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Grade-4/5 Motor Activity Log:重度上肢運動麻痺患者のための Motor Activity Log

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竹林崇 大阪府立大学 教授

脳卒中後の重度上肢運動麻痺を有する患者の機能評価は難しい. これは, これまで十分に反応性を確認してきたツールの中には, 軽度から中等度の上肢運動麻痺を想定としているものが多く含まれていることにも起因する. Motor Activity Log (MAL) はその最たるものの一つであるが, 現在では重度上肢運動麻痺を有する患者を想定し, その活動内容を大幅に変更した Grade-4/5 Motor Activity Log (Grade-4/5 MAL) を採用した報告が散見されるようになった. そこで, 本ツールの開発経緯とその内容, 使用する上での注意点について解説する.

目次

    開発の歴史

    Grade-4/5 Motor Activity Log(Grade-4/5 MAL) は, 脳卒中後の重度上肢運動麻痺を有する患者の「実生活における」麻痺側上肢使用を評価するツールである. 契機となったのは, CI 療法が当初想定していた軽度から中等度の上肢運動麻痺患者から外れる, 重度上肢運動麻痺患者に対する試験的な CI 療法実践である. その際, Edward Taub を中心としたアラバマ大学心理学部所属の研究者チームは, CI 療法を基軸とした包括的な介入を導入することによって重度上肢運動麻痺患者の肩関節や肘関節の動きの改善を観察していた.しかしながら, その様な関節レベルの改善を認めていたにも関わらずこれまでは十分な反応性を確認してきた Standard Motor Activity Log (MAL) での改善を観察することが出来なかった. そこで, 彼らは MAL に含まれる活動が高い物品操作性を前提としていることを再度認識し, 重度上肢運動麻痺患者における運動機能改善を「実生活」レベルで捉えることのできるツールに作り変えることとした. そして, 開発されたのが Grade-4/5 MALである.

    基となったのは, MAL-14 の後に開発された MAL-30 である. 本ツールが臨床評価ツールとして国際的な日の目を見たのは, 2006年の Bowman の Case Report(症例報告)[1] だと筆者は認識しているが, その後も地道な臨床活用が続いていた様で, 2013年に Taub 自ら舵を切った Case Series 研究(原著論文)でもその利用を確認することができる[2]. そして, Grade-4/5 MAL の存在をより際立たせたのが, 2018年に報告された Uswatte 筆頭の無作為化比較試験(randomized controlled trial, RCT)である. この臨床試験において彼らは, Expanded Constraint-Induced Movement Therapy( “拡張” CI 療法 )という呼び名を採用して, 重度上肢運動麻痺患者に対する CI 療法を基軸とした包括的なリハビリテーション治療の可能性を力強く世界に発信している. そして, その RCT における Primary Endpoint(主要評価項目) として採用されたツールが Grade-4/5 MAL である.

    どんなツール?

    重度上肢運動麻痺患者が実施する生活活動として想定困難な課題(例:鍵を鍵穴に挿して回して解錠する, シャツのボタンを留めるなど)が MAL-30 から除外され, より手指機能や操作性を要求せず難易度が低いと想定された活動(例:エレベーターや自動販売機のボタンを押す, トイレを流すレバーを使用するなど)が新たに追加されている(図1を参照). 項目数は 30項目で, 合計得点を活動数で除し平均点をアウトカムとして用いる点は MAL と同様である. 各活動の得点範囲は, 0 点から 5 点で 0.5 点ごとの採点が許されるため, 採点段階も同様の 11 段階ということになる. 採点の視点に関しても, 麻痺側上肢の使用頻度(Amount of Use Scale)という視点とその際の動作の質(Quality of Movement Scale)に対する視点という二つの視点があるようだが, 現状では Amount of Use Scale の方が前に出ている状態である.


