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パーキンソン病の概要について

パーキンソン病は神経難病のなかで最も患者数が多く,厚生労働省の指定難病とされている.研究の歴史も古く,疾患の分類や治療に関しても研究は進んでいる.本稿では,パーキンソン病の疫学や歴史的変遷,分類について紹介する.

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#パーキンソン病 #パーキンソニズム #神経難病

パーキンソン病の疫学 ~診療ガイドラインの意義~

パーキンソン病は中脳黒質のシナプス前ドーパミン神経細胞がほぼ選択的に変性し,運動緩慢,振戦,筋強剛を中心とした特徴的な運動症状を生じる神経変性疾患である.また,運動症状のみならず,多彩な自律神経症状,うつ症状,睡眠障害に伴うさまざまな症状,認知症などの非運動症状も高頻度に合併する多系統変性疾患であり,かつ全身疾患である¹⁾.

発症原因は不明であるが,遺伝因子ならびに環境因子の関与が重要であることが知られている.本邦の地域単位での疫学的研究²⁾における有病率は,2004年当時で人口10万人あたり164.5人としている.また,年齢別有病率は60歳代から急激に増加しはじめ,加齢に伴い増加している.このことからも,加齢は発症に寄与しており,超高齢社会となった本邦においてさらなる患者数の増加が予想される.

そこで,どのような治療が患者のQOLや長期予後にとって最善であるか,エビデンスに基づいた治療指針の必要に迫られ,2002年に日本神経学会治療ガイドラインとして「パーキンソン病治療ガイドライン2002」が作成された.そして,治療の進歩から2011年に改訂版として「パーキンソン病治療ガイドライン2011」に改訂され発行された.2018年のガイドライン改訂は,治療以外にも診断基準や病因,遺伝子,画像所見なども解説され,「パーキンソン病診療ガイドライン2018」と名称が変更され発行された.

Willisら³⁾は,パーキンソン病患者に対する治療において,神経内科医および一般医の治療による臨床転帰の改善を比較した.その結果,神経内科医による治療を受けた患者は,一般医の治療に比べ介護施設入所の可能性が低く,股関節骨折のリスクも低かった.また,加齢に伴う死亡率も有意に低かったとしている(図1).これらのことからも,エビデンスに基づいた治療を文章化し普遍的に示したことは,パーキンソン病の診断・治療を広く普及させる大きな意義を果たしているといえる.

Parkinson病の歴史的変遷 

パーキンソン病の近代史は,1817年にJames Parkinsonがロンドンで発表したエッセイ⁴⁾に始まる.Parkinsonはこのエッセイでパーキンソン病の主症候である振戦(麻痺),動作緩慢,姿勢反射障害(突進現象)の,四大症候のうち固縮以外の症状を記載し,Shaking Palsy(振戦麻痺)とした.また,特有の前傾姿勢,小刻み歩行,小字症,流涎をはじめとした運動症状,非運動症状まで言及している.

パーキンソン病の名称は,Jean Martin Charcotにより提唱された⁵⁾.この名称は,この疾患において筋力低下がなく“麻痺”という用語は不正確であること.振戦が病気の主症状であるとしながら,それが全てではなく,診断において絶対的に必要ではないと強調したことに基づいている.Charchotらは,筋緊張の固縮(筋強剛)についても記載し,またパーキンソン病に伴う非運動症状として自律神経失調や疼痛についても詳細に説明した⁶⁾.

パーキンソン病の責任病巣に関して,Lewyは1912年に発表された神経学ハンドブックの「病理解剖学」において,マイネルト核,迷走神経背側核ニューロン内部に特異な神経内包物を同定したことを説明した⁷⁾.その後,1919年にTrétiakoffによってパーキンソン病患者の中脳黒質の神経細胞で内包物を発見し,これをレビー小体と名付け,黒質病変の重要性を強調した⁸⁾.1960年には,Ehringerらの研究により,今日パーキンソン病の基本的な病態として理解されている,パーキンソン病患者の脳内ドーパミンおよびノルアドレナリンが減少していることが発見された⁹⁾.

パーキンソン病とパーキンソニズム

パーキンソニズムとは,振戦や動作緩慢,固縮などパーキンソン病にみられる同様の運動障害を引き起こす神経障害の総称とされる場合と,パーキンソン症候群という疾患名として使用される場合がある.パーキンソン症候群は,通常は先に述べたパーキンソン病の四大徴候のうち,2つ以上の症状が認められる疾患と定義づけられている1¹⁰⁾.パーキンソン様症状を呈する疾患は非常に多くあるが,大別すると脳の変性疾患によるものと,何らかの明確な原因がある疾患(二次性あるいは症候性パーキンソニズム)によるものがある(表1).

【共著】 山本勝仁(北播磨総合医療センター リハビリテーション室)

【引用論文】 1) Parkinson病診療ガイドライン 一般社団法人 日本神経学会.2018 2) Nakashima K et al. Prognosis of Parkinson’s disease in Japan. Tottori University Parkinson’s Disease Epidemiology(TUPDE) Study Group. Eur Neurol. 1997;38 Suppl 2:60-3 3) Willis AW et al. Neurologist care in Parkinson disease. Neurology. 2011;77:851-857 4) Parkinson J et al. An Essay on the Shaking Palsy. J Neuropsychiatry Clin Neurosci 14:2,2002 5) The art of medicine. Moving pictures of Parkinson’s disease. The lancet.com. Vol.378 2011 6) Goetz CG et al. The History of Parkinson’s Disease: Early Clinical Descriptions and Neurological Therapies. Cold Spring Harb Perspect Med 2011;1 7) Engelhardt E et al. Lewy and his inclusion bodies. Discovery and rejection. Dement Neuropsychol 2017;11(2):198-201 8) Engelhardt E et al. Lafora and Trétiakoff: the naming of the inclusion bodies discovered by Lewy. Arq Neuropsiquiatr 2017;75(10):751-753 9) Barbeau A et al. The Pathogenesis of Parkinson’s Disease: A New Hypothesis. Canad Med. 1962,Vol.87 10) 葛原 茂樹. パーキンソン病と関連疾患の療養の手引き.厚生労働科学研究費補助金難治疾患克服研究事業 神経変性疾患に関する調査研究班.三重大学出版会,2005,

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