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  3. 腰椎の安定性について  ~運動学と解剖学の視点から考える~

前回まではJoint by joint theoryの「可動性」をテーマとして、胸郭と股関節にトピックを当てて解説しました。今回からは「安定性」をテーマとして、腰椎・骨盤帯にスポットを当てて解説します。

目次

    はじめに

    腰椎は骨格の構造からもわかるように、非常に不安定な構造をしています。そして、腰椎が安定しなくなれば、その他の部位…特に隣接する胸郭や股関節が代償的に安定化を図ろうとします。

    しかし、胸郭と股関節はJoint by joint theoryにおいては「可動性」が重要になる関節であり、腰椎の不安定性を代償することによって機能的な動きを損なう可能性があります。今回は解剖学と運動学の観点から、腰部の「安定性」について解説します。

    腰部の構造から見た「安定性」の重要性

    腰部はこれまで紹介した胸郭や股関節に比べると、骨構造としては仙骨の上に「腰椎」が5つあるだけで構造的には非常に不安定です。腰椎は他の脊椎と同様に前方は椎間板、後方は椎間関節によって構成されています。

    腰椎の生理的前弯が減少すれば、前屈運動で椎間板への負荷が増大し、前弯が増大すれば椎間関節への負担が増大することになります。図1は上半身質量中心位置の変化で脊柱周辺の組織にどのような負荷がかかるかを表したものです。

    このように重心位置の変化によって、椎間板や椎間関節に負荷がかからないようにするためには背面や腹部の筋が協調的に働くようにしなければいけません1)。Kapandjiは図2のように、デッドリフトのような物を下から持ち上げるような運動では、腹圧を高める(ブレーシング様に)ことで脊柱を1つのUnitとして剛体可し、胸腰移行部で50%、腰仙関節で30%もの負荷(剪断力など)を軽減できるとしています¹⁾。

    また、Barkerらは屍体実験において、腹横筋の緊張によって50N程度の圧縮力が加わる条件では分節の屈曲方向stiffnessを高めると報告しています³⁾。つまり、腰部の安定性は筋肉の活動への依存度が非常に高く、それも特にローカル筋(いわゆるインナーマッスル=コアマッスル)といわれるような筋肉の働きが重要になっていきます。

    分節運動が失われると障害が生じる

    生理的な腰椎分節運動(一つ一つの腰椎が適切に動くこと)では、「並進」と「回旋」がバランスよく行われており、下位椎体に回旋中心があります。ですが、この分節運動が破綻してしまうと、並進運動が少なくなり、回旋が主体となる運動になってしまい、回旋中心は上位の椎体に依存してしまいます⁴⁾(図3)。

    こうなってしまうと図4のように、椎間関節には非常に大きなストレスがかかってしまうことになります。そして、椎弓が頻回にインピンジメントを繰り返してしまうことで椎間関節障害…最悪の場合は腰椎分離症へとつながってしまいます。

    筆者は、腰椎分離症や椎間関節障害は下位腰椎に頻発している印象があります。これらを防ぐためには骨盤後傾作用をもつ腹横筋、単関節の脊椎伸展筋である多裂筋が適切に収縮する必要があります。収縮のタイミングなどに関しては次回のコラムで詳細に説明しますね。

    また、屈曲においては、分節的な動きが障害されてしまうと局所の椎間板にストレスが生じてしまいます。椎間板障害の際に最も問題となるのは股関節の可動性であり、特にハムストリングスの柔軟性低下があると下位腰椎の可動性が制限されてしまい、その上位に位置する腰椎に屈曲方向への過剰運動性が生じることにより、椎間板にストレスがかかります。

    したがって、ハムストリングスの柔軟性(つまり股関節の可動性)を高めることで、腰部の分節的運動を助けてくれることになります⁴⁾。この可動性が確保されていることが前提に、大腰筋による随伴的な股関節屈曲方向へのコントロールは神経生理学的作用(随伴性姿勢制御)によって分節的な運動が保障されます(図5)。

    伸展や屈曲を分節的に行うためにはローカル筋である大腰筋や多裂筋、腹横筋の作用が必須となり、協働してくれることで障害予防はもちろんスポーツのパフォーマンスアップや日常生活での動きやすさにもつながっていきます。

    また椎間板障害・椎間関節障害は両側に出るとは限らないので、スランプテストやケンプテストなどでのスクリーニングを行い、その上で分節運動検査などを行い、症状との鑑別を行うことが必要になります。

    腰部の安定性は結果的に腰部の分節運動につながる

    ここまで記してお気づきの方もいらっしゃるかと思いますが、腰部は安定することで適切に可動することができる部位になります。ローカル筋が適切に働くことによって、分節運動が保障されます。

    次回のコラムでは、姿勢制御の神経生理学的なメカニズムを解説し、パフォーマンスやモーターコントロールの部分のトピックを紹介します。最後までお読みいただきありがとうございました。

    【参考文献】
    1) 島津 晃ら編,バイオメカニクスよりみた整形外科 改定第2版,1994
    2) Kapandji I A:カパンディ関節の生理学Ⅲ.体幹と脊柱,1986
    3) Barkar PJ,et al:Effect of tension the lumber fasciae on segmental stiffness during flexion and extension :young Investigator Award winner, Spine 31:397-405, 2006
    4) 金岡恒治 編:腰痛の病態別運動療法,2016

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