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他職種におけるEBM(Evidenced Based Medicine)の歴史

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竹林崇 大阪府立大学 教授

本稿ではEvidence Based Medicine/Practice(EBM/EBP)が他職種においてどのように発展して,位置付けされているのか解説していく.

目次

    看護師におけるEBM/EBPのあり方(Evidenced Baced Nurcing:EBN)

    Mackeyら1は看護における証拠に基づく実践は1800年代のフローレンス・ナイチンゲールから1970年代の医師の診療、そして1990年代後半の看護専門性から発展したと報告している.また発展の成り立ちとしては悲惨で不衛生な状態を経験した患者により良い結果を提供するという考えから始まり,安全で有能なケアを提供する為の「看護」が発展した.国際看護師協議会によると,証拠に基づいた実践は,看護分野が各々の実践におけるギャップを埋めるための最善の看護分野の方法であると提示している.また看護分野におけるエビデンス基づく実践は厳密に臨床に基づくものから進化して,看護研究と実践をより適切に臨床に反映する包括的アプローチを組み込んでいるとされている.

    Yooら2は米国、英国、オーストラリアなどの欧米諸国は,1990年代からEBPによる看護を強調しており,各組織からEBPに関連する様々なリソースを提供するガイドラインを開発するなど発展を遂げていると報告している.また米国看護大学協会は専門看護実践の9つの必須要素の一つとしてEBPを提示している.看護分野においてもEBM/EBPの思考は浸透してきており,看護を提供する上で必須要素となってきている.

    実際の介入試験の1例を挙げる.Hansenら3が頸椎椎間板ヘルニア及び腰椎椎間板ヘルニアの手術を予定している対象者に対して,術後,実際にトイレで排泄をする群と尿器等を用いてベットサイドで排泄する群でのそれぞれのカテーテル(バルーンカテーテル等)へ移行に関するランダム化比較試験を報告している.結果としては頸椎及び腰椎椎間板ヘルニアの対象者をそれぞれ合計で比較するとトイレで排泄した群(トイレで排泄した群対ベットサイドで排泄した群それぞれのカテーテルに移行した割合:19%対34%)の方がカテーテルへの移行する人数が少ないことを示した(P<0,001).

    また,看護師自身がEBM/EBPに対してどのように捉えているかについてMelnykら4が報告している.米国看護協会所属の看護師1015人を対象にした調査では組織の中でEBPが一貫して実装されていると同意もしくは強く同意した人は53,6%であり,同僚が対象者に対してEBPを一貫して実施していると同意もしくは強く同意している人は34,5%であったと報告している.また76,2%がEBPの実践能力の構築や教育を受けることが重要であると強く同意もしくは同意している.一部の研究ではあるが上記のことを踏まえると看護分野においてもEBM/EBPの重要性は認識しているものの,実践されているケースが少ないことが考えられる.

    栄養士におけるEBM/EBPのあり方(Evidenced Based Nutrition:EBN)

    EBNの考え方が生まれた背景として渡辺5は医療分野においてヒトから得られた研究結果が大きな価値を持ち,実証されている客観的根拠に基づく医療が求められていることや,IT(information technology:情報技術)の発達により情報の検索,収集が容易になったことが関与していると述べている.

    EBNの考え方をより一層強める臨床栄養研究の1つとして,PREDIMED(Prevencióncon DietaMediterránea)試験6がある.この試験では,心血管疾患のない男女に対して地中海式食事に割り当てられた群(エキストラバージンオイルあるいは1日辺り30gのナッツを摂取)と低脂肪食をアドバイスされた対照群との心筋梗塞,脳卒中,心血管系の原因による死亡リスクを比較した.結果は地中海式食事を組み合わせた群の方が5年における絶対リスクが対照群より低く(3,6対5,9),その他項目においても肯定的な結果を示した.

    EBNは3つの基本原則が含まれる.第1に最適な臨床的意思決定には,理想的には証拠の体系的な要約から得られる利用可能な最良のエビデンスの認識が必要である.第2にEBNは証拠が多かれ少なかれ信頼できるかどうかを判断するためのガイダンスを提供する.第3にエビデンスだけでは臨床上の決定を下すのに十分ではないとされている.第3の基本原則に関連する記述としてJohnstonら7は意思決定者は常にEBNを実践する上でのリスク,負担,およびコストと個人の食習慣,好みをトレードオフし,その際,対象者固有の苦境と好みを考慮する必要があると述べている.またTrichopoulos ら8はEBNの実践の中で2つのアプローチ方法について報告している.特定の一般的な疾患の発生率と死亡率を減らすための適切な食事を研究し,これらの様々な食事に共通する要素を見つけ出し,理想的な食事を作ることをボトムアップアプローチと報告している.そして特定の伝統的な食事と,成人の平均余命または主要な疾患群による死亡率の低さを特徴とする集団を調べることをトップダウンアプローチと報告している.

    2002年の古い報告ではあるが日本におけるEBNに関する報告がある.佐々木9は日本におけるEBNの主たる情報源となるヒトを対象とした研究数やそれをサポートする体制が諸外国と比較して乏しいことを報告している.日本においてもEBNが広まり,実践されることで対象者に対して適切な栄養指導等を行うことに繋がるのではないかと考えられる.

    まとめ

    今回は他職種(看護師,栄養士)におけるEBM/EBPのあり方について簡単に説明した.EBM/EBPから波及して他職種においてもEvidenced Baced NurcingやEvidenced Baced Nutritionと言葉が変換され広まりつつある.それぞれEBM/EBPと同様にエビデンス重視の考え方ではなく,対象者の価値観や益と害といった要素も含んで実践に当たっており,他職種においても対象者を踏まえた実践のあり方を提唱している.

    【共著】
    横山広樹(関西医科大学くずは病院 リハビリテーションセンター 理学療法士)

    【参考文献】
    Mackey A,et al: The History of Evidence-Based Practice in Nursing Education and Practice.J Prof Nurs.33(1):51―55,2017.
    Yoo JY,et al:Clinical nurses' beliefs,knowledge,organizational readiness and level of implementation of evidence―based practice: The first step to creating an evidence-based practice culture.PLoS One .14(12):2019.
    APA Hansen,et al : The number of in―out catheterisations is reduced by mobilising the postoperative patient with bladder needs to the toilet in the recovery room,European Journal of Anaesthesiology (EJA): Volume 32 ― Issue 7 -:486-492,2015.
    Melnyk BM,et al:The state of evidence―based practice in US nurses::critical implications for nurse leaders and educators.J Nurs Adm.42(9):410‐417,2012.
    渡辺満利子:栄養学におけるEvidence-based Nutrition .行動計量学28(2):50―55,2001.
    Estruch R,et al: Primary Prevention of Cardiovascular Disease with a Mediterranean Diet Supplemented with Extra―Virgin Olive Oil or Nuts.N Engl J Med.378(25):e34,2018.
    Johnston BC,et al: The Philosophy of Evidence-Based Principles and Practice in Nutrition . Mayo Clin Proc Innov Qual Outcomes . 3(2):189-199,2019.
    Trichopoulos D,et al:Evidence-based nutrition. Asia Pac J Clin Nutr.9 Suppl 1:S4-S9,2000.
    佐々木敏:EBNに対する誤解を解く.臨床栄養100(6):2002.

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