1. ホーム
  2. コラム
  3. 医療保健領域における人工知能応用の展望②
ビジネス

医療保健領域における人工知能応用の展望②

AIは現在、医療保健領域においてどのような可能性があるのか。ここでは近年の取り組みのうち、国内で今後大きく医療・ヘルスケア・スポーツの現場を変えうるサービス・事例のご紹介と今後の展望について述べていきたいと思います。

医療・ヘルスケア・スポーツの現場を変えうるサービス・事例

前回記事「医療保健領域における人工知能応用の展望①」では、「医学診断へのAI応用の展望」および「リハビリ関連業務へのAIの展望」につい述べさせて頂きました。

今回は、現在開発が完了し、その有用性が試されているものの中で、将来医療・ヘルスケア・スポーツの現場を大きく変えうる(一部は既に大きく変え始めている)ものをいくつかピックアップしてご紹介していきたいと思います。

1つ目は、筑波大学発ベンチャーである株式会社Sportipによるトレーニング指導をアシストするAI、「Sportip」です。2020年6月に『Sportip Pro』の提供が開始されております¹⁾。

紹介動画を見て頂くとその概要・素晴らしさを感じ取ることができるかと思います。

トレーニング内容の指導、姿勢の解析、関節可動域の計測等を、AIを活用した動画解析等により非常にうまく行ってくれそうです。

これまでは各専門家が経験に基づきその場で分析していたことが、いまは対象者の動画があれば、解析から具体的なアドバイス提示までやってくれるというサービスになります。

熟練の専門家と比べてどの程度解析に差があるか等の検証は厳密には難しいでしょうが、今後はトレーナーやコーチ、セラピストが行っていた一部の業務を、AIを活用した本サービスの利用等により担ってもらえるかもしれません。

今後の質の向上およびサービスの普及がどのくらい伸びてくるか、個人的にマークしているサービスの1つです。数年後には、Sportipあるいは類似サービスにより、誰もが再現性のある動作の解析が可能となってくるかもしれませんね。

2つ目は、AIを利用した脳卒中片麻痺患者の在宅におけるオンライン遠隔リハビリサービス²⁾です。こちらは株式会社エクサウィザーズと医療法人社団KNI 北原病院グループとの共同開発のサービスになります。

退院後も片麻痺患者に在宅でのトレーニングを行うために、セラピストが対象者に対し選定したプログラムを行ってもらい、その様子をセラピストがモニタリングしたり、適宜AIによる支援が行われるサービスになります。(詳細は本記事末尾にありますホームページ等をご覧頂けましたらと思います)

まさに昨今の世界の現状・ニーズを踏まえたサービスが、2020年6月の素晴らしいタイミングで試験運用されました。これからどのような勢いで普及してくるのか、課題も多いかと思いますが、先行きが非常に期待されるサービスです。

北原病院グループは他にも日本電気株式会社(NEC)と共同でリハビリ計画作成の業務改善の取り組み3)を2019年に行っていたり、2017年にも転倒リスク軽減のためにAIを活用した事例の報告4)をしており、医療・リハビリ業界におけるAI活用の先駆的な存在となっております。

また機械学習を応用したリハビリ関連サービスとしては、株式会社リハサクによるリハビリメニュー作成ツール「リハサク」なども、非常に興味深いサービスであると思っております。

個人的には、本サービスにおいて、セラピストが(対象者の疾患・症状等の)必要項目を簡潔に入力することで、どのようなアルゴリズムで運動療法が複数提示されるのか、という中身の方が気になっておりますが、現場の方・患者様双方にとっては非常に有益なサービスであり、今後の発展・普及が楽しみなところです。

AIを活用した医療・ヘルスケア・スポーツ業界の今後の展望

これまでご紹介してきました多くの事例・サービス等をご覧になるとおわかりになります通り、やはり伝統的には十分な知識や経験がないとできなかったこと・予測が困難であったことなどが、AIを活用することで、”熟練の職人”でなくとも可能になってくることが、共通して述べられます。

従来の治療や解析の手法・コンセプトなどのみにて定年を迎えられる予定の”逃げ切り世代”の方は特別これらのテクノロジーについてupdateしていく必要性は高くはないかと思われますが、これから大きく現場を変革してくるであろうAIの臨床・現場への応用において大きく影響を受けるであろう、20〜40代の医療・ヘルスケア・スポーツ職種の方々は、時代の流れに柔軟に対応していくことが必須となってくるかと思います。

AIを活用したデバイスにより瞬時に再現性の高い検査や、より運動処方や治療効果の確実性が高いものを選択できるのに、自身がこれまで学んできた手法に固執していては、より若い新たな世代の方々と上手くコミュニケーションがとれなくなりうるのみならず、場合によってはクライアントにも不利益となりうるのではないかと思います。

現在は、”絶え間ないラーニングとアンラーニングが欠かせない時代”と言われています⁶⁾。変化の激しい時代を乗り越えるには、「絶え間なく学習し、そして学習したことを捨てる」、そして「過去の常識から脱却する」という2つの行動様式を身につけることが重要とされています。

「サンクコストの呪縛」※という言葉が知られているかと思いますが、これまで自身が深く追求してきた知識・技術も、時には思い切って決別する判断も必要になってくるかもしれません。

(※”サンクコスト(埋没費用)とは経済学でよく使われる言葉で,もう既に投資してしまって回収できない費用”のこと。”どうせ取り戻せないのだから,その先の意思決定はこのコストを無視して考えるのが合理的なのだが,過去の投資を思うとやめられず,さらなる投資を続けてしまう”ことをサンクコストの呪縛といいます⁷⁾。)

ぜひ今一度、近未来を想像し、将来の自身のありたい姿と、そのために何をすべきか、ゆっくりと内省されてみてはいかがでしょうか。

さて本シリーズの最終回である次回記事では、 「人工知能関連リテラシーの習得のために (どのようにAIとつきあっていくのがよいか)」 について私のこれまでの経験も通じて私見を交えながら述べさせて頂きたいと思います。

次回もどうぞ、ご期待下さいませ。

(※本記事執筆における記事内容での紹介各社・サービスとの利益相反は一切ございません。)

【引用元・参考文献】 1) Sportip Pro. 2) エクサウィザーズと北原病院グループ、共同開発したオンライン遠隔リハビリサービスの試験導入開始. 3) NEC、北原病院グループとともに、AI技術を活用したリハビリ計画作成に関する技術実証を実施. 4) 医療法人社団KNIとNEC、AIを活用した医療・社会改革に向けた共創を開始. 5) クラウド型リハビリメニュー作成ツール リハサク. 6) 横山禎徳著.組織.ダイヤモンド社. 2020. 7) 青野由利. サンクコストの呪縛. 日本原子力学会誌ATOMOΣ. 2019:61(1):28-29.

XPERTに登録しませんか?

XPERTでは、臨床の最前線で活躍する専門家の
知識やノウハウを学べます

この記事に関連するセミナー

この記事に関連するタグ

この記事に関連する求人情報