パーキンソン症候群を示す原因疾患について

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竹林崇 大阪府立大学 教授

パーキンソン症状を呈する疾患は多く,原因によっていくつかの疾患に分類される.また,その疾患によって特徴や症状は全く異なる.本稿では,パーキンソン症状を呈するパーキンソン症候群の主な原因疾患とその詳細について紹介する.

キーワード
#VaP #CBD #パーキンソン症候群

パーキンソン病以外の主なパーキンソン症候群の原因疾患

1) 脳血管性パーキンソン症候群(Vascular parkinsonism;VaP) この概念はCritchlerが1929年に,脳血管疾患が原因となる動脈硬化性パーキンソニズムとして提唱した¹⁾.1987年に発表されたThompsonら²⁾による研究では,脳動脈の肥厚と狭窄により白質病変と認知症を引き起こすBinswanger病が,下肢に高度な運動障害はあるが,通常は安静時振戦や上肢の運動障害を欠く,「Lower body parkinsonism」と呼ばれる歩行障害の顕著な原因であると示唆した.

VaPとパーキンソン病は,病態や臨床症状,神経画像に至るまで,それぞれの差異が報告されている.VaPは,大脳基底核を中心とした多数の微小梗塞や,皮質下白質の広範な虚血性病変を認める疾患である.神経画像診断における構造的異常はパーキンソン病(12~43%)と比較し,VaP(90~100%)で検出されやすいが,特異的な構造的神経画像の異常パターンはないとされている³⁾.

しかし,いくつかの形態学的Magnetic Resonance Imaging(MRI)研究では,微小出血や皮質下または皮質萎縮の存在がVaPを支持する特徴であることが示唆されている⁴⁾.MRIで検出された病変は,典型的には脳室周囲白質の広範な病変,主に基底核の脱落の存在,側脳室と第三脳室の拡張を示している(図1)¹⁾⁵⁾.

2) その他のパーキンソニズムを呈する疾患 Corticobasal degeneration(CBD)は,Rebeizらにより1967年に報告された進行性の神経変性疾患である.典型的にCBDは中心傍小葉,前頭・頭頂領域,線条体,黒質に左右差のある神経細胞脱落とグリオーシスなどを示し,レボドパ抵抗性パーキンソニズム,ジストニア,ミオクローヌスの非対称性,上下肢の拙劣さや失行も高頻度で認められる⁶⁾.

Armstrongら⁶⁾は,267例のCBD患者の臨床像を検討し,大脳皮質基底核症候群(corticobasal syndrome;CBS),前頭葉性行動空間症候群(frontal behavioral-spatial syndrome;FBS),原発性進行性失語の非流暢性 / 失文法異型(nonfluent/agrammatic variant of primary progressive aphasia;naPPA),進行性核上性麻痺症候群(progressive supranuclear syndrome;PSPS)の4つのCBD表現型に分類した.下畑ら⁷⁾は,CBSの背景病理の鑑別の進め方を示している(図2).

CBS

臨床症状からCBDとPSPの鑑別は難しいとされている.Whitwellら⁸⁾は,複数の神経変性疾患において脳萎縮の割合を比較した.その結果,CBDはPSPやアルツハイマー病などと比較し,有意な大脳萎縮,脳室拡大を示した(図3).また,脳梁前部の萎縮はCBDとPSPを鑑別するための神経画像診断マーカーになる可能性がある⁹⁾.

CBSの診断基準は複数報告されているが,Mathewら¹⁰⁾はCBS30例の患者を診断し,診断基準の診断率を比較した.その結果,Mayo基準37%,Toronto基準47%,Cambridge基準73%と低く,基準間の差が大きいことを示した.差が生じた理由として,認知機能障害への重みづけの差が影響した可能性が考えられた.そのため,Mathewらは,Cambridge基準の適用性を向上させるために,遂行機能障害および語流暢性低下を基準として加え,改訂を検討した(表1).

運動機能は,多くがL-dopa抵抗性パーキンソン症候群,ジストニア,ミオクローヌスの非対称性を示す.Armstrongら⁶⁾のレビューでは,37論文,209例の検討を実施した.その結果,非対称性73%,筋強剛85%,無動76%,歩行障害は73%に認められていた.高次皮質機能は,四肢の失行57%,なかでも観念運動失調が最も一般的に報告されている.また,皮質性感覚障害27%,他人の手徴候30%と低頻度であった.失語症はこれまでの全ての診断基準の中核をなし,主要徴候と考えられ,全過程で52%に認められた.

PSP

主に脳幹や基底核に障害を及ぼす神経疾患であり,視床下核,淡蒼球,赤核,黒質,線条体,橋被蓋,動眼神経核,髄質および歯状核にタウ蛋白およびneuropil threads(樹状突起・軸索に由来)が蓄積することにより病理学的に定義される¹¹⁾.有病率は年齢に依存し,PDの6~10%,または10万人あたり6~7例と推定されている.また,本疾患の発症は63歳がピークであり,40歳以前の症例は報告されていない¹²⁾.

