Brunnstrome Stage が広く拡まったが故に, 日本国内での Fugl-Meyer Assessment (FMA) の普及は欧米に比べて遅れてしまった. FMAは評価ツールとして要求されている適切な評価特性を有し, かつ標準化されているため, 英語圏を超えて多くの言語に翻訳され利用されている. 本邦においても, 研究者だけの利用に留まらず, 現在は臨床家における利用に繋がりつつある本ツールの歴史を少し紐解き, その内容と臨床解釈について解説する.

キーワード
#評価・検査・動作分析, #脳血管, #理学療法士, #作業療法士

FMAの歴史

Fugl-Meyer Assessment (FMA) が脳卒中後の身体機能を評価するツールとして, Fugl-Meyerらによって初めて一般に公開されたのは1975年¹⁾のことで, それから現在に到るまで35年の年月が経過している. このツールの存在感の大きさは, 長い歴史の中で重ねてきたその高い使用量だけでなく, 加えてこのFMAの使用割合が2000年以降の10年間においても更に上昇していることにもある(下図)²⁾.

これは, FMAが脳卒中後の麻痺を評価する上での普遍的なコンセプトを含有していること, 評価ツールとして適切なレベルの評価特性が確認されていること, そして高い実行可能性を保ったまま標準化なされていることに起因すると筆者は考えている. ただ,「脳卒中後に麻痺の回復が起こるのであれば, この運動回復にはある決まった順序がある」というコンセプトは, Fugl-Meyerオリジナルのものではなく, Twitchell (1951), Reynolds (1958) そして Brunnstrom (1966) に至るまでの知見に基づいたものであり, それゆえFMAはBrunnstrom-Fugl-Meyer testと呼ばれていた時期も存在する.

それでも, Fugl-Meyerらが作り上げた, それまでにはなかった脳卒中後の運動回復への細やかな視点の重要性はいまだ高く, 今や広く知られている課題指向型訓練にボトムアップ思考でアクセスする場合には, 評価ツールそれ自体を参考にすることができる. 残念ながら, Fugl-Meyerは2012年にこの世を去ってしまったが³⁾, 彼のFMAにおける視点は, 現在積極的な研究が進む慣性計測装置, ロボット機器, そして人体部位推定技術を用いた評価の基準となり生き続けている.

FMAってどんなツール?

FMAは上肢運動項目だけで構成されているわけではなく, 本来は下肢運動機能, 上下肢感覚, バランス, 関節可動域, 関節痛を含む包括的なツールである. ただ, 研究アウトカムとして用いられることが多いのは, 上肢運動項目, 下肢運動項目, またはそれら運動項目の合計点である(その他の項目はアウトカムとしてよりも, 患者特性のために利用される傾向にある).

そのため, 今回は上肢運動項目に焦点を当てて, 話を進める. 上肢運動項目は, 4つの下位構造を持っており(A. 肩/肘/前腕関節, B. 手関節, C. 手指関節, D. 上肢全体の協調性や速度), 合計で33の評価するポイントがある. 基本的には, 0点, 1点, 2点の3段階評価のため, 得点範囲は0–66点となる.

各項目内容は, 単関節/複合関節運動から物品把握, 協調性/速度に至るまで総合的な運動機能を評価することができるようになっている. またFMA上肢運動項目は, 単に運動回復を定量化するだけでなく, これにより運動機能の重症度を決め, 治療立案のためにも多く使用されている.

臨床で使って大丈夫?

まず, 研究であろうと臨床であろうと, 使用する評価ツールには “求められている” 特性というものがある. ただこれについては, 完璧なものが要求されているわけではなく, 許容範囲であるかどうかという話に落ち着くことになる. ここでいう評価特性には, 多くのが概念や考え方があるが, 一番取りつきやすいのは, 妥当性, 信頼性, 反応性という概念である. 少し乱暴ではあるが, 順に「見たいものを評価できているか?」「何度やっても同じ結果が出てくるか?(再現性)」「捉えたい変化を観察できているか?」という理解で最初はいいと思われる(この分野の研究は, 領域をまたぐことでも違いがあり, また相対的な概念であるため, 勉強する際には気長に付き合っていく必要がある).

取り敢えず, 脳卒中リハビリテーションという領域において, このFMA上肢運動項目の評価特性はよく検討されており, 大抵の評価測定基準を満たしている⁴⁾. このような評価ツールとしての有用性を強く認識した結果, 筆者らも国内流通に一役買うために日本語版FMAを作成後, 評価特性研究を実施し先行研究同様の良好な特性を確認した⁵⁾. 結論が最後になってしまったが, FMAの臨床利用は推奨可能であり, その環境が国内においても整っているということになる.

