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  3. ストレッチで骨格筋は柔らかくなるのか? ~ストレッチトレランスから見る関節可動域の拡大:前編~

ストレッチを行うことで関節可動域の拡大が生じることを経験している方も少なくないのではないでしょうか。ですが、近年はその関節可動域の拡大は筋が柔らかくなったからではなく、単に伸張痛や不快感に慣れただけである。といった記述などをよく目にする様になりました。8週間未満の慢性的なストレッチングへの適応は、主に感覚レベルで発生する¹⁾。との報告もあります。これをストレッチトレランスの変化と言います。今回は、ストレッチで関節可動域が改善した理由が何だったのか、これについてストレッチトレランスをテーマに、次回コラムとの2部構成で、論文を交えご説明していきます。

目次

    関節可動域とは

    今回の議題をご理解いただくためには、まず前提として知っておいてほしい3つの知識があります。

    それは
    ■関節可動域
    ■筋肉について
    ■ストレッチトレランス
    についてです。それぞれについて以下に説明していきます。

    まずは一つ目、関節可動域についてご説明していきます。
    「Range of Motion=ROM」は、「四肢や体幹の関節を自動的又は他動的に運動させた可動範囲のことをいう¹⁾」と定義されています。しかし、この定義だけだと測定時に様々な問題が生じてきます。

    代表的な問題として挙げられるのは、「エンドフィールの感覚はどの程度で止めるのか」です。この問題は主観的な部分が多く個人差がかなり大きくなってしまいます。軽度の伸張感を基準に測定する検者もいれば、抵抗感を強く感じながらも、最終域まで可動させた位置で測定する検者もいるかと思います。

    ちなみに、測定方法は、「痛みの出る直前」や「不快を感じる点」³⁾といった様に、最終域を被験者の主観で決めていることが一般的です。ただ、この場合、疼痛の感じ方や不快感の感じる点に個人差が生じてしうという問題が発生します。痙縮のみられる関節であれば、被動性をどれだけ意識して測定するかも重要となってきます。

    ここでのポイントとして、関節可動域というのは、あくまで「筋緊張や疼痛や拘縮」といった背景を持った骨格筋を伸張した時の「結果」でしかないということです。つまり、関節可動域の結果だけでは良くなった要因が分からないという事になります。

    筋が柔らかくなったからなのか、上手く脱力したからなのか、筋緊張が一時的に低下したからなのか、そもそも伸張痛に慣れてしまっただけなのか等々。候補を挙げるとキリがないですが、関節可動域というのは、測定値だけを見ても大まかにしか分かりません。まずはこれをご留意ください。

    筋の柔らかい・硬いとは
    次に筋について解説します。本来であればはアクチンミオシン、タイチンといった生理学の話から始目なければならないのですが、今回は割愛し、静的トルクと動的トルクについて解説します。

    静的トルクとは、スタティックストレッチング中に見られる他動的な抵抗感の事です。また、動的トルクとは一定の角速度で関節を他動的に動かした際に生じる抵抗感の事です。つまり、両者とも、伸張された筋から返ってくる抵抗感の強さを表しています。ストレッチにより、この静的・動的トルクが低下すればもちろん関節可動域も改善しすることが理解できます。つまり、筋が柔らかくなった。と言えるかもしれません。

    ※例外ももちろんあります。高筋緊張であった筋が、自己抑制で一時的に弛緩しただけかもしれませんし、防御収縮が消失しただけかもしれません。
    ですが、この両トルクが低下せず、ストレッチ前後で同じ抵抗感にも関わらず、関節可動域の測定値が拡大していることがあります。この場合は、筋が柔らかくなったとは言えないかもしれませんね。

    ストレッチトレランスとは

    アブストラクトでも簡単に触れましたが、ストレッチトレランスとは、いわゆる「伸張痛に対する慣れ」の事を表します。ストレッチ中の不快感、及び伸張痛を生じた時=骨格筋の最終域感となり得るため、この時の主観で関節可動域を測定することは先述しました。

    ただ、この不快感や伸張痛といった感覚はには「慣れが生じます」。一般的なストレッチの時間は20秒~2分程ですが、これだけ伸ばし続けると徐々にその時の感覚に適応していきます。さらに、関節可動域を再度測定すると、感覚が鈍くなっているため、抵抗感は変わらずに可動域だけが広がった様な現象が生じます。この現象を知らずに、組織の抵抗感を感じずなんとなくでストレッチや関節可動域の測定を臨床で行ってしまうと、筋が柔らかくなったと錯覚を起こしてしまう一要因になり得るのです。

    【まとめ】
    ① 関節可動域の測定方法は、「痛みの出る直前」や「不快を感じる点」といった被験者の主観で決めていることが一般的である。そして、その主観は個人差が大きい
    ② 筋の硬さ、柔らかさはトルクと言う「抵抗感」で感じる必要がある
    ③ 抵抗感が減弱すれば筋が柔らかいと言える場合が多いが、抵抗感が変わらないのに関節可動域が拡大する事が臨床では多い。
    ④ 抵抗感が変わらずに、伸張痛や不快感の閾値が高まることで関節可動域が拡大する事をストレッチトレランスと言う。
    ⑤ 臨床ではこの「主観」と「抵抗感」を意識しながらストレッチすることが重要。

    如何でしたか?次回は、ここまでの内容を踏まえたうえで、論文を交えてよりストレッチによる関節可動域の拡大について、深堀していきたいと思います。

    【参考文献】
    「1」Sandro Freitas: Can chronic stretching change the muscle-tendon mechanical properties? A review: Scandinavian Journal of Medicine and Science in Sports · August 2017
    「2」坂上 昇 関節の機能と関節可動域 細田多穂 理学療法ハンドブック 改定第4班 (第一巻 理学療法の基礎と評価) 協同医書出版社 2010
    「3」鈴木重行 ストレッチングの科学 三輪書店 2018

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