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  3. なぜ、股関節の可動性が大切なのか? ~実践で使える評価方法も紹介します~

前回のコラムでは、胸郭の可動性が重要である理由を解説しました。今回は股関節の可動性が重要である理由を解説します。股関節は構造上、球関節であり大きな可動域を有していますが、同じ球関節の肩関節とは荷重関節としてその機能は大きく変わってきます。今回は、その股関節特有の機能に関して、評価方法やjoint by joint theoryで重要となるポイントに関して解説いたします。

目次

    はじめに

    股関節の特徴としてあげられるのは「球関節でる」、「軟部組織が多い」、「身体の中心に位置する」ことなどがあげられます。運動する際の股関節の機能は様々な役割を有していますが、そのなかでも「可動性」は非常に重要な要素となってきます。

    股関節の可動性を得る第一条件は、臼蓋と大腿骨の適合性

    股関節の可動性を獲得するためには、関節の適合性を高めることがまず重要となります。
    理解するためには、関節の摩擦係数について考える必要があります。摩擦係数とは二つの物体の接触面に働く力を表しており、摩擦係数が大きければ動きに大きな力を要することになります。笹田の報告では生体関節の摩擦係数は10-3(0.001台)であり¹⁾、氷と氷の摩擦係数は0.01程とされています²⁾。

    関節の適合性が高ければ摩擦係数は低く、関節の適合性が低ければ摩擦係数は高くなります。少ない力で関節を動かすためには、関節の適合性を高めることが重要です。

    さらに、股関節の適合性が高い状態であるためには、大腿骨頭が求心位に保持されている必要があります。このとき、大腿骨頭の前後に走行する筋肉が共同収縮する機能を持ち合わせることが大切になります。

    図1を見ると大腿骨頭の前面を走行する腸腰筋、後方を覆う深層外旋六筋が股関節の安定性に作用しているとイメージ出来ると思います。書籍にも、股関節の伸展が大きくなった際は腸腰筋が腸骨大腿靭帯・恥骨大腿靭帯とともに骨頭の前方不安定性を制動・支持し、深層外旋六筋も肩の腱板筋と同じように安定化に作用すると記載されています³⁾。

    つまり、股関節の適合性を高めるためには、これらの筋肉の作用がとても重要です。

    逆をいえば、これらの股関節深層に付着する筋が機能不全(柔軟性低下・筋力低下)に陥っていれば、他の筋が代償的に活動するようになります。

    例えば、腸腰筋に機能不全が生じた場合、歩行動作の立脚後期~遊脚初期(足を前に出そうとするタイミング)で、より大きくかつ同様の作用がある大腿直筋が代償的に働きます。このとき、腸腰筋は腰椎に付着するために腰椎前弯させて体幹伸展を生じさせますが、大腿直筋は骨盤(下前腸骨棘)から脛骨に付着するために骨盤前傾させて体幹屈曲を生じさせようとします。

    これを繰り返すと大腿直筋が短縮してしまい、結果的に股関節伸展の可動域制限に繋がってしまいます。(大腿直筋の活動に対して、脊柱後面の筋が代償的に活動し、体幹伸展を補償してくれる可能性はあります。しかし、いずれにせよ股関節は相対的に屈曲位のアライメントになろうとしています。)

    以上のことから、単純に股関節の可動性をストレッチなどで良くするだけではなく、腸腰筋や深層外旋六筋の筋活動にもアプローチすることが必要であると考えられます。

    股関節内旋は屈曲位だけでなく、うつ伏せでもチェックすべき

    理学療法士などが学校教育で学んだ股関節内旋可動域の測定方法は、「股関節・膝関節屈曲位」だと思います。もちろん、そのポジションでの測定は重要ですが、筆者はうつ伏せでの股関節内旋可動域の測定が重要と考えています。それは、歩行動作や走行動作は股関節が伸展した際、骨盤との位置関係によって相対的に股関節内旋位となるためです。

    実際、高齢者や大殿筋などの殿部の筋肉が発達している人に対してうつ伏せでの股関節内旋の測定を行ってみると、左右差や明らかな制限が生じていることがあります(図2・3)。


    日常生活動作においてうつ伏せでの股関節内旋可動域が大きく必要なわけではないですが、高齢者や下肢疾患術後の患者さん(股関節疾患だけでなく人工膝関節置換術を受けた方なども含まれます)では、可動性が低下しているケースが多く見受けられます。スポーツ動作ではその重要性は大きなものであり、例えばラグビーのバックスが方向転換を大きく行うために必須の可動性となります。

    また、うつ伏せでの股関節内旋の測定で有名なのはクレイグテストという大腿骨の前捻角を測定する方法です。股関節内旋可動域は前捻角の大きさと関係があることが報告されています⁴⁾。うつ伏せの評価で前捻角を把握することは、歩行時の膝関節に生じる内反トルクやジャンプでの着地動作でKnee inの把握にも繋がります⁵⁾⁶⁾。

    Joint by joint theoryのMobilityで重要なのは伸展・回旋

    前回のコラム「何故、胸郭の可動性が大切なのか? ~可動性低下に伴って生じる障害とあわせて解説~」を含めて考えると、伸展と回旋の可動域が大切だということをなんとなく理解していただけたと思います。伸展した状態で2足直立位を取ることが出来るのは、人間最大の特徴です。

    つまり、この機能が失われてしまえば、すなわち人間としての機能を失うということになります。人間の脳はこの2足直立位で姿勢コントロールを行えるように進化を遂げており、そこが次回のコラムで解説する腰部・下部体幹のStabilityに繋がっていきます。まずは人としての機能を最大限に発揮出来るようにするためにも胸郭と股関節の可動域を確保しましょう!

    1) 笹田直, 関節の力学と計測, 医用電子と生体工学 第24巻 4号, P50-55,1986
    2) 安留哲ら,氷・氷摩擦係数の測定, 日本雪氷学会誌 61巻6号, P437-443, 1999
    3) 林典雄 著,運動療法のための機能解剖的触診技術第2版,P140~171,2012
    4) P A Ruwe et al, Clinical Determination of Femoral Anteversion. A Comparison With Established Techniques, J Bone Surg Am,1992
    5) 湯田健二ら,大腿骨前捻角の違いが歩行時の膝関節運動に及ぼす影響,第44回理学療法学会抄録集,2009
    6) 白尾 泰宏ら,大腿骨捻転角と片脚着地動作時の膝関節動揺の関係, 第50回理学療法学会抄録集,2015

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