パーキンソン病には四徴候を中心とする運動性症状のほか,非運動性症状など多様な症状を呈し,その結果,活動性や生活の質の低下を招くことが多い.本稿は,パーキンソン病の示す四徴候のひとつである筋強剛の詳細について紹介する.

パーキンソン病は,黒質のドーパミン神経細胞の変性を主体とする進行性変性疾患である.その四大徴候として,1)筋強剛,2)無動・寡動,3)姿勢反射障害,4)安静時振戦が特徴とされる.以下に,四徴候のうち1)筋強剛について紹介する.

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筋強剛

筋強剛は,受動的な四肢の運動において可動域の全体にわたって抵抗が増大することと定義されている¹⁾.

これは,上位運動ニューロンの障害による痙性で認められる折り畳みナイフ現象²⁾のような,四肢をある角度以上に動かしたときに起こる急激な筋緊張の低下ではなく,鉛管を曲げた時のように可動域全体に均一で一定な抵抗で滑らかなままである「鉛管様現象」や,緊張の増加に震えが重畳し,筋緊張が断続的に変動しているように知覚される「歯車様現象」とされ,明確に区別されている.上記のように,筋の過剰緊張による抵抗の増加および均一な抵抗のふたつを基本的要素として説明されている³⁾.

筋強剛は一般的にドーパミン作動性の薬物療法や外科的介入に積極的に反応する.そのため,パーキンソン病の診断基準および治療的介入の有効性の評価において用いられる⁴⁾.

しかし,筋強剛の詳細な生理学的メカニズムは依然不明である.広く知られている見解としては,筋強剛は受動的な筋の伸張に対する筋受容体の反応の増加に起因するものである.Rushworthら5)は,パーキンソン病患者の対象筋に対して局所麻酔薬を投与することで筋強剛が減少したことを示しており,この見解を支持している.

パーキンソン病患者の筋強剛は,健常対象者と比較して筋伸張反射において長潜時反射活動の著しい増加を示しており,これが原因となっている可能性がある¹⁾⁶⁾.

先行研究では,筋強剛を定義するふたつの要素のうち,抵抗の増加についての部分的な説明は可能である.しかし,筋強剛特有の抵抗の均一性は説明できない.

Xiaら⁷⁾⁸⁾の研究では,筋強剛における抵抗の均一性のメカニズムについて述べられている.Xiaら8)は,パーキンソン病患者に対してサーボモーターによる手関節掌背屈の受動運動を反復し,筋活動を表面筋電図を用いて記録した.

その結果,受動的に短縮した筋の筋電図活性化の増加である「短縮反応(※1)」が認められた.また,同運動中に伸展した筋において,ニュートラルポジションを超えて筋が伸張すると筋電図活動の低下である「伸展誘発抑制(※2)」が認められた(図1).

このことから,「短縮反応」「伸展誘発性抑制」が筋強剛の鉛管用現象の特性に重要な役割を果たしていることを示した.

また,Powell Dら⁹⁾は,パーキンソン病患者に対し,自動的・受動的な手関節の掌背屈運動における,ドーパミン作動性薬物のon状態およびoff状態での筋強剛を比較し,薬物効果を検証した.その結果,受動背屈運動においてoff状態でみられた屈筋の伸張反射および伸筋の短縮反応は,on状態では顕著に減少した(図2).

Kreitzerら¹⁰)は,ドーパミン作動性薬物は,ドーパミン放出を補助し,協調性運動に関与するとされる黒質線条体経路を含むいくつかの皮質系を改善させるとしており,筋活動及び運動における薬物効果を支持している.

※1 短縮反応:筋を他動的に短縮させた際に筋緊張が増加する反応 ※2 伸展誘発抑制:伸張した筋の連続的ストレッチによる被動抵抗が急激に低下する現象

以上のように,パーキンソン病の代表的な徴候である筋強剛について説明した.筋強剛は多動運動時に顕著であるが,その他の症状と相まって活動を阻害する要因となる.次のコラムでは,四徴候のひとつの無動について説明する.

【共著】 山本勝仁(北播磨総合医療センター リハビリテーション室)

【引用】 1) Fung VS et al. Rigidity & Spasticity. Lippencott Williams & Wilkens; 2002 2) Burke D et al. Tonic vibration reflex in spasticity, Parkinson's disease, and normal subjects. J Neurol Neurosurg Psychiatry,1972;35,477-486. 3) Xia R. Physiological and Biomechanical Analyses of Rigidity in Parkinson's Disease.Etiology and Pathophysiology of Parkinson’s Disease;2011 4) Prochazka A et al. Measurement of rigidity in Parkinson's disease. Mov Disord,1997; 12,24-32 5) Rushworth G et al. Spasticity and rigidity: An experimental study and review. J Neurol Neurosurg Psychiatry, 1960;23,99-118 6) Johnson MTV et al. Modulation of the stretch reflex during volitional sinusoidal tracking in Parkinson’s disease.Brain,1991;114,443-460 7) Xia R et al. The role of shortening reaction in mediating rigidity in Parkinson’s disease. Exp Brain Res. 2004; 156:524–8. 8) Xia R et al. Differentiation of contributions between shortening reaction and stretch-induced inhibition in Parkinson’s disease. Exp Brain Res’,2011;209, 609–618 9) Powell D et al. Enhancement of parkinsonian rigidity with contralateral hand activation.Clin Neurophysiol.2011;122:1595-1601 10) Kreitzer AC et al. Striatal plasticity and basal ganglia circuit function. Neuron. 2008; 60:543– 54.

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