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代謝障害を呈する脳卒中患者介入時の考慮すべきポイント

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竹林崇 大阪府立大学 教授

代謝障害の合併症は、ADLやQOLへの影響が大きい。また、脳卒中患者と関わる際に、脳卒中後の神経症状と類似した症状が出現し混同されやすい。その為、それらは鑑別する必要がある。今回は糖尿病・脂質異常症を呈する合併症について解説する。

目次

    はじめに

    我々療法士が、脳卒中を呈している対象者と関わる場合、基礎疾患になんらかの代謝障害を合併している場合が多い。しかし、その際に代謝障害を合併していることは念頭にあっても、それらの影響を考慮して介入しているだろうか。例えば、脳卒中後の神経症状と、代謝障害の末梢神経障害は類似した症状を認める。その為、それらを鑑別する必要があり、把握することで、対象者への介入の為の材料となる。

    今回、糖尿病による合併症のリスク管理や注意点を臨床で遭遇しやすい物を中心に解説する。なお、脂質異常症に関しては、それ単体による症状はほとんどなく、動脈硬化のリスクファクターとなる為、動脈硬化について言及する。

    糖尿病の合併症

    糖尿病の場合、急性合併症と慢性合併症に大別される(図1)。急性合併症では低血糖性と、高血糖性があり、慢性合併症では3大合併症等の細小血管障害と大血管障害などがある。特に、臨床で関わる際に頻度が多いであろう慢性合併症について言及する。
    (図1)

    ①糖尿病性神経症状1)(表1)
    米国糖尿病協会の声明では2)、糖尿病患者の合併症の中で最も頻度が高く、遠位性の多発神経障害と局所性の単神経障害に分けられている。その中でも、遠位性の多発神経障害が高頻度であり、感覚・運動神経障害や自律神経障害がある。足部から発症し、早期から下肢末端に症状が出現、灼熱痛、電気的または刺すような感覚、感覚異常、知覚過敏、および強い痛みなどの感覚異常が出現する。症状進行により上肢にも出現する。診断には、温痛覚・振動刺激・触圧覚を評価するが、糖尿病性神経障害に特異的な症状や所見は存在せず、自覚症状や神経学的身体所見から総合的に判断する必要がある。

    糖尿病性神経障害の分類と主な症状(表1)

    1)より改変引用

    ②糖尿病性網膜症状
    糖尿病性網膜症は視力障害を有するが、自覚症状を欠く場合が多い。
    発症頻度は日本糖尿病合併症研究の報告で3)、発生率が38.3/1000人であり、西洋に比べて低いようである。病気により3期に分けられている4)(表2)。

    臨床において、視力障害は視覚失認等と混同されやすい。

    しかし、糖尿病性網膜症は、血糖コントロールにより発症・進行を優位に抑制できることが示されており、5)網膜症を呈している場合長時間治療を自己中断していたりする場合が多く、過去の病歴等の情報収集が必要である。

    糖尿病性の病期分類(表2)

    3)より引用

    ③糖尿病性腎症
    糖尿病性腎症は病期を5期に分けられており7)、糖尿病性網膜症と同じく、発症初期は自覚症状が欠如している場合が多い(表3) 。その為、定期的な尿中アルブミン測定検査による早期発見が勧められている6)。症状が進行することで、易疲労性やその他の症状も出現し意欲低下などと混同されやすいため注意が必要である。

    糖尿病性腎症の病期分類(表3)

    7)より一部改変引用

    脂質異常症に伴う動脈硬化の合併症

    前述したように、脂質異常症は症状を伴わないが、動脈硬化性疾患の危険因子となる。その為、脳卒中を呈している対象者と関わる際に、既往に脂質異常症の診断がある場合、全身の動脈硬化性の変化が生じているかもしれない事を念頭に置く必要がある。

    もちろん可能であるならば、形態学的検査(超音波検査・画像所見等)や血管機能検査(足関節上腕血圧比・足趾上腕血圧比等)の情報収集を行っておく。

    具体的に動脈硬化性の脳心血管病の再発、末梢閉塞性動脈硬化疾患(peripheral arterial occlusive diseases、以下PAD)による症状に注意する。

    PADは急性疾患と慢性疾患に分類され、急性動脈の症状として疼痛(pain)、脈拍消失(pulselessness)、蒼白(pallor/paleness)、知覚鈍麻(paresthesia)、運動麻痺(paralysis/paresis)、虚脱(prostration)の6Pが挙げられている8)。脳卒中の症状と類似している為、常に麻痺の程度や、安静時痛の有無などをモニタリングする必要がある。慢性閉塞性疾患では、下肢閉塞性動脈硬化症(arteriosclerosis obliterans:ASO)が95%を占める9)。症状として間欠性跛行を認める為、脊柱管狭窄症や腰椎疾患などによる神経性跛行との鑑別が重要である。

    まとめ

    代謝障害の合併症について解説した。臨床では、様々な現象が対象者を取り巻いている。特に、脳卒中を呈している方の場合、中枢神経障害による症状が多岐にわたる。その上、代謝障害による合併症が重なることで、より複雑なものとなる。その為、病態の正確な把握というものは非常に重要な要素となる。

    うまく療法としての介入効果を認めない時や、平時に比べて活動性が低下しているなど、介入に行き詰ることもあるかと思う。そのような時に、一つの視点に囚われることなく、様々な情報から対象者の現象の考察を行う。それをもとに、対象者の健康と幸福の援助を行う必要があると考える。

    【共著】
    畠朋成(脳梗塞リハビリセンター)

    【参考文献】
    日本糖尿病学会:糖尿病診療ガイドライン2019.南江堂:p171,2019
    Boulton AJ, et al: Diabetic neuropathies. Diabetes Care 28 : 956-962, 2005
    Kawasaki R, et al: Incidence and progression of diabetic retinopathy in Japanese adults with diabetes. Diabetologia54 : 2288-2294, 2011
    上月正博 他 : 内部障害のリハビリテーション. 医歯薬出版株式会社 : 278-301, 2017
    Zougas S, et al: Effects of intensive glucose control on microvascular outcomes trolled trials. Lancet Diabetes Endocrinol 5 : 431-437 , 2017
    Moriya T, et al: Diabetic retinopathy and microalbuminuria can predict macroalbuminuria and renal function decline in Japanese type 2 diabetic patients. Diabetes Care 36 : 2803-2809,2013
    羽田勝計 他: 糖尿病性腎症病気分類2014の策定. 糖尿病 57 : 529-534,2014
    Norgren L, et al: Inter-Society Consensus for the Management of Peripheral Arterial Disease (TASC II). J Vasc Surg 45: S5–S67, 2007
    重松邦弘 : 【peripheral arterial disease(PAD)に対する新しい戦略】PAD原疾患の変遷とその理由: Heart View 18: 590-595, 2014

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