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EBM(Evidenced Based Medicine)のコストベネフィット

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竹林崇 大阪府立大学 教授

本稿ではEvidence Based Medicine/Practice(EBM/EBP)の実践におけるコストベネフィット(費用対効果)について解説していく.

目次

    費用対効果に関する指標

    医療経済評価研究に関するガイドライン1において費用対効果を表すアウトカム指標としてQALY(Quality adjusted life year)が推奨されている.QALYについてSarahら2は対象者の寿命に対する治療の影響と,治療結果の主要な指標として認識されている健康関連の生活の質への影響を包括化する必要があり,これらの影響を捉えるために開発されたとしている.また医療資源配分の決定に役立つ健康結果の要約尺度として,医療経済学で広く使用されている.QALYは健康状態で費やされていた時間に,その健康状態に関連づけられた生活の質を乗算することで計算される.QOL値が1は完全な健康を,0は死亡を表す.QOL値0,6の健康状態で2年間生存した場合,生存年は2年だが,乗算して1,2QALY(完全に健康な状態で1,2年生存したのと同じ価値)と計算される.時間とともにQOL値が変化する場合,QOL値の経時変化をあらわす下図の曲線下面積が獲得できるQOLYとなる.


    1より抜粋

    費用対効果に関する知見

    McGuirkら3は急性腰痛の管理に関するエビデンスに基づくガイドラインの有効性や費用対効果について報告している.エビデンスに基づいたガイドラインに遵守する介入と通常のケアを提供する介入で比較検討された.エビデンスに基づいた介入では自宅でのリハビリテーションを多く利用しており,一方で理学療法や休息,ホットパック,デキストロプロポキシフェンなどのオピオイドや非ステロイド性抗炎症薬の使用を減らした.通常のケアの介入では担当医師が処方した治療に加えて,処方されていない非ステロイド性抗炎症薬や鎮痛薬,塗布薬,マッサージなどのケアを利用していた.結果はエビデンスに基づく介入の平均コストは約276ドルで通常ケア介入群では平均472ドルとなり,前者の方がコスト面において低く抑えられていた.また臨床的アウトカムにはVAS(visual analog scale)やSF ―36(MOS 36―Item Short―Form Health Survey)が測定されており,それぞれ両群共に改善が認められた.

    またWoodsら4は英国のガイドラインのNICE(National Institute for Health and Care Excellence)で推奨されている変形性膝関節症に対する非薬理的補助療法の手段である徒手療法,経皮的電気神経刺激(TENS),ブレース,インソール等を比較した報告がある.アウトカム指標としてQALYが用いられており,対象となった文献としては系統的レビューから特定されたランダム化比較試験において変形性膝関節症の成人を対象とした一次または二次転帰として疼痛を評価した文献が抽出された.結果としてはTENSが英国で費用対効果が高いと示される基準を満たしていた.しかし、この研究ではランダム化比較試験の質が低い事や選択バイアスを考慮した時にTENSの費用対効果が小さくなる事が指摘されており、結果の解釈は注意する必要がある.上記のようにガイドラインで推奨されている中においても,費用対効果は異なる可能性を孕んでいる.

    さて,EBM/EBPに対する費用対効果の論文とは異なるが,リハビリテーションの介入自体に焦点を当てられた研究も報告されておりNagayamaら5は作業療法の費用対効果に焦点を当てた系統的レビューを実施した.対象者は60歳以上の高齢者で,無作為化比較試験及びクラスター比較試験を対象にした研究論文とされた.作業療法の介入内容としては身体的,感覚的,心理的,認知的機能,ADL,環境,補助具の使用,主介護者のカウンセリングを対象とした作業療法介入とし,対照群としては作業療法ではないとされた介入やその他の介入(転倒防止情報のリーフレットを渡すことや,非専門家によって管理された社会活動プログラム等)とされた.最終的には5つの論文が対象となり,費用対効果を示した論文もあったが,有意差がなかった論文もあり,今後,さらなる作業療法の価値を示す上での費用対効果の研究が推奨されている.またNagayamaら6は回復期リハビリテーション病棟に入院中の亜急性期の脳卒中患者に対して対象者にとって意味のある作業を特定して作業療法を実施した群(Aid for Dicision-making in Occupation Choice:ADOCを使用)と身体機能に焦点を当てた介入での無作為化比較試験を実施しており,結果として前者の方が1回のQALY増加に費やす費用が抑えられ,効果的であることを報告している.ただし,これらの結果が不安定になる要因の一つとして,作業療法分野のエビデンスの少なさが挙げられる.今後も臨床試験によって,この分野のエビデンスをより強固とすることにより,費用対効果も向上すると考える.

    まとめ

    今回,EBMのコストベネフィットに関して簡単に解説した.EBMを実践することは対象者に対して利益をもたらすだけではなく,国の医療費の削減につながる効果がある考えられている. EBMを用いることが対象者及び社会全体に貢献する手段の一つとしてなり得ると考えられる.

    【共著】
    横山広樹 関西医科大学くずは病院 リハビリテーションセンター 理学療法士

    【参考文献】
    福田敬:医療経済評価研究における分析手法に関するガイドライン.保健医療科学62(6):625―640,2013.
    Sarah J,et al:Health outcomes in economic evaluation: the QALY and utilities.British Medical Bulletin,Volume 96, Issue 1: 5–21,2010.
    McGuirk B,et al:Safety,efficacy, and cost effectiveness of evidence-based guidelines for the management of acute low back pain in primary care. Spine (Phila Pa 1976),26(23):2615-2622,2001.
    Woods B,et al: Cost―effectiveness of adjunct non―pharmacological interventions for osteoarthritis of the knee.PLoS One,12(3):2017.
    Nagayama H,et al:Cost―effectiveness of Occupational Therapy in Older People: Systematic Review of Randomized Controlled Trials. Occup Ther Int,23(2):103―120,2016.
    Nagayama H, et al:Cost effectiveness of the occupation―based approach for subacute stroke patients: result of a randomized controlled trial. Top Stroke Rehabil. 24(5):337―344,2017.

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