ

脳卒中や糖尿病を呈している対象者に対する介入方法を、行動変容や米国の作業療法を紹介し解説した。従来の療法士の介入方法は、直接的であれ間接的であれ時間と場所が限定されている場合が多かった。今後、医療報酬の削減や地域包括ケアシステムが推進されていく中、対象者の人生の文脈を捉えていく様な介入方法が求められるのではないだろうか。その為には、上記の様な対象者の生活における行動変容を促すことや、包括的なアプローチが必要になる。

【共著】 畠 朋成 氏(脳梗塞リハビリセンター)

【参考文献】 Schwarzer R, et al: Self-efficacy in the adoption and maintenance of health of health behavior : Theretical approaches and a new model.AN INTERNATIONAL REVIEW 57; 1-29,2008 小沼佳代 他:在宅脳卒中者の活動性向上を支援する行動変容型介入プログラムの開発および評価.早稲田大学審査学位論文(未公刊),2017 Pyatak EA, et al: methodology and baseline characteristics od a randomaized controlles trial evaluating an occupation-based diabetes man- agement intervention for young adults. Contemp Clin Trials54; 8-17 Pyatak EA, et al: Occupational therapy intervention improves glycemic control and quality of life among young adults with diabetes. Diabetes Care; dc171634,2018

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