糖尿病・脂質異常症に対する治療・予防を行う上で運動療法・食事療法・薬物療法は基本となり、これらを行うことで、脳卒中の再発予防にもなる。しかし、実際には様々な、方法がメディアや書籍で提唱されており、どの方法が効果的に行われているかに迷う場合がある。そこで、今回は上記3つの方法論について解説していきたい。

はじめに

生活習慣に起因した糖尿病・脂質異常症に対する治療は運動療法・食事療法・薬物療法が基本である。ガイドライン1)でも、基本的治療方針として、十分な食事療法と運動療法を実施した上で、コントロール不良の場合に薬物療法を追加することを推奨している。しかし、それらの方法論は、各書籍やマスメディアなどで多数取り上げられており、時には民間療法的な場合もある。そこで今回は、各療法でどのような研究報告していきたい。

食事療法

一般的にある食事療法としての減量方法には、大まかに分けると炭水化物制限、カロリー制限、脂質制限、たんぱく質制限がある。最近では、特に炭水化物制限が取り上げられている印象があり、反対意見も多数見受けられる。Sato 2)らは、日本人の2型糖尿病患者を対象に、1日に摂取する炭水化物を130g以下に制限しカロリーは制限しない炭水化物制限群と、バランスの取れた食事で摂取エネルギーを制限したカロリー制限群で6か月後の血糖コントロールとBMIに与える影響を検討した。その結果,炭水化物制限群でHbAlcとBMIが有意に改善していた。しかし,その後、1年後の追跡調査3)では,両群間においてHbAlcとBMIに有意差がなくなっていたことが報告されている。この結果からは,炭水化物制限は短期的には効果があるものの,長期的な面では、カロリー制限ダイエットに比べて優っているわけではないことがわかる。

その他の減量方法の比較では、脂質制限群(カロリー制限)、炭水化物制限群(非カロリー制限)、地中海食群(総エネルギー制限)による減量効果を2年間にわたって検証したものがある。脂質制限群に比べて、炭水化物制限群と地中海食群は最も減量効果が高く、LDLコレステロールの低下HDLコレステロールの増大やインスリン抵抗性にも改善が認められた4)。しかし,その後の4年後の追跡調査では炭水化物制限群でもっとも体重のリバウンドが大きかったことが示された5)。

いずれの方法でも、減量効果や高血糖、高コレステロールの改善は認めることがわかる。そして、食事療法は持続することが重要であり、個人に合った方法を選択する必要があると考える。

運動療法

運動療法に関しては、有酸素運動が有効であることは周知であるが、現在ではレジスタンス運動による効果の報告が増えている印象がある。また、それぞれの運動を単独で行うことに比べて、組み合わせることにより、HbA1c低下効果が高まることが示されており6)、加えて、中性脂肪が低下する報告もあり7)、両者を組み合わせることで代謝障害の改善に効果的であることがわかる。

しかし、運動療法は持続することが重要であり、その為には日常生活に落とし込む必要がある。デンプシーら8)の研究では2型糖尿病の患者が、30分に1度30秒程度の軽い運動を行う事により、座位を維持した場合に比べて高血糖が改善すると報告されている。

児玉ら9)は、習慣的に身体活動量が高い場合は、心血管疾患と死亡率が大幅に低下するというデータを示している。

これらの事から、運動習慣が無く運動療法に対して消極的な対象者の場合は、日常生活における活動量を増大させるだけでも代謝の改善につながることを伝え、段階的に運動量を増大することも可能と考える。

薬物療法

薬物療法に関しては、直接セラピストが関わることは少ないが、対象者と関わる際にどのようなものがあるかを知っておく必要はある。今回は、脳卒中再発予防に関する研究について解説する。

ウィルコックスら10)は、心血管疾患と糖尿病の既往のある患者に対して、糖尿病と心血管薬に加えてピオグリタゾンを服薬したところ、脳卒中の再発を減少させることが示されている。

脂質異常症に関しては、スタチンの内服が日本人の脂質異常症患者の再発性脳卒中のリスクを軽減していることを示された11)。

代謝障害における予防行動について解説した。我々セラピストは、生活や活動における指導や介入の際に以上の様な研究をもとに、関わる必要がある。

【共著】 畠 朋成(脳梗塞リハビリセンター)

【参考文献】 1)日本糖尿病学会:糖尿病診療ガイドライン2019.南江堂:p22,2019. 2) Sato J, et al:Arandomized controlled trial of 130g/day low-carbohydrate diet in type 2 diabetes with poor glycemic control .Clin Nutr36(4):992-1000,2 017. 3) Sato J, et al: One year follow-up after a randomized controlled trial of a 130g/day low-carbohydrate diet in patients with type 2 diabetes mellitus and poor glycemic control.PLoS One(12) : eO188892,2017. 4) Shai L, et al:Weight loss with a low-carbohydrate,Medite’ranean,or low-fat diet.N Eng J Med 359(3):229-241,2008. 5) Schwarzfuchs D, et al:Four-year follow-up after two-year dietary interventions.N EngL J Med 367(14):1373-1374,2012. 6) Schwingshackl L, et al: Impact of different training modalities on glycaemic control and blood lipids in patients with type 2 diabetes:asystematic review and network meta-analysis. Diabetologia (57):1789-1797, 2014 7) Thomas DE, et al: Exercise for type 2 diabetes mellitus. Cochrane Database Syst Rev: CD002968, 2006 8) Dempsey PC, et al: Benefits for type 2 diabetes of interrupting prolonged sitting with brief bouts of light walking or simple resistance activities. Diabetes Care (39): 964-972, 2016 9) Kodama S, et al: Association between physical activity and risk of all-cause mortality and cardiovascular disease in patients with diabetes. Diabetes Care (36): 471-479, 2013 10) Wilcox R, et al : Effects of pioglitazone in patients with type 2 diabetes with or without previous stroke : results from PROactive(PROspective pioglitAzone Clinical Trial In macroVascular Events . Stroke (38 ): 865―873,2007 11) Tanaka K, et al: Reduction in the recurrence of stroke by eicosapentaenoic acid for hypercholesterolemic patients: subanalysis of the JELIS trial. Stroke (39): 2052―2058, 2008.

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