解決手段を選択するためには、必要条件を立てる必要があります。必要条件とはヒントです。このヒントを基にして、アイデアを出していきます。またアイデアを出す際は、ブレイン・ライティングが有効です。アイデアをひたすら紙に書いていきます。最後に、並べられた解決手段の中から、効果が高く、安全で、コストが小さいものを選択します。そして全体最適を目指します。

今回から、解決手段の選択(Selection)に入ります。ISSUEの中間にあたります。改めて、ISSUEを確認いたします。

・問題の認識(Identification) ・課題の特定(Specification) ・解決手段の選択(Selection) ・解決手段の適応(Utilization) ・改善効果の評価(Evaluation)

必要条件を立てる

では解決手段を!とその前に、まずは必要条件を立てます。必要条件とは、それだけでは十分ではないけれど、満たす必要がある条件です。つまりヒントですね。いきなり「テレビをください!」と言われても、どんなテレビをご提案したら良いのかわかりません。10万円以下で、録画機能がついていて、30インチ以上といった条件(ヒント)を頂けると、「これはいかがでしょうか?」とご要望に沿ったテレビを提案できます。

SatterfieldらはEvidence Based Practice(EBP)のモデルとして、手に入る最良のエビデンス、患者のニーズ、実践者の専門性を含めた資源、環境と政治的な文脈といった4つを考慮して、意思決定することを提唱しています¹⁾。この4つはEBPの必要条件ということになりますね。

ユニバーサルスタジオジャパンをV字回復させた森岡毅氏も、アイデアを出す前に必要条件を設定するそうです²⁾。実際にイベントのアイデアを出す際には、投資額、ターゲット、成果となる売上などを必要条件として立てています。

さらにAcarらが行ったレビューによると、イノベーションといわれるアイデアには、制約(必要条件)があったことを明らかにしています³⁾。またその制約を、資源(資金、時間、人的資源、道具など)、過程(枠組み、ルールなど)、結果(規格、基準、要求など)の3つの要素にまとめました。

ここで、前回のコラムで立てた課題“運動量を増やして体重を減らす”について考えてみましょう。必要条件についてクライエントと話をしてみると、6ヶ月以内に(資源)、改めて運動時間を作ることなく(過程)、体重を10kg減量する(結果)という条件であることがわかりました。このように必要条件を立てることにより、有効なアイデアだけを考えることができるようになります。

解決手段を並べる(アイデア出し)

では必要条件を満たすアイデアを考えていきます。類型置換法によって過去のパターンを探すことも必要です。それでも見つからなければ、新しいアイデアが必要になります。いわゆる、個別性というものです。

ここで、アイデアを出す方法をご紹介します。アイデアを出す方法として有名なものに、ブレイン・ストーミングがあります。しかし、ブレイン・ストーミングではあまりアイデアが出ないことがわかってきました。誰かがアイデアを話している時、周囲の人は黙っています。その時にアイデアを忘れてしまったり、前の人が出したアイデアと比較して、引っ込めたりしてしまうためです。

そこで有効な方法は、ブレイン・ライティングです⁴⁾。つまり書くのです。必要条件を満たすアイデアを紙に書き出す。それをチームで共有する。その上で、さらにアイデアを書き出す。これらを繰り返すことによって、アイデアを忘れることになく、また比較して引っ込めることもなくなります。

では運動量を増やして体重を減らすという課題と、先ほどの必要条件を併せて考えてみてください。エレベーターを使わないようにする、立ったまま仕事をする、腹圧を高めたまま一日を過ごす、足に重りをつけて過ごす、バランスボールに座って仕事をする、1時間に1度階段昇降をする、などのアイデアが出てくると思います。

解決手段を選択する

ここでようやく解決手段を選択します。選択のポイントは、価値の高さです。前々回のコラム(課題の特定①)でもお伝えしましたが、価値とは効果をコストで除したものです。効果が高いと思われ、かつコストが小さいものを選択します。また対人サービスの場合には、安全性が重要になります。安全性は効果の一つとして、大切な要素になります。当たり前に聞こえますが、効果・コスト・安全性のうち、いずれかが見落とされている場合が多いことも事実です。

もう一つのポイントは、全体最適です。全体最適とは、全体のバランスが整っている状態です。一方で、ある一部だけが最適となっていて、全体としてはバランスが整っていない状態を部分最適(全体不適)といいます。体重は減ったけど膝が痛くなった、集中力が続かない。このような状態が部分最適です。体重が減って、集中力も高まり、活動的になる。これが全体最適です。

では先に並べた解決手段のうち、どれを選びますか?今回の場合は、立ったまま仕事をする、エレベーターを使わない、1時間に1度階段昇降をする、という手段が良さそうですね。次回はこれらの解決手段を適応する方法について解説します。

【参考文献】 1) Satterfield JM et al: Toward a Transdisciplinary Model of Evidence-Based Practice. Milbank Q. 87: 368-90. 2009 2) 森岡毅:USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか?KADOKAWA. 2014