実生活における上肢使用を測定する Motor Activity Log-14

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竹林崇 大阪府立大学 教授

Motor Activity Log-14 (MAL-14) は, 訓練施設内の機能ではなく, 患者自らが身を置く実生活での脳卒中後に影響を受けた上肢機能を評価することが出来る. 生活における自立の程度を意識した Barthel Index や Functional Independence Measure が健側による代償動作に頼った点数を反映する一方で, MAL-14 は麻痺側上肢をどの程度あるいはどれだけ適切に使用しているかを問題とすることが出来る. そんな実生活レベルを評価する脳卒中後の上肢機能訓練アウトカムである本ツールについて, その開発の歴史と評価内容, そして使用時の注意点について解説する.

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MAL-14 開発の歴史

Motor Activity Log-14 (MAL-14) は, 脳卒中患者における「実生活における」麻痺側上肢使用を測定するために Edward Taub らが開発した半構造化されたインタビュー形式の評価ツールである¹⁾²⁾. Taub はアメリカ合衆国バーミンガムにあるアラバマ大学心理学部所属の研究者で, CI 療法の生みの親としても世界中にその名を知られている.

MAL-14 は, 「研究施設の外」という環境における CI 療法の効果を測定するために開発され, 1993年に Taub 自らが中心となって報告した最初の CI 療法臨床実践報告¹⁾によって, その存在がリハビリテーション業界で知られるところとなった.

そして, その後 2005年になって, 評価特性検討研究が Taub と同じ研究室に所属する Uswatte を筆頭に報告された²⁾. MAL-14 開発の背景には, 訓練施設の中だけの機能ではなく患者自らが身を置く実生活での上肢機能を評価したいという意図以外にも, 当時既に知られていた Barthel Index を代表とする自宅を想定した活動を評価するツールが機能的な自立性を評価するものでしかなく, そこでは麻痺側上肢をどの程度, あるいはどれだけ適切に使用するかどうかは問題とされていなかったという点がある³⁾.

MAL-14 は, その名前の通り「14」の基本的な日常生活関連動作を評価するわけであるが, その後は対象活動数を増やした複数の型も報告され, 現在のところは, 脳卒中後の上肢能力評価ツールとしてゴールドスタンダードとの認識が強い Action Research Arm Test と同レベルの使用実績を持つという見方をされるに至っている⁴⁾.

MAL-14 ってどんなツール?

MAL-14 は, 日常生活に関係する 14 の活動を「量」と「質」という2つの視点で評価する. これは, 麻痺側上肢を特定の活動においてどの程度使用しているのか(Amount of Use, AOU scale), また, その際にその手がどれほど役に立っていたのか(Quality of Movement, QOM scale), ということになる. 対象となっている 14 項目は, 食事場面や整容場面を中心に日常生活に関連する活動をコンパクトにまとめている.

各活動が得点範囲 0 点から 5 点, そして 0.5 点刻みで評価されるため, 本ツールは 11 段階尺度ということになる. そして, 実際にアウトカム値として利用されるのは, AOU scale・QOM scale 共に合計点数を項目数で割って算出された平均値である. 数値が高いほど, 実際の生活で麻痺側上肢を多く使用し, 役に立っていると患者が認識しているということになる.

本ツールは臨床利用に耐えうるレベルの評価特性検討結報告があり²⁾, その結果多くの言語に翻訳され世界中の臨床試験で活用されている. 日本では 2009年に高橋らが適切な手法で MAL-14 を日本語化した上で評価特性検討も行い, 先行研究同様の良好な結果を報告してくれている⁵⁾ため, 本邦での臨床導入も容易である.

MAL 使用時の注意点

筆者もこれまで MAL を何度も臨床試験で採用し, その後に査読付き雑誌に投稿してきたが, その妥当性や信頼性を問題にされたことはない. ただ, MAL は患者自身による自己申告評価であるため,ホーソン効果(患者が信頼する医療者に期待されていると感じることで, 行動変容を起こすという現象)や期待されている変化が患者にも想像できることから実際よりも良い点数を付けやすいのではないか, というような指摘をされた経験はある.

この指摘はもっともではあるが, Quality of Life (QOL) に寄った評価をしたい時には, どうしても患者申告型である必要がある. そのため, 患者の機能状態を MAL だけに頼らず, Fugl-Meyer Assessment, Action Research Arm Test などのツールと併用し, その他のツール間での大きな乖離がないかを確認すること, そして時には家族や介護者の MAL などの活用も有効な場合があるだろう.

