EBM(Evidenced Based Medicine)とNBM(Narrative Based Medicine)

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竹林崇 大阪府立大学 教授

本稿ではEvidence Based Medicine/Practice(EBM/EBP)とNBM(Narrative Based Medicine)の双方の関係性について解説していく.

NBM(Narrative Based Medicine)とは

EBM(Evidence Based Medicine)に関しては(EBMとは←以前のコラムへの誘導をつけてください)以前のコラムを参考にして頂きたい.Charonら1は医療のモデルとして,narrative medicineはケアの理想を提案し,その理想に向けて努力するための概念的および実用的な手段を提供すると報告している.また,生物心理社会医学や患者中心の医学などのモデルによって患者と病気を広く見通すためのnarrative medicineは患者と医師の間の個人的なつながり,個々の医師,医師の集団の医療行為の意味を理解する手段となると述べている.

Fioretti2によるとNBMとは「病気の経験に関与するすべての参加者のさまざまな視点を獲得,理解,統合するための基本的なツール」と定義し、George3は患者中心のケアの実施のために認められたモデルであり,病気,健康増進,病気の予防,共有意思決定の生物・心理・社会的側面も含まれていると報告している.さらにGreenhalgh4は「臨床的方法はナラティブスキルを利用して,患者,臨床医,およびテスト結果によって伝えられる重複するストーリーを統合する解釈的行為」としている.

上記を踏まえるとNBMとは患者中心のケアのモデルであり,患者側の物語(病いの体験)の理解を深め,医療者側の物語(疾患に関する知識や治療方法)と検査結果等を摺り合わせていき,患者の今後の方針を決定していく手段であると考えられる.

NBMの介入研究

Fiorettiら5 はNBMに関するシステマティックレビューを報告している.システマティックレビューでは患者あるいは介護者に焦点を当てたアプローチを実施している研究を対象としており,無作為化比較試験や観察研究,事例研究等を含んでいる.10件の研究が抽出され,そのうち5件はNBMの手順を評価ツールとして使用した介入研究(例えば癌患者に対してNBMを使用して介入することで疼痛が軽減し,全体的な幸福感が向上するか評価6)であり,介入手順はそれぞれの研究間で大きく異なっていた.一方で残りの研究ではNBMをデータ収集ツールとして使用した研究であった.Fioretti らは上記の研究結果を踏まえた上でNBMが患者の病気の経験を評価する為の有用なツールであり,患者の生活のニーズと重要な側面に焦点をあてた一般的な臨床情報を充実させるために日常の医療に実装することができるとしている.

両者は対立するものなのか

これまでのNBMの話から考えると客観的かつ科学的なEBMとは対極的ではないかと疑問が生ずる人もいるかもしれない.しかしそれは誤解であると言える.斎藤7はNBMとは臨床現場における対話を医療の最も本質的な行為とするとともに,最新の生物・生命の科学から得られた知見や,臨床疫学的な情報などを,臨床現場において医療に統合し、個々の患者の最大幸福を実現することを目指す方法論としている.また酒井8はEBMとNBM は相互に補完的であり,NBMを加えることによってEBMの体系は完成するという考え方があることを報告している.EBMは臨床研究によるエビデンス,医療者の専門性・熟練性と患者の価値観,またこの3要素に加えて「状況」を組み込んだ4要素であると定義されている.この中でも特に患者の価値観もしくは好みを把握する為には対話は必須である.つまり上記のことも踏まえるとEBMの中にNBMの実践を含んでいるという考えが成り立つ.

まとめ

今回はNBMについての概要とEBMとの関係性について簡単に解説した.NBMとEBMは二項対立をするものではなく,それぞれが相互に補完する役割を持っている.例えばEBMの中で言えば患者の価値観であり,病の体験を通してどのような視点もしくは価値観を持っているのかをNBMが引き出し補完する役割を持っている。その為,EBMを実践する上でもNBMの考え方が重要であり,医療ひいてはリハビリテーションを提供する上で双方の考えを理解することは非常に有用だと考える.

【共著】 横山広樹 関西医科大学くずは病院 リハビリテーションセンター 理学療法士

【参考文献】 Charon R:The patient―physician relationship.Narrative medicine: a model for empathy, reflection, profession, and trust. JAMA.286(15):1897―1902,2001. Fioretti C,et al: Research studies on patients' illness experience using the Narrative Medicine approach::a systematic review BMJ Open 6:2016 George Z:Narrative-based medicine and the general practice consultation.Canadian Family Physician Apr 64 (4): 286―290、2018. Greenhalgh T:Narrative based medicine in an evidence based world BMJ 318 :323,1999. Fioretti C,et al: Research studies on patients' illness experience using the Narrative Medicine approach: a systematic review.BMJ Open 6(7):2016. Cepeda MS,et al: Emotional disclosure through patient narrative may improve pain and well―being:results of a randomized controlled trial in patients with cancer pain.J Pain Symptom Manage.35(6):623―631,2008. 斎藤清二:患者と医療者の物語〜Narrative Based Medicineの意義〜.理学療法科学第32巻(8号):445―449,2005. 酒井達也:Evidence―Based Medicine と Narrative―Based Medicine の統合.JIM 13巻(10号):872―875,2003.

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