スポーツ内科総論 ~スポーツ現場の困りごとを解決するスポーツ内科について~

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烏山司 北九州総合病院 消化器内科

突然ですが、「スポーツ内科」という分野をご存じでしょうか。あまりなじみのない方も多いかもしれません。医療の分野において、最もスポーツに関連が深いのは「スポーツ整形」であると思います。確かに「適度な運動は体に良い。」これは皆さんにとって共通認識であると思います。小学生から大学生、また実業団選手からトッププロ、そしてスポーツ愛好家などなど、技術を磨き、成績を向上させるには、比較的負荷の強い練習が必要となることも多いかと思います。ところがそれが原因で、体や心に不調を来たしたり、成長に影響を及ぼしたりすることも少なくありません。そういった問題を未然に防ぐために内科医が介入する領域が「スポーツ内科」です。

はじめに 2019年3月、「日本スポーツ内科学会」が設立されました。一般的な内科の知識に加え、スポーツによる体や心の障害、栄養摂取やドーピングの問題などを学び、スポーツに取り組む方のお役に立てればと、医師が集い設立された学会です。皆さまが思っておられる以上に、内科医が介入することで解決できるアスリートやスポーツ愛好家の悩みは多いかもしれません。ぜひ、スポーツ内科的な視点を学んでいただき、日々の診療や治療、ケアなどにお役立ていただけたら幸いです。

スポーツ内科の代表的な4つの疾患

みなさんはスポーツ内科の代表的な4つの疾患をご存じでしょうか。 ●スポーツ貧血 ●運動誘発性喘息 ●女性アスリートの無月経 ●オーバートレーニング症候群 が代表的な4つの疾患です。

それぞれの疾患の詳細は別の機会にし、今回はそれぞれの疾患についてまとめていきます。

上記で上げた「運動誘発性喘息」以外の3つの疾患に関しては、運動負荷が強く、適切な栄養や休息が取れていない時に発症することがほとんどです。運動負荷が強い場合には、足底や筋肉内で赤血球が壊れ貧血の一因になる、ということもありますが、負荷に応じた栄養が摂取できていない場合には、血液産生や月経を誘発するためのホルモンの産生が適切に行えず、スポーツ貧血や女性アスリートの無月経を引き起こします。

オーバートレーニング症候群に関しては、やる気が出ない、憂鬱であるなど、「うつ病」に似た状態であると考えていただくのが分かりやすいかと思います。日々の仕事の疲れ、ストレスなど、精神的な疲労が非常に強くて発症してしまうのが「うつ病」、運動負荷が強く、肉体的な疲労がしっかり改善されないことが原因で発症してしまうのが「オーバートレーニング症候群」です。精神的な面が強いのか、肉体的な面が強いのか、原因は違えど、訴える症状はほとんど同じです。治療においても、オーバートレーニング症候群に対して、うつ病に対する薬を用いることもあります。

精神面の不調は目に見えないですし、重症化した場合には取り返しのつかないことになる可能性もある疾患です。本当に困ったときはスポーツ精神科医の診察を受け、適切なケアを受ける、ということが極めて重要です。

スポーツ内科的疾患を考える上で最も注意しなければならないポイント

スポーツ内科的疾患を考える上で最も大切なことは、「一般内科的疾患を見逃さないこと」です。少しわかりにくいと思いますので、具体的な例をご紹介します。

例えば、①スポーツ貧血によるパフォーマンスの低下と思っていたら、胃潰瘍や大腸癌などの出血による貧血を来たす疾患が隠れていた、②動悸や発汗量が増えているのは練習量が少なくスタミナが足りないせいだ、と思っていたら、甲状腺機能亢進症(バセドウ病)が隠れていた、などのように、実はスポーツによる負荷や疲労、栄養不足が原因と思っていたら、重大な病気が隠れていた、という可能性を常に考えておかなければなりません。

こういった可能性を考えた上で、必要であれば検査を行い、一般内科的疾患が原因なのか、スポーツが原因になっているのかを診断する、これはまさに内科医が得意としているところです。またそれこそが「スポーツ内科医」の最も大切な役目でもあると考えます。

スポーツ内科の今後 

現在、スポーツ内科診療においては、一般の医療おいて示されているような「ガイドライン」や「診療方針」といったものがないのが現状です。そもそも、年齢や性別、体型や体質、競技なども合わせると、個人差があまりにも大きく、一定の方針を定めること自体が難しいのかもしれません。

今後はできるだけ医師間だけではなく、スポーツに関わる様々な職種の方と連携を図ることにより、スポーツ内科疾患によって満足いくプレーができない選手や、引退に追い込まれる選手などができるだけ少なくなるよう努めていく必要があると考えます。

●まとめ 今回は「スポーツ内科総論」というテーマで書かせていただきました。まだまだ周知度は低いかもしれませんが、内科医がスポーツ選手のお役に立てる場面は少なからずあると考えています。

今までにない視点からアドバイスできることもあるかと思いますので、現場にて困っている選手などいらっしゃいましたら、ぜひスポーツ内科医に相談していただきたいと思います。

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