脳卒中後上肢麻痺に対する Action Research Arm Test

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竹林崇 大阪府立大学 教授

Action Research Arm Test (ARAT) は, 脳卒中後に影響を受けた上肢評価のゴールドスタンダードツールとして, 今や国際的に Fugl-Meyer Assessment と双璧をなす存在となった. しかしながら, 国内における一般臨床レベルの利用は「簡易上肢機能検査(通称 STEF)」の広まりと定着のため, 今もなお遅れている. 本邦においても, より一般的な利用が望まれる本ツールについて, その歴史と評価内容, そして変化得点の臨床解釈について解説する.

Keyword: #評価・検査・動作分析, #脳血管, #理学療法士, #作業療法士

ARATの歴史

疾患ベースの評価ツールは, 基本的に重症度や身体機能レベルに寄った視点を持ってまず開発される傾向にある. これは脳卒中においても例外ではなく, 上肢運動麻痺という領域においては Brunnstrome Recovery Stageなどから始まり, 最終的には Fugl-Meyer Assessment (FMA) が脚光を浴びた.

ただ, FMA は脳卒中後の運動麻痺の詳細を再現性よく評価できるものの, 日常動作における機能を直接示してはいない. このことは, リハビリテーションという領域においてはやはり不足とされ, 結果として 日常生活動作(Activities of Daily Living: ADLs)を強く意識した, 上肢能力評価ツール Action Research Arm Test (ARAT) が1981年に Lyle RC によって報告されることになる¹⁾.

ただ, この ARAT は 1965年に報告された Carroll D の Upper Extremity Function Test ²⁾を経て開発されており, Lyle の完全なオリジナルというわけでない.

ARATはその後順調に評価特性検討研究を重ね, 脳卒中後上肢運動機能評価ツールのゴールドスタンダードとして今や FMA と双璧をなすという認識にまで至っている³⁾. これは, 評価特性検討研究により得られた良好な結果と, シンプルで洗練された下位項目が持つ臨床的結果解釈の容易さによるものだと筆者は理解している.

ARAT ってどんなツール?

ARAT は4つの下位項目で整理されており, 順に (1) つかみ (Grasp), (2) 握り (Grip), (3) つまみ (Pinch), (4) 粗大動作 (Gross Movement) となっている. 評価内容に関しては, ADLs を意識した評価ツールとなっているため, 物品移動と物品操作が基軸とされている.

(1) つかみと (2) 握りの下位項目においては, 2.5cm~10cmのブロック, 直径7.5cmのボール, コップなどを利用し, 基本的な手指機能に加え, 肩関節の屈曲/外転, 前腕関節の回内外の動きも評価できるようになっている.

また, (3) つまみでは, 1.5cmと6mmの 球状小物品を利用して, 肩関節の屈曲/外転を伴った対立つまみを評価できるようになっている.

加えて, (4) 粗大動作では, 物品移動や操作を伴わず, パフォーマンス評価というよりは心身機能に寄った機能を(合計点における点数比率は低いものの)評価することができる.

また, 採点は 0点, 1点, 2点, 3点の4段階評価で, 全19項目に対して同じ採点システムが採用されているため, 得点範囲は 0–57点となっている.

  1. 臨床で使って大丈夫? 結論から述べるが, ARAT の評価特性研究において, 基本的に良好な結果が報告されており, 臨床利用に耐えうるツールとして解釈してよいと考える. 2020年には, 筆者らによって日本語版 ARAT 作成の末の評価特性検討結果が国際誌に報告されており⁴⁾, 加えてその評価キット(下図)も国内で市販されているため, 国内における使用環境も整っていると考えてよいだろう.

基本的に使い勝手がいいツールではあるが, FMA に比べて対象者の機能が高い場合には患者の機能状態を把握しにくい(天井効果)という問題点も報告されており⁵⁾⁶⁾⁷⁾⁸⁾⁹⁾, 注意が必要な場合もある.

ARAT は本来, 遂行時間という視点を持たないツールではあるが, その天井効果という問題点に対して, 筆者らは日本語版 ARAT 研究において, その遂行時間の評価特性も検討している⁴⁾ため, ARAT を実際に使ってみてその天井効果で悩まされる場合には参考にして頂きたい.

  1. ARAT 得点変化の捉え方 臨床で ARAT を使用した際に, その得点変化をどのように解釈するかについて, 最後に少し触れておきたい. ただ断っておきたいのは, この手の参考値というものは, 信頼性という概念の持つ相対的性質と個別の研究が持つ患者特性のばらつきの大きさを考慮すると, その解釈に絶対的なものは存在しないであろうということである. その前提を持ってして, 以下に示す図を参考にするぶんには, 臨床上きっと有用であろう.

