1. ホーム
  2. コラム
  3. 糖尿病・脂質異常症患者と関わる際に抑えておく検査数値

糖尿病・脂質異常症患者と関わる際に抑えておく検査数値

お気に入り数3
竹林崇 大阪府立大学 教授

前回までで解説したように、糖尿病や脂質異常症と診断された場合、指標として、様々な検査値が用いられている。今回は、それぞれの治療目標となる検査値について、解説する。

目次

    はじめに

    日本糖尿病学会から糖尿病治療の目標として、「健常な人と変わらない日常生活の質の維持、健康な人と変わらない寿命の確保」と挙げられている。脂質異常症含め、代謝疾患に関しても、同様のことが言えるのではないだろうか。糖尿病や脂質異常症では、治療目標の数値が決められている。療法士は診断や疾病に対する治療方針を決定するわけではない。しかし、対象者と関わる場合、治療の進行度合いや、疾病の重症度を理解する上でも、検査数値や項目の理解は必須である。今回は、糖尿病と脂質異常症についての検査数値について解説する。

    糖尿病についての検査数値

    糖尿病の指標で一般的に診断に用いられている検査値に、血糖値とHbA1cがある1)。血糖値でも、空腹時血糖値・随時血糖値・ブドウ糖負荷試験(oral glucose tolerance test: OGTT)と時間や状態に応じて検査する。血糖値は、血中のグルコースの濃度で、HbA1cはヘモグロビンにグルコースが結合したものである。下記に各検査値の糖尿病型を示す(表1)。実際の診断では、以下の糖尿病型が2回確認されることや、症状、臨床所見などを参考として総合判断する。
    (表1)

    1)より引用。

    糖尿病の血糖コントロールの目標に関しては血糖コントロールを正常な状態を維持することは必要である。UK Prospective Diabetes Study Group2)により、3867例に対する10年間のランダム化比較試験では、薬物を使用した集中的な血糖コントロール群と、食事療法のみの従来の治療群にわけ、血管合併症の発症等に与える影響を研究した。その結果、集中的な治療群では、網膜症などの最小血管症の発症が25%の低下を認めたとある。しかし、大血管症の発症には差がなく、集中治療群では急激な体重増加や、低血糖症状も出現したともある。また、Gerstein の報告では3)10,251人の2型糖尿病患者を対象に、HbA1cを6.0%未満レベルに管理した集中治療群と7.0~7.9%で管理した標準治療群で比較した。その結果、集中治療群で死亡率が高いことが判明したため、3.5年で集中治療を中止している。その為、血糖コントロール目標は、状況に応じ、個別性に合わせて設定しなければ、一概に良好な因子とはなり得ない可能性がある。下記に糖尿病ガイドラインでの血糖コントロール目標を示す1)表2。
    (表2)

    1)より引用

    以上の様に、血糖コントロールに関して、対象者の個別性を評価し対応することが重要である。

    脂質異常症についての検査数値

    脂質異常症の診断基準としては以下のものがある4)(表3)。
    (表3)

    4)より引用

    脂質異常症の診断基準値は、スクリーニングの為の基準であり、疫学調査などより、“将来、動脈硬化性疾患、特に冠動脈疾患の発症を促進させる危険性の高い病的脂質レベル”として設定されている。

    LDLコレステロールに関しては、邦人を対象に薬物療法と食事療法により20~30%の低下で冠動脈疾患の発症が低下したことが示されている5)。しかし、一方でLDL70㎎/dl未満を目指した強化療法群と100~120㎎/dL以下の通常療法群では、心血管疾患発症に差がなかったという報告6)もあり、LDLコレステロールのみでの管理目標としての有用性は明らかではない。

    現在では、HDLコレステロールとLDLコレステロールの比率である「LH比」が心血管疾患のリスクを評価するために用いられており7)、HDLコレステロールと併せて見る必要がある。本邦では、LH比が2以上になると急性心筋梗塞の有意な危険因子となるという報告がある8)。

    高トリグリセライド値に関しても高値により、冠動脈疾患が増加したという報告もあり9)、それぞれが動脈硬化疾患のリスクファクターとなる。

    糖尿病・脂質異常症に関する検査数値を解説した。各種の検査所見は、対象者の全身状態を把握し、介入の際のリスク管理や予後予測を考察するための重要な材料になる。その為、急性期に関わらず生活期、回復期でも見ていく必要があると思う。しかし、漫然と数値の高低を見るだけでなく、基準値からどの程度外れているか、検査値の経時的な推移を見る等、個別性の評価が必要であると考える。

    上記の点を踏まえて、各療法の強度や種類を選定する必要もあると思われる。

    【共著】
    畠朋成氏(脳梗塞リハビリセンター)

    【参考文献】
    日本糖尿病学会:糖尿病診療ガイドライン2019.南江堂:p5,2019.
    United Kingdom Prospective Diabetes Study (UKPDS) Group : Intensive blood-glucose control with type2 diabetes(UKPZDS33).Lancet 352 : 837-853,1998
    Gerstein HC, et al : Effects of intensive glucose lowering in type2 diabetes. N Engl J Med 358 : 2545-2559, 2008
    日本動脈硬化学会:動脈硬化性疾患予防のための脂質異常症診療ガイド2018年度版.伸企画;p25,2019
    Nakamura H, et al : Primary prevention of cardiovascular disease with pravastatin in Japan (Mega Study) : Lancet 368 : 1155-1163, 2006
    Itoh H , et al : Intensive Treat-to-Target Stain Therapy in High-Risk Japanese Patients With Hypercholesterolemia and Diabetic Retinopathy : Diabetes Care 41 : 1275-1284, 2018
    Fernandez ML, et al: The LDL to HDL cholesterol ratio as a valuable tool to evaluate coronary heart disease risk. J AM Coll Nutr 27 : 1-5, 2008
    佐久間一郎 他: LDLコレステロールが低値の急性心筋梗塞症例が有する脂質の特徴:一般住民健診受診者を対照群とした検討. 人間ドック 24 : 129-136, 2009
    Sone H, et al : Serum level of triglycerides is a potent risk factor comparable to LDL cholesterol for coronary heart disease in Japanese patients with type2 diabetes. J Cin Endocrinol Metab 96 : 3448-3456,2011

    コメント

    この機能を利用するには、ログインが必要です。未登録の方は会員登録の上、ログインしてご利用ください。

    [[ ]]

    [[ comment.username ]] [[ getTime(comment.create_time) ]]
    削除する
    もっと見る

    この記事に関連するタグ

    興味のあるタグをフォローしておくことで、自身のフィードに関連するセミナーやコラムを優先的に表示させることができます。(無料会員機能。登録はこちら)

    人気コラム

    もっと見る

    コラムで人気のタグ

    タグをフォローしておくことで、自身のフィードに興味のあるセミナーやコラムを優先的に表示させることができます。(無料会員機能。登録はこちら)

    注目執筆者

    もっと見る

    コラムカテゴリ