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パーキンソン病の臨床症状について(3) –姿勢反射障害

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竹林崇 大阪府立大学 教授

パーキンソン病には四徴候を中心とする運動性症状のほか,非運動性症状など多様な症状を呈し,その結果,活動性や生活の質の低下を招くことが多い.本稿では,パーキンソン病の示す四徴候のひとつである姿勢反射障害の詳細について紹介する.パーキンソン病は,黒質のドーパミン神経細胞の変性を主体とする進行性変性疾患である.その四大徴候として,1)筋強剛,2)無動・寡動,3)姿勢反射障害,4)安静時振戦が特徴とされる.以下に,四徴候のうち3)姿勢反射障害について紹介する.

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#パーキンソン病 #四大徴候 #姿勢反射障害

目次

    姿勢反射障害

    姿勢反射障害により生じる転倒は,生活の質(Quality of Life;QOL),罹患率,および死亡率を決定する重要な因子である¹⁾.Stolzeらによる489例のパーキンソン病患者の後ろ向きコホート研究では,165例が過去12カ月に1回以上の転倒を経験し,そのうち55%は基礎となる歩行障害が転倒の原因となっており,強い相関を示した²⁾.

    パーキンソン病における転倒の再発は,転倒歴,パーキンソン病の重症度と罹患期間,薬物,認知機能障害,FoG,転倒恐怖などいくつかの因子が関連していた³⁾.転倒の結果,高い頻度で身体的な障害に加えて転倒恐怖を伴い,この恐怖のために活動を避けることが認められ,QOLを低下させる⁴⁾⁵⁾.

    姿勢制御のシステムは,以下の6つの主要な領域に分類できるコンポーネントから構成されている(図1)⁶⁾.

    生体力学的制御,運動戦略(反応性,予測性,自発性),感覚戦略(感覚統合と再加重),空間定位(知覚,重力,視覚,垂直性),ダイナミクス制御(歩行,積極性),認知情報処理(注意,遂行機能)が挙げられ,これらの資源のいずれかの障害により,姿勢が不安定になり,転倒リスクが高まる可能性がある.

    転倒のリスクが高い場合,支持基底面内で身体の重心を維持できる範囲である安定性限界が小さい傾向にある⁷⁾.また,パーキンソン病などの大脳基底核障害は,安定性限界に異常を示し,姿勢を不安定にする可能性がある⁸⁾.

    パーキンソン患者のバランス能力

    パーキンソン病患者は直立姿勢では概ね前傾姿勢を示すにもかかわらず,わずかに押すだけで非常に簡単に後方へ倒れる傾向がある⁹⁾.パーキンソン病患者の姿勢反射障害の評価は,Unified Parkinson’s Disease Rating Scale(UPDRS)の姿勢安定性評価のpull test(表)が頻繁に使用される¹⁰⁾.

    しかし,pull testではパーキンソン病患者のバランス能力を十分反映できず,転倒を予測することはできないとする先行研究¹¹⁾¹²⁾がある.それらの先行研究では,過去の転倒歴やHoehn & Yahr重症度分類での転倒の予測はしているが,転倒リスクに対するpull testとHoehn & Yahr重症度分類の関連について検討されていない.

    岡田ら¹³⁾は,パーキンソン病患者24例に対しpull testと転倒の関連性について分析した.その結果,転倒群は非転倒群と比較して,pull testスコアは有意に高くかった.また,Pull testのスコア1をカットオフ値にした場合に転倒の有無を最も良好に識別可能であったとしており,Hoehn & Yahr重症度分類3度以上の患者の中から転倒リスクが特に高いものを識別するうえで有用な指標の1つとなる可能性があるとしている.

    以上のように,パーキンソン病の代表的な徴候である姿勢反射障害について説明した.姿勢反射障害は直接的に転倒の原因となり,生活の質の低下につながるとされる.この症候の評価から,動作・生活における転倒リスクを予測し,介入していくことが重要であると思われる.

    【共著】
    山本勝仁(北播磨総合医療センター リハビリテーション室)

    【引用論文】
    1) Schoneburg B et al. Framework for understanding balance dysfunction in Parkinson’s disease. Mov Disord. 2013;28:1474-1482
    2) Stolze H et al. Falls in frequent neurological diseases: Prevalence, risk factors and aetiology. J Neurol. 2004;251:79-84
    3) Allen NE et al. Recurrent falls in Parkinson’s disease: A systematic review. Parkinson’s disease. 2013;906274:1-16
    4) Franchignon F et al. Balance and fear of falling in Parkinson’s disease. Parkinsonism Relat Disord. 2005;11:427-33
    5) Tinetti ME et al. Falls efficacy as a measure of fear of falling. Journal of Gerontology. 1990;45:239-243
    6) Gandolfi M et al. Postural control in individuals with Parkinson’s disease. Physiotherapy. 2018
    7) Pamela W et al. Functional reach: A new clinical measure of balance. J Gerontol. 1990;45:192-7
    8) Fay B et al. Postural orientation and equilibrium: what do we need to know about neural control of balance to prevent falls? Age and Ageing. 2006;Supp12:ii7-ii11
    9) Benatru I et al. Postural disorders in Parkinson’s disease. Clin Neurophysiol. 2008;38:459-465
    10) Fahn S et al. Unified Parkinson’s disease rating scale. In: Recent developments in Parkinson’s disease. Volume Ⅱ, Florham Park, Macmillan Healthcare Information, 1987;153-163
    11) Bloem BR et al. Prospective assessment of falls in Parkinson’s disease. J Neurol. 2001;248:950-958
    12) Jacobs JV et al. An alternative clinical postural stability test for patients with Parkinson’s disease. J Neurol. 2006;253:1404-1413
    13) 岡田 洋平 他.Hoehn & Yahr重症度分類3度以上のパーキンソン病患者におけるpull testと転倒との関係について.理学療法科学.2009;24:49-52

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