もともとイメージレベルの図ではあるが, 説明を加えておくこととする. 誤差範囲を超えるかどうかという部分に関しては, 更に含みをもたせた示し方をしている.

ここでは, 1点の変化は誤差範囲と解釈して構わないが, 誤差範囲を超えた "真の" 変化を一般化するとすれば, 2点から4点の間にも及ぶ可能性があるという意味を持たせている. そして, 6点を超える変化を観察できた際には, 臨床的に重要な意味を持つ変化であるという解釈が可能になる. この辺りの解釈を自らの判断で行いたい場合には, 対象とした参考文献 ⁴⁾¹⁰⁾¹¹⁾¹²⁾ に目を通してみると面白いのではなかろうか.

FMA と比べれば, 臨床現場にいる作業療法士や理学療法士にも解釈しやすい評価内容を ARAT は有している. それでも "実際の" ADLs に与える影響を測るにはパワー不足を感じる方もいるだろう. より実践的な運動機能を評価しようと考えた場合には, Motor Activity Logという評価ツールが参考になるが, これについては次回のテーマとさせて頂きたい.

【共著】 天野暁(新潟医療福祉大学 リハビリテーション学部 作業療法学科 講師)

【文献】

  1. Lyle RC. A performance test for assessment of upper limb function in physical rehabilitation treatment and research. International journal of rehabilitation research Internationale Zeitschrift fur Rehabilitationsforschung Revue internationale de recherches de readaptation. 1981;4(4):483-92. PubMed PMID: 7333761; eng.
  2. Carroll D. A quantitative test of upper extremity function. Journal of chronic diseases. 1965 May;18:479-91. doi: 10.1016/0021-9681(65)90030-5. PubMed PMID: 14293031; eng.
  3. Baker K, Cano SJ, Playford ED. Outcome measurement in stroke: a scale selection strategy. Stroke. 2011 Jun;42(6):1787-94. doi: 10.1161/strokeaha.110.608505. PubMed PMID: 21566236; eng.
  4. Amano S, Umeji A, Uchita A, et al. Clinimetric properties of the action research arm test for the assessment of arm activity in hemiparetic patients after stroke. Topics in stroke rehabilitation. 2020 Mar;27(2):127-136. doi: 10.1080/10749357.2019.1667656. PubMed PMID: 31618111; eng.
  5. Dromerick AW, Lang CE, Birkenmeier R, et al. Relationships between upper-limb functional limitation and self-reported disability 3 months after stroke. Journal of rehabilitation research and development. 2006 May-Jun;43(3):401-8. PubMed PMID: 17041825; eng.
  6. Rabadi MH, Rabadi FM. Comparison of the action research arm test and the Fugl-Meyer assessment as measures of upper-extremity motor weakness after stroke. Archives of physical medicine and rehabilitation. 2006 Jul;87(7):962-6. doi: 10.1016/j.apmr.2006.02.036. PubMed PMID: 16813784; eng.
  7. Lin JH, Hsu MJ, Sheu CF, et al. Psychometric comparisons of 4 measures for assessing upper-extremity function in people with stroke. Physical therapy. 2009 Aug;89(8):840-50. doi: 10.2522/ptj.20080285. PubMed PMID: 19556333; eng.
  8. Lin KC, Chuang LL, Wu CY, et al. Responsiveness and validity of three dexterous function measures in stroke rehabilitation. Journal of rehabilitation research and development. 2010;47(6):563-71. PubMed PMID: 20848369; eng.
  9. Arwert HJ, Keizer S, Kromme CH, et al. Validity of the Michigan Hand Outcomes Questionnaire in Patients With Stroke. Archives of physical medicine and rehabilitation. 2016 Feb;97(2):238-44. doi: 10.1016/j.apmr.2015.09.018. PubMed PMID: 26456499; eng.
  10. van der Lee JH, Wagenaar RC, Lankhorst GJ, et al. Forced use of the upper extremity in chronic stroke patients: results from a single-blind randomized clinical trial. Stroke. 1999 Nov;30(11):2369-75. doi: 10.1161/01.str.30.11.2369. PubMed PMID: 10548673; eng.
  11. van der Lee JH, Beckerman H, Lankhorst GJ, et al. The responsiveness of the Action Research Arm test and the Fugl-Meyer Assessment scale in chronic stroke patients. Journal of rehabilitation medicine. 2001 Mar;33(3):110-3. PubMed PMID: 11482350; eng.
  12. Van der Lee JH, De Groot V, Beckerman H, et al. The intra- and interrater reliability of the action research arm test: a practical test of upper extremity function in patients with stroke. Archives of physical medicine and rehabilitation. 2001 Jan;82(1):14-9. doi: 10.1053/apmr.2001.18668. PubMed PMID: 11239280; eng.

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