    評価特性においては, Taub や Uswatte らと同じ研究室に所属する Morris による 2009年の非公開データによると, 高いテスト再テスト信頼性(r = 0.95; n = 10)と内部一貫性(Cronbach ? = 0.95, n = 30)を確認したという情報がある[2]. 信頼性という観点では他にも, Uswatte らの RCT の介入前後データを用いた解析においても同様に高いテスト再テスト信頼性(r = 0.95; n = 10)と内部一貫性(Cronbach ? = 0.94, n = 21)を想定できるとの記載を確認できる. 併存的妥当性に関しては, Taub らによる Case Series 研究[2] において, 手首に装着した加速度計に由来する活動量の経時的改善と Grade-4/5 MAL における経時的改善がかなり似通っていたことが注目されている[3].

    ピットフォール

    まず, 評価特性検討を第一に想定した前向きの一般公開された臨床試験報告が不足している点が問題である. また, 国や施設を超えて広範囲での流通を期待するのであれば, 検者間信頼性報告も必要である. 加えて, 論文によって Grade-4/5 MAL で扱われている活動の内容に微妙な違いを確認することができる点にも注意が必要である.

    近年の医療分野の評価特性検討研究においては, いわゆる古典的テスト理論だけでなく, 項目応答理論などの比較的新しい手法が積極的に取り入れられている. そのような手法の一部を用いて, Grade-4/5 MAL に含まれる課題の難易度等を検討し, 含有する項目や採点システムなどに改善の余地があることを示す報告も既に存在する[4, 5]. ただこの流れは, 心理学や教育学で発展した比較的新たな評価特性検討手法(項目応答理論, 一般化可能性理論など)が, 医療現場に広く応用され始めたことにも由来していると筆者は考えている. つまり, これは Grade-4/5 MAL に限った話ではなく, Standard MAL や Fugl-Meyer Assessment, Action Research Arm Test など既にそれなりの評価特性検討を経て広く流通しているツールについても, そのような手法の視点にさらされその適切性が再度問われ始めているということである. 今後とも Grade-4/5 MAL に対する更なる評価特性検討研究を期待したい.

    【共著】
    天野暁(新潟医療福祉大学 リハビリテーション学部 作業療法学科 講師)

    【References】
    1. Bowman MH, Taub E, Uswatte G, et al. A treatment for a chronic stroke patient with a plegic hand combining CI therapy with conventional rehabilitation procedures: case report. NeuroRehabilitation. 2006;21(2):167-76. PubMed PMID: 16917163; eng.
    2. Taub E, Uswatte G, Bowman MH, et al. Constraint-induced movement therapy combined with conventional neurorehabilitation techniques in chronic stroke patients with plegic hands: a case series. Archives of physical medicine and rehabilitation. 2013 Jan;94(1):86-94. doi: 10.1016/j.apmr.2012.07.029. PubMed PMID: 22922823; PubMed Central PMCID: PMCPMC3529797. eng.
    3. Uswatte G, Taub E, Bowman MH, et al. Rehabilitation of stroke patients with plegic hands: Randomized controlled trial of expanded Constraint-Induced Movement therapy. Restorative neurology and neuroscience. 2018;36(2):225-244. doi: 10.3233/rnn-170792. PubMed PMID: 29526860; eng.
    4. Chuang IC, Lin KC, Wu CY, et al. Using Rasch Analysis to Validate the Motor Activity Log and the Lower Functioning Motor Activity Log in Patients With Stroke. Physical therapy. 2017 Oct 1;97(10):1030-1040. doi: 10.1093/ptj/pzx071. PubMed PMID: 29029552; eng.
    5. Silva Esm MP, Pereira Nd PPT, Gianlorenco Acl PPT, et al. The evaluation of non-use of the upper limb in chronic hemiparesis is influenced by the level of motor impairment and difficulty of the activities-proposal of a new version of the Motor Activity Log. Physiotherapy theory and practice. 2019 Oct;35(10):964-974. doi: 10.1080/09593985.2018.1460430. PubMed PMID: 29659308; eng.

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