パーキンソン病の臨床症状について(4) –振戦‐

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竹林崇 大阪府立大学 教授

パーキンソン病には四徴候を中心とする運動性症状のほか,非運動性症状など多様な症状を呈し,その結果,活動性や生活の質の低下を招くことが多い.本稿では,パーキンソン病の示す四徴候のひとつである振戦の詳細について紹介する.パーキンソン病は,黒質のドーパミン神経細胞の変性を主体とする進行性変性疾患である.その四大徴候として,1)筋強剛,2)無動・寡動,3)姿勢反射障害,4)安静時振戦が特徴とされる.以下に,四徴候のうち4)振戦について紹介する.

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振戦とは

振戦は,臨床的には1つ以上の身体部位の不随意,リズミカル,交互運動によって特徴づけられる¹⁾.Movement Disorder SocietyのConsensus Statement²⁾には,パーキンソン病に関連する3種類の振戦を分類する並列分類法が提案されている.

①同じ周波数の安静時振戦,この種類が最も一般的であり,通常は運動中に抑制される. ②異なる周波数の安静時振戦,パーキンソン病患者の10%未満で出現する. ③4~9Hzの周波数で変化する姿勢時振戦,頻度としては低いが,パーキンソン病の強剛の強い場合にみられる.

Jankovicら³⁾は,パーキンソン病患者を振戦優位性と姿勢および不安定性と歩行困難(postural instability and gait difficulty;PIGD)を特徴とする非振戦優位性のサブタイプに分類し比較している.PIGD優位タイプは振戦優位性と比較し,同程度の疾患期間においても認知機能,運動機能ともに有意に重度であり,進行が急速であったとしている.

また,振戦は動作緩慢,筋強剛,歩行およびバランスの障害の進行とは独立しており,重症度も相関しないとされている⁴⁾.さらに,振戦優位性では非振戦優位性を主な運動症状とするパーキンソン病患者と比較し,記憶機能⁵⁾,認知機能⁶⁾が優位に良好であり,PIGD優位タイプでは認知症になる可能性が高い⁷⁾とされている.

このような違いから,振戦優位性が非振戦優位性と比較して良性パーキンソン病であるマーカーとなるとHoehnとYahrら⁸⁾によって提案されている.

しかし,振戦優位性と非振戦優位性では,死亡時の疾患期間は同程度であるとされており,振戦優位性でも生存期間が優位に長くなることはないと予測されている⁹⁾.

安静時振戦のメカニズム

パーキンソン病の安静時振戦のメカニズムについて,いくつか調査されている.Helmicら¹⁰⁾は,パーキンソン病患者の振戦優位群,非振戦優位群,対照群に対して機能的MRIを用いて,大脳基底核(淡蒼球内節,外節,被殻,尾状核)と小脳視床路の機能的接続性,および筋電図で測定された振戦の変動とそれに関連する脳活動を測定した.

また,SPECTを用いて,線条体-淡蒼球のドーパミン枯渇の定量化を行った.その結果,線条体でなく淡蒼球のドーパミン枯渇は振戦の重症度と相関していいた.振戦の出現時には,淡蒼球,被殻が一過性に活性化,小脳視床路の活性は振戦の振幅に応じて変化した.振戦優位性のパーキンソン病患者では,淡蒼球,被殻は小脳視床路との機能的接続性が亢進していた(図1).

これらの結果から,小脳視床路はドーパミンの欠乏した大脳基底核から一過性の信号を受信し,振戦が出現しているように見受けられ,大脳基底核と小脳視床路間の病理学的相互作用に起因する可能性があると示唆された.また,これらのデータに基づいて,以下のようなモデルが提案された.

このモデルは,大脳基底核の寄与(振戦のon/off,光のスイッチに例えられる)と小脳視床路の寄与(振戦の強弱の調整,調光器に例えられる)の組み合わせに重点が置かれており,パーキンソン病の安静時振戦における「調光器-スイッチモデル」とされている(図2).

以上のように,パーキンソン病の代表的な徴候である振戦について説明した. 振戦に関しては他の徴候から独立し,重症度とも相関していないとされる.しかし,臨床においては上記の症状をはじめとした運動性症状,および非運動性症状など様々な症状が重畳し,複雑な様相を呈する.そのことを考慮しつつ,ひとつひとつを繙いていく必要がある.

【共著】 山本勝仁(播磨総合医療センター リハビリテーション室)

【引用論文】 1) Abdo WF et al. The clinical approach to movement disorders. Nat Rev Neurol. 2010;6:29-37 2) Deuschl et al. Consensus statement of the movement disorder society on tremor. Mov Disord. 1998;13:2-23 3) Jankovic S et al. Variable expression of Parkinson’s disease: a base-line analysis of the DATATOP cohort The Parkinson Study Group. Neurology. 1990;40:1529-34 4) Louis E et al. Progression of Parkinsonian signs in Parkinson disease. JAMA Neurology. 1999;56:334-7 5) Vakil E et al. Declarative and procedural learning in Parkinson’s disease patients having tremor or bradykinesia as the predominant symptom. Cortex. 1998;34:611-20 6) Lewis SJ et al. Heterogeneity of Parkinson’s disease in the early clinical stage using a data driven approach. J Neurol Neurosura Psychiatry. 2005;76:323-8 7) Williams-Gray CH et al. Evolution of cognitive dysfunction in an incident Parkinson’s disease cohort. Brain. 2007;130:1787–98. 8) Hoehn MM et al. Parkinsonism: onset, progression and mortality. Neurology. 1967;17:427-42 9) Selikhova M et al. A clinic-pathological study of subtypes in Parkinson’s disease. Brain. 2009;132:2947-57 10) Helmich RC et al. Pallidal dysfunction drives a cerebellothalamic circuit into Parkinson tremor. Ann Neurol. 2011;69:269-81

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