1. ホーム
  2. コラム
  3. 目標設定介入に活用されるツール②  ~バリエーションの増えるADOCシリーズ~

目標設定介入に活用されるツール②  ~バリエーションの増えるADOCシリーズ~

お気に入り数0
竹林崇 大阪府立大学 教授

前回は目標設定ツールの1つであるADOCについて解説した。今回はその派生にあたるADOC-H、ADOC-Sについてエビデンスと実践例を中心に解説する。

<キーワード>
#目標設定 #ADOC-H #ADOC-S

目次

    ※本稿は、以前に記載したコラム『目標設定に活用されるツール①』をご覧になった後で、お読みください。

    目標設定介入に活用されるツール①

    バージョンアップされるADOC(ADOC-H、ADOC-S)

    前回のコラムに記載したADOCの他に、脳卒中後の上肢麻痺や,外傷および外科術後の手の使用を促すことに特化したADOC-Hや、小児例を対象としたADOC-Sも存在する。

    ADOC for hand(ADOC-H)¹⁾²⁾は、麻痺手や損傷手の使用を促すためのiPad/iPhoneアプリケーションである。16カテゴリー、130のイラストに分かれており、手の使用に関して具体的な場面設定を行えるところが、ADOCと差別化される点である。臨床では、ADOCで生活上の大まかな目標をたてる。そしてADOC-Hで手の使用場面を設定するなどの併用も行われている。(図1)
    ADOCが対象者の価値のある作業といった目標を想起させるのに対し、ADOC-Hは対象者に『一般的な手の役割/場面を想起・モニタリングさせる』といったユーザーインターフェイスをとっており、この点が対象とする患者層の違いとともにADOCとは大きく異なる点である。

    ADOC-Hウェブサイト

    次に小児例を対象としたADOC for school(ADOC-S)について解説する³⁾。ADOC-Sは学齢期を中心とした小児作業療法での適応を目的としており、小学生、保育園児に対する巡回支援での利用が報告されている⁴⁾⁵⁾。(図2)
    また,ADOC-Sは結果を出している小児分野の療法士の面接手法を再現できるようなユーザーインターフェイスが採用されており、ADOCやADOC-Hよりもコミュニケーションに特化した作りとなっている。

    ここからは、ADOC-HとADOC-Sそれぞれの研究・実践状況について解説をすすめる。

    ADOC-Sウェブサイト

    ADOC-Hのエビデンスと実践例

    ADOC-Hのエビデンスは、脳卒中後片麻痺を呈する症例を中心に実践報告がなされており,そのエビデンスは事例報告レベルに止まっている。大谷ら⁶⁾はADOC-HをCI療法施行時に活用した実践を報告している。本報告ではCI療法における目標設定、Transfer packageの設定時に紙面版ADOC-Hを補助的に活用している。結果、従来法のように口頭のみで対応するよりも、ADOC-Hに含まれる図を用いることでより明確な目標設定が短時間で行える可能性を報告している。また瀧野ら⁷⁾も同様の介入を行い、重度上肢麻痺を呈する事例に対して、麻痺手の使用頻度向上が得られた経験を報告している。

    上記報告より、ADOC-Hは図を利用した視覚的情報処理により、生活中の麻痺手の使用場面の設定を促す可能性が述べられている。またADOC-Hは目標設定の中でもHow(どのように)の側面に焦点を当てるツールであり、目標のWhat(何を)の側面に焦点を当てるADOCとは使用用途が異なる点も介入に良影響を与えた要因だと考えられる。両研究共に単一の事例報告であるため、明確な効果やADOC-Hと結果の因果関係まで言及することはできない。しかし、臨床運用という点において有益な知見であると言える。また、脳卒中後の上肢麻痺以外にもADOC-Hは橈骨遠位端骨折例にもケースシリーズにて試用されており⁸⁾、今後の更なる報告が期待される。

    ADOC-Sのエビデンスと実践例

    ADOC-SはADOCやADOC-Hとコンセプトが異なる目標設定ツールであり、対象が小児に限定される。そのため選択できる項目も「学齢期の子どもの活動」中心に構成されている。「身の回りのこと」などの就学前から行われる項目も含まれるため、未就学児に対しても適応が可能である。研究としては、コンサルテーション介入との併用効果が報告されている。

    仲間ら⁴⁾は、未就学児の単一事例において、ADOC-Sを用いた巡回型コンサルテーションの有用性を報告している。巡回型コンサルテーションは、介入対象者を教員とし、目標設定のプロセスを教員と作業療法士が共有しながら進めてゆく。介入期間は10か月、頻度は介入開始3か月間は月1回、その後は6か月に1回の対応となった。OTの直接介入は低頻度であるにも関わらず、介入後には目標到達度の指標であるGoal Attainment Scaling(GAS)の改善が認められていた。

    類似した実践として、山口ら⁵⁾は未就学児7名に対して複数事例の介入前後比較試験を報告している。対象は幼稚園教諭と保育士とし、OTはコンサルテーション支援が中心であった。OTの介入は低頻度(3-4か月に1度を、計3回)であるにも関わらず、目標到達後のGAS・COPM(遂行度・満足度)にて、介入前後の比較において有意な改善がみられた。今回の山口らの報告は、大規模研究前のパイロットスタディーに位置づけられており、続報が期待される。課題としては、目標設定の対象を保護者や対象児自身に設定した報告は少なく、今後の発展が見込まれる分野である。

    【共著】
    高瀬 駿(川崎協同病院 作業療法士)

    【引用文献】
    1)Ohno K,et al:Development of a tool to facilitate real life activity retraining in hand
    and arm therapy.British Journal of Occupational Therapy.80(5),310-8,2017
    2)大野ら:脳卒中後麻痺側上肢の使用行動を促進するためのアプリケーションツール:ADOC for hand.臨床作業療法,14(4),303-6,2017
    3)仲間ら:ADOC学校版(Aid for Decision-making in Occupation Choice for school)の開発.日本作業療法学会抄録集,P498-Lf,2013
    4)仲間ら:保育所等訪問支援における巡回型学校作業療法,作業療法,37巻4号,427-433,2018
    5)山口ら:幼稚園・保育園でのコンサルテーション型作業療法の効果検証に向けた試験的研究.作業療法,37巻2号,145-152,2018
    6) 大谷ら:症例報告 Aid for Decision-making in Occupation Choice for Hand(ADOC-H)紙面版のCI療法における試用,OTジャーナル49(11),2015
    7)瀧野ら:亜急性期脳卒中患者に対し,課題指向型練習とADOC-Hを用いた麻痺手を生活で使用するための行動戦略を行った一例,作業療法,37巻6号,661-668,2018
    8)Ohnoら:The clinical utility of a decision-aid to facilitate the use of the hand in real-life activities of patients with distal radius fractures: A case study,Journal of Hand Therapy,2020;27.

    この記事に関連するタグ

    興味のあるタグをフォローしておくことで、自身のフィードに関連するセミナーやコラムを優先的に表示させることができます。(無料会員機能。登録はこちら)

    人気コラム

    もっと見る

    コラムで人気のタグ

    タグをフォローしておくことで、自身のフィードに興味のあるセミナーやコラムを優先的に表示させることができます。(無料会員機能。登録はこちら)

    注目執筆者

    もっと見る

    コラムカテゴリ