パーキンソン病の臨床症状について(2) –無動‐

お気に入り数 1
竹林崇 大阪府立大学 教授

パーキンソン病には四徴候を中心とする運動性症状のほか,非運動性症状など多様な症状を呈し,その結果,活動性や生活の質の低下を招くことが多い.本稿では,パーキンソン病の示す四徴候のひとつである無動の詳細について紹介する.パーキンソン病は,黒質のドーパミン神経細胞の変性を主体とする進行性変性疾患である.その四大徴候として,1)筋強剛,2)無動・寡動,3)姿勢反射障害,4)安静時振戦が特徴とされる.以下に,四徴候のうち2)無動について紹介する.

【キーワード】
#パーキンソン病 #四大徴候 #無動

無動(Akinesia)

無動症はパーキンソン病にみられる随意運動障害の総称として使用される傾向がある.類語には寡動(Hypokinesia)や動作緩慢(Bradykinesia)がある.また,これに伴う症状として,すくみ足歩行(Freezing of gait:FoG),小刻み歩行,歩幅の減少などの歩行障害が出現する¹⁾.ここでは,これらのなかからFoGについて説明する.

FoGは,2010年に開催されたFoGに関する国際ワークショップにおいて「歩行の意思があるにもかかわらず,足の前方移動の一時的欠如,あるいは顕著な減少」と定義されている²⁾.この定義には,患者が歩行開始困難(開始の躊躇),歩行中の前進停止(回旋,目的地の躊躇),および数mmから数cmの歩幅で前進するエピソードが含まれる.

パーキンソン病患者6,620人を対象としたMachtら³⁾の調査データから,患者の47%(軽度例の約26%,重度例の約80%)がFoGを経験したと報告した.Giladiら⁴⁾は,347例のパーキンソン症候群患者からFoGを認めた158例のうち,脳血管性パーキンソン症候群の57%,および神経変性疾患(進行性核上性麻痺,多系統萎縮症,皮質基底核変性症)の45%と,これらに起因するパーキンソン症候群において高頻度でFoGが認められたとしている.また,パーキンソン病の治療とFoGに関する調査5)では,パーキンソン病の重症度およびL-dopa治療期間の長さはFoGの出現に寄与する傾向があるとしている.

FoGの特徴

FoGは以下のようにいくつかの特徴が付随することがある²⁾. (1)足または足趾が地面から離れないか,かろうじて離れる. (2)3~8Hzの周波数で下肢の震えが交互に出現する. (3)FoGに先行して,突進様現象,または歩幅の減少と伴うケイデンスの増加がしばしばみられる. (4)足底が床に凍り付いた主観的感覚を伴う. (5)多様なきっかけで促進・軽減する. (6)非対称性や,方向転換で誘発されやすい. また,これらの特徴の中には単一の臨床現象ではなく,複数の異なる症候群であり,そのメカニズムも異なる.

FoGの出現は,臨床に比べ日常生活で多いとされる⁶⁾.誘発されやすい状況として,慣れない場所,エレベーターや自動ドアを入る時など,周囲の情報処理や注意の分割・配分・選択・切り替えを要し,周囲の変化に柔軟に適応する必要があるなど「課題が複雑」なもの.また,トイレや電話で急ぐ場合や人混みの中など,焦り,緊張などの「ストレス」を伴うものであるとされている.それらに加え,「疲労」が独立した誘発因子として報告されている.

歩行とFoGのメカニズム

歩行およびFoGのメカニズムについて以下に説明する.Delongら⁷⁾は,「運動ループ」というパーキンソン病を説明するモデルとして提案した.

正常歩行は,皮質視床路と皮質線条体路が大脳基底核の出力構造の抑制性に働き,歩行を制御するCentral pattern generatorを含む脳幹構造と小脳・前庭系のバランスシステム間の協調的な活動を可能にしている(図1左)⁸⁾.

FoGは,皮質視床路と皮質線条体路の障害により,淡蒼球からの抑制性出力が相対的に増強する⁹⁾.視床下核の過剰な出力によって小脳活動も抑制される.

それらにより,下肢の屈筋・伸筋の協調運動が障害される(図1右)⁸⁾.Vercruysseらは,パーキンソン病患者のFoGを伴う群,伴わない群および健常対照群の3群において,上肢運動課題中にfMRIを使用して脳活動を記録した.その結果,FoGを伴う群では対照群と比較し淡蒼球の活動が優位に増加,また視床下核および被殻の活動は,FoGを伴わない群と比較し有意に増加した(図2)¹⁰⁾.線条体活動の低下がFoGの原因となる考え方は,これらの機能的神経画像研究により支持されている.

以上のように,パーキンソン病の代表的な徴候である無動について説明した.多様な生活環境の様々な条件下で出現しやすく,生活活動の遂行に直接的な影響を及ぼす.現象の観察・評価と並行して,この徴候が出現しやすい条件も考慮する必要がある.

【共著】 山本勝仁(北播磨総合医療センター リハビリテーション室)

【引用論文】 1) Morris ME et al. The pathogenesis of gait hypokinesia in Parkinson’s disease. Brain. 1994;117:1169-1181 2) Nutt JG et al. Freezing of gait: moving forward on a mysterious clinical phenomenon. Lancet Neurol. 2011;10:734-44 3) Macht M et al. Predictors of freezing in Parkinson’s disease: a survey of 6,620 patients. Mov Disord. 2007;22:953–956. 4) Giladi N et al. Freezing phenomenon in patients with parkinsonian syndrome. Mov Disord. 1997;12:302-305 5) Giladi N et al. Freezing of gait in patients with advanced Parkinson’s disease. J Neural Transm. 2001;108:53-61 6) Ishii M et al. Characteristics associated with freezing of gait in actual daily living in Parkinson’s disease. J Phys Ther Sci. 2017;29:2151-2156 7) DeLong MR. Primate models of movement disorders of basal ganglia origin. Trends Neurosci. 1990;13:281-285 8) Lewis SJ et al. The Next Step: A Common Neural Mechanism for Freezing of Gait. The Neuroscientist. 2016;22:78-82 9) Lewis SJ et al. A pathophysiological model of freezing of gait in Parkinson's disease. Parkinsonism Relat Disord. 2009;15:333-8 10) Vercruysse S et al. The neural correlates of upper limb motor blocks in Parkinson’s disease and their relation to freezing of gait. Cereb Cortex. 2014;24:3154-3166

企業への質問

この機能を利用するには、ログインが必要です。未登録の方は会員登録の上、ログインしてご利用ください。

この記事に関連するタグ

興味のあるタグをフォローしておくことで、自身のフィードに関連するセミナーやコラムを優先的に表示させることができます。 (無料会員機能。 登録はこちら )

執筆者の他のコラム