あとは, ツールにおける誤差範囲や臨床的に意味のある違い(minimal clinically important difference, MCID)に目を向けることも重要であろう. 例えば, 実数値変化の解釈のために多用される MAL の MCID は, 0.5 point である. この値は, 評価特性検討研究を経て統計学的に算出されたものではなく, 専門家の経験則からツール全体の 10 %には臨床的価値が十分にあると見積られたものである.

実際に, van der Lee JH らも 1999年の慢性期脳卒中患者に対する無作為化比較対照試験 (RCT) にてこの基準を全面に出して MAL における臨床的関連性を持つ効果を主張した⁶⁾. その後 2008年になって, MAL-30 (QOM scale) のデータではあるが, 患者の主観をアンカーにした MCID が急性期脳卒中患者において報告された.

この研究においては, 利き手の場合は 1.0 point で, 非利き手の場合いは 1.1 point が MCID という結果であった⁶⁾. この研究では, その算出法において, いわゆる MCID を表現する上で多くの研究者が適切と判断する手法を用いているが, 発症後の期間や麻痺重症度という観点で, 慢性期の患者や軽度麻痺患者において適用するには少し厳しい数値となっている可能性もある.

この麻痺の重症度という観点に意識を向けると, そもそも MAL 自体が高い物品操作性を前提としている項目が多く, 重度麻痺患者には適用が困難なのではないかという疑問が現れてくる. 実はこの疑問に対する返答を, 既に Taub や Uswatte 達の報告から得ることが出来る. 彼らは重度上肢麻痺への CI 療法実践の取り組みにおいて, 肩関節と肘関節における改善があったにも関わらず, MAL の変化が観察できなかったという経験をし, その後重度麻痺患者の上肢生活使用を想定出来る活動を含有する MAL を開発している.

実は, 2006年の段階で,そのツールを同じ研究室の Bowman の症例報告にて試験的に導入している⁸⁾. その後も使用経験を増やし, 今では RCT で用いられるまでに至っているので, 次回はこの重度麻痺用の MAL を取り上げてみたい.

【共著】 天野暁(新潟医療福祉大学 リハビリテーション学部 作業療法学科 講師)

【References】

  1. Taub E, Miller NE, Novack TA, et al. Technique to improve chronic motor deficit after stroke. Archives of physical medicine and rehabilitation. 1993 Apr;74(4):347-54. PubMed PMID: 8466415; eng.
  2. Uswatte G, Taub E, Morris D, et al. Reliability and validity of the upper-extremity Motor Activity Log-14 for measuring real-world arm use. Stroke. 2005 Nov;36(11):2493-6. doi: 10.1161/01.STR.0000185928.90848.2e. PubMed PMID: 16224078; eng.
  3. Uswatte G, Taub E. Implications of the learned nonuse formulation for measuring rehabilitation outcomes: Lessons from constraint-induced movement therapy. Rehabilitation psychology. 2005;50(1):34.
  4. Santisteban L, Teremetz M, Bleton JP, et al. Upper Limb Outcome Measures Used in Stroke Rehabilitation Studies: A Systematic Literature Review. PloS one. 2016;11(5):e0154792. doi: 10.1371/journal.pone.0154792. PubMed PMID: 27152853; PubMed Central PMCID: PMCPMC4859525. eng.
  5. 高橋香代子, 道免和久, 佐野恭子, et al. 新しい上肢運動機能評価法・日本語版 Motor Activity Log の信頼性と妥当性の検討. 作業療法= The Journal of Japanese Occupational Therapy Association. 2009;28(6):628-636.
  6. van der Lee JH, Wagenaar RC, Lankhorst GJ, et al. Forced use of the upper extremity in chronic stroke patients: results from a single-blind randomized clinical trial. Stroke. 1999 Nov;30(11):2369-75. doi: 10.1161/01.str.30.11.2369. PubMed PMID: 10548673; eng.
  7. Lang CE, Edwards DF, Birkenmeier RL, et al. Estimating minimal clinically important differences of upper-extremity measures early after stroke. Archives of physical medicine and rehabilitation. 2008 Sep;89(9):1693-700. doi: 10.1016/j.apmr.2008.02.022. PubMed PMID: 18760153; PubMed Central PMCID: PMCPMC2819021. eng.
  8. Bowman MH, Taub E, Uswatte G, et al. A treatment for a chronic stroke patient with a plegic hand combining CI therapy with conventional rehabilitation procedures: case report. NeuroRehabilitation. 2006;21(2):167-76. PubMed PMID: 16917163; eng.

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