PSPはサブタイプがいくつか分類されており,主なものを以下に示す.

■Richardson症候群(RS) PSPの古典的でより一般的な症状である.意識喪失を伴わない歩行障害と原因不明の転倒が最も頻度の高い症状であり,また頸部後屈はジストニアの一般的な形態である(図4)¹³⁾.

初期の眼症状は視野のぼやけ,緩徐なサッケード,羞明,垂直方向の眼球運動障害,眼瞼痙攣による不随意の眼瞼閉鎖,緩徐で不規則な発語,嚥下障害が典型的な特徴である.ほとんどの症例は診断後3~4年後に介護に依存するようになる.Litvanら¹⁴⁾の報告では,発症時年齢,性別,認知症,眼球運動障害,筋強剛はいずれも生命予後には影響しなかった.また,発症後1年以内の転倒および嚥下障害,失禁を伴う場合は生命予後が不良であると予測した.

■PSP-パーキンソン病(PSP-P) PD様の症状を呈する,より軽症の型である.特徴としては,動作緩慢,筋強剛,振戦,非対称性の発症,正常な眼球運動,一過性のL-dopa反応などがある.また,PSP-PではRSと比較し,転倒や認知障害の出現が遅く,タウの病理学的重症度も低いとされている¹³⁾.

・PSPの神経画像 Cosottiniらの神経画像測定の研究¹⁵⁾によると,PSP患者の形態測定の評価では,中脳領域の萎縮がPSPと他疾患を区別するうえで最も高い診断制度を示し,感度100%,特異度90.5%であった.

PSPの神経画像は通常,中脳の萎縮(矢状面の「ハチドリ」サイン,横断面の「朝顔」サイン),および上小脳脚の信号強度の変化を伴う萎縮が認められる(図5)⁵⁾.

線条体ドーパミン神経終末に存在するドーパミントランスポーター(DAT)を可視化するDAT-PETでは,尾状核と被殻の両方でドーパミン神経終末が均一に関与していることが示唆された(図6)¹¹⁾.

【まとめ】 これらに挙げたように,一言でパーキンソン症候群と言えど,原因や症状は多種多様にわたる.これらを参考に,眼前にある対象者の方に存在するパーキンソン症候群はどういった特徴を持つのかを精査し,アプローチ方法を考え直す必要がある.

【共著】 北播磨総合医療センター リハビリテーション室 山本勝仁

【引用論文】 1) Amos D et al. Vascular parkinsonism- characteristics, pathogenesis and treatment. Neurology 2015 2) Thompson PD et al. Gait disorder of subcortical arteriosclerotic encephalopathy: Binswanger’s disease. Mov. Disord. 2, 1–8 3) Kalra S et al. Differentiating vascular parkinsonism from idiopathic Parkinson’s disease: a systematic review. Mov Disord. 2010;25,149-156 4) Karen KY. Ma et al. Neuroimaging in Vascular Parkinsonism. Curr Neurol Neurosci Rep. 2019; 19,102 5) Meijer FJ et al. Clinical Application of Brain MRI in the Diagnostic Work-up of Parkinsonism. Journal of Parkinson’s Disease 2017;7:211-217 6) Armstrong MJ et al. Criteria for the diagnosis of corticobasal degeneration. Neurology 2013;80:496-503 7) 下畑 享良 他.CBSの臨床.Brain Nerve 2013;65:31-40 8) Whitewell JL et al. Rates of cerebral atrophy differ in different degenerative pathologies. Brain. 2007;130:1148-1158 9) Kouri N et al. Neuropathological features of corticobasal degeneration presenting as corticobasal syndrome or Richardson syndrome. Brain. 2011;134:3264-3275 10) Mathew R et al. Diagnostic criteria for corticobasal syndrome: a comparative study. J Neurol Psychiatry. 2012;83:405-410 11) Morris HM et al. Progressive supranuclear palsy (Steele-Richardson-Olszewski disease). Postgrad Med. 1999;75:579-584 12) Santacruz P et al. Progressive supranuclear palsy: A survey of the disease course. Neurology. 1998;50:1637-1647 13) Orland GP Barsottini et al. Progressive supranuclear palsy: New concepts. Arq Neuropsiquiatr. 2010;68:938-946 14) Litvan I et al. Natural history of progressive supranuclear palsy (Steele-Richardson-Olszewski syndrome) and clinical predictors of survival: a clinicopathological study. Neurol Neurosurg Psychiatry. 1996;61:615-620 15) Cosottini M et al. Assessment of midbrain atrophy in patients with progressive supranuclear palsy with routine magnetic resonance imaging. Acta Neurol Scand. 2007;116:37-42

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