FMA得点変化の捉え方

最後に, FMA上肢運動項目の評価シートとマニュアルを入手して, 実際に臨床で経時的に使う際の話を少しすることとする. つまり, 臨床で一番身近な例, 一症例レベルでその変化得点をどう解釈するか, についてである. このテーマだと少なくとも, 10本程度の論文があり対象・重症度・解析手法もバラバラのため, 細かいレベルでの話をするとデータ統合が難しくなってしまう. ただ, 信頼性という概念自体がかなり相対的であり, 厳しいことを言い出すと参考文献がなくなってしまう恐れがあるため, ある程度は割り切って, 簡略化した以下のような図を紹介させて欲しい.

つまり, 1点の改善は誤差範囲のため「変化していない」可能性がある. 2点改善していれば, 「改善した」と判断する. 4点以上改善した場合には, 「一般的に臨床的な意味を持つ改善が生じているはず」と考え, もし6点以上の改善があった場合には, 「(一般的に)臨床的に重要な意味を持つ改善が生じているはず」と考える. この図がどのように作成されたかに興味がある方は, 対象参考文献⁵⁾⁶⁾⁷⁾⁸⁾を読んでみて自分なりの解釈を見つけてみるのも面白いのではないだろうか.

もちろん, FMAのみで臨床的な意味を強く問うことはできないため, Motor Activity Logや対象の患者さんが実際に価値を置く目標の達成度とうにも目を向ける必要がある. 複数のアウトカムを組み合わせる重要性については, また今後話をしていくつもりである.

【共著】 天野暁(新潟医療福祉大学 リハビリテーション学部 作業療法学科 講師)

【参考・引用文献】

  1. Fugl-Meyer AR, Jaasko L, Leyman I, et al. The post-stroke hemiplegic patient. 1. a method for evaluation of physical performance. Scandinavian journal of rehabilitation medicine. 1975;7(1):13-31. PubMed PMID: 1135616; eng.
  2. Santisteban L, Teremetz M, Bleton JP, et al. Upper Limb Outcome Measures Used in Stroke Rehabilitation Studies: A Systematic Literature Review. PLoS One. 2016;11(5):e0154792. doi: 10.1371/journal.pone.0154792. PubMed PMID: 27152853; PubMed Central PMCID: PMCPMC4859525. eng.
  3. Grimby G, Sjölund BH. A sad message. Journal of rehabilitation medicine. 2012;44(9):709-709. doi: 10.2340/16501977-1045.
  4. Baker K, Cano SJ, Playford ED. Outcome measurement in stroke: a scale selection strategy. Stroke. 2011 Jun;42(6):1787-94. doi: 10.1161/strokeaha.110.608505. PubMed PMID: 21566236; eng.
  5. Amano S, Umeji A, Uchita A, et al. Clinimetric properties of the Fugl-Meyer assessment with adapted guidelines for the assessment of arm function in hemiparetic patients after stroke. Topics in stroke rehabilitation. 2018 Jul 20:1-9. doi: 10.1080/10749357.2018.1484987. PubMed PMID: 30028660.
  6. Gladstone DJ, Danells CJ, Black SE. The fugl-meyer assessment of motor recovery after stroke: a critical review of its measurement properties. Neurorehabil Neural Repair. 2002 Sep;16(3):232-40. doi: 10.1177/154596802401105171. PubMed PMID: 12234086.
  7. Page SJ, Fulk GD, Boyne P. Clinically important differences for the upper-extremity Fugl-Meyer Scale in people with minimal to moderate impairment due to chronic stroke. Phys Ther. 2012 Jun;92(6):791-8. doi: 10.2522/ptj.20110009. PubMed PMID: 22282773.
  8. Lundquist CB, Maribo T. The Fugl-Meyer assessment of the upper extremity: reliability, responsiveness and validity of the Danish version. Disabil Rehabil. 2017 May;39(9):934-939. doi: 10.3109/09638288.2016.1163422. PubMed PMID: 27062881.

企業への質問

この機能を利用するには、ログインが必要です。未登録の方は会員登録の上、ログインしてご利用ください。

この記事に関連するタグ

興味のあるタグをフォローしておくことで、自身のフィードに関連するセミナーやコラムを優先的に表示させることができます。 (無料会員機能。 登録はこちら )

執筆者の他のコラム