前回のコラムでは目標設定の問題点について触れたが、今回はその対策となりうる目標設定ツールの1つである【ADOC(Aid for Dicision-making in Occupation Choice)】について解説する。
キーワード
#目標設定、#ADOC、#作業療法

本コラムをお読みになる前に、前回のコラム「作業療法における目標設定の概要」をお読みいただくことをお勧めいたします。是非ご参照ください。

目標設定におけるAidの必要性

目標設定介入に関しては否定的な側面や限界もあるが、一定の効果を示す可能性があるのも事実である。前回紹介したLevackら¹⁾のシステマティックレビューにおいても、目標設定は健康関連QOLやSelf-efficacy(自己効力感)に効果がある可能性が示されている。

また、近年目標設定介入の効果を最大化させるためのツール(Aid)を用いることで、対象者の知識を高めたり、意思決定を促進したりと、その有用性が注目されている²⁾。中でも今回は、友利らが開発したADOC (Aid for Dicision-making in Occupation Choice) を中心に解説していく。

ADOCとは

目標設定を助けるAidとして、Tomoriら³⁾が開発した作業選択意思決定支援ソフト【ADOC(Aid for Dicision-making in Occupation Choice) 】の報告が近年増加している。iPadアプリケーションであるADOCは、ICFの活動と参加の項目を基準に選出された8カテゴリー、95項目のイラストから、対象者にとって重要な作業を選んでもらう(下図参照)。

※文献5より引用

イラスト内容に関しては臨床現場の療法士を対象に妥当性が検証されており、良好な結果を示している⁴⁾。 「重要な作業を一つ選択する」という使い方に限定した際のカットオフ値はMMSE(Mini-Mental State Examination)8点とされており⁵⁾、使い方次第では認知症⁶⁾、失語症⁷⁾⁸⁾を呈する方にも適応となる。

ADOCの利点は、療法士の目的に応じて使用方法を工夫できる柔軟性にある。ADOCには対象者が希望する作業を選択する段階と、療法士が選択する段階があり、双方が選んだ作業の両方を画面に提示し目標を検討することが出来る。これはShared decision makingの意思決定モデルをガイドする流れであり、目標設定の中に対象者の意見を取り入れやすくなる工夫が施されている。

このモデル以外にも、療法士のみが作業選択を行うことでPaternalistic model(療法士が情報を提示し、療法士単独で治療方針を決定するモデル)や、対象者のみが作業選択を行うことでConsumer model/Informed Consent model(対象者が積極的に情報収集をし、意思決定を行うモデル)を実施することが可能であり、目的に応じて作業選択の方法を変えることができる。また、有料のiPadアプリ版以外にも無料配布されているペーパー版もある(下図参照)。

ADOCウェブサイト

ペーパー版の利用に限定すれば、施設への導入がリーズナブルに行える点も人気の理由の一つだと考えられる。しかし、ADOCの最大の利点は、基本設定として前述のShared decision making modelの実践が可能である点である。

古くから医療の現場では「医療者優位」の意思決定、治療方針の確定が問題視されており、前述のPaternalistic modelが広く用いられてきた傾向がある⁹⁾。臨床現場においてはPaternalistic modelが適応となる状況もありうると想定されるが、対象者が意思決定に参加しやすい形としてはやはりShared decision making modelを用いて、医療者と対象者双方の考えをすり合わせる工程が重要である。この工程を目指す上で、ADOCは非常に活用しやすいツールとなる。

ADOCのエビデンス

ADOCを用いた介入研究として、Tomoriら¹⁰⁾は回復期リハビリテーション病棟入院患者54例に対する無作為化比較試験を実施している。介入群はトップダウンアプローチ(ADOCを使用し、作業に根差した実践を提供)を行い、対照群はボトムアップアプローチ(通常訓練)を行った。結果として、BRS、FIM、入院日数、CSQ(顧客満足度アンケート)にて両群間に有意差はみられなかった。しかし、SF-36の一部の項目(日常役割機能、全体的健康感)では介入群において改善がみられた。

続いて生活期においては、介護老人保健施設利用者に対して、上記と類似した介入研究をNagayamaら¹¹⁾が行っている。対象は54例、上記介入研究と同様に介入群(ADOCを使ったトップダウンアプローチ)と対照群(ボトムアップアプローチ)で比較した結果、Barthel Indexにて介入群の改善度合いが高かったと報告している。その他コスト面に対しても、介入群の方が経済的損失を抑える傾向がみられた。

以上の結果から判断すると、ADOCを使った介入研究ではトップダウンアプローチを併用することでの効果が一部示されている。現状では健康関連QOLへの効果を与える可能性を中心に報告されているが、FIMなどの変化は得られにくい傾向がある。今後の更なる研究報告が期待される。

【共著】 高瀬 駿(川崎協同病院 作業療法士)

【解説動画】

【引用文献】 1)Levack WM, et al: Goal setting and strategies to enhance goal pursuit for adults with acquired disability participating in rehabilitation.Cohocrane Database Syst Rev(7): CDO09727, 2015

2)Stacey D,et al:Decision aids for people facing health treatment or screening decisions.Cochrane Consumers and Communication Group,editor.Cochrane Consumers and Communication Group,editor.Cochrane Datebase of Systematic Reviews.John Wiley &Sons,Ltd;19(9):2171-346,2017

3)Tomori K,et al:Utilization of the iPad application :Aid for Decision-making in Occupation Choice.Occup Ther Int 19:88-97,2012

4)長山ら:作業選択意思決定支援ソフト(Aid for Decision-making in Occupation Choice;ADOC)の内容妥当性(Content Validity)の検討, 神奈川作業療法研究 2(1):13-17,2012

5)Tomori K,et al:Examination of a cut-off score to express the meaningful activity of people with dementia using iPad application (ADOC).Disabil Rehabil Assist Technol 10:126-131,2015

6)齋藤ら:作業選択意思決定支援ソフト(ADOC)を用いた認知症クライエントと作業療法士の意思決定の共有と協働.作業療法,32,55-63,2013

7)齋藤ら: 作業選択意思決定支援ソフト(ADOC)を用いた失語症のあるクライエントと作業療法士との意味のある作業の共有,作業療法,31巻1号22-31,2012

8)川口ら:作業選択意思決定支援ソフト(ADOC)の応用的使用により作業の共有と多職種連携が促進された事例,作業療法,38 巻 6 号 741-748,2019

9)Barry MJ,et al:Shared decision making -The pinnacle of patient-centered care.N Engl J Med.2012 :366

10)Tomori K,et al: Comparison of occupation-based and impairment-based occupational therapy for subacute stroke: a randomized controlled feasibility study, Clinical rehabilitation 29 (8), 752-762, 2015

11)Nagayama H,et al:Effectiveness and Cost-Effectiveness of Occupation-Based Occupational Therapy Using the Aid for Decision Making in Occupation Choice (ADOC) for Older Residents: Pilot Cluster Randomized Controlled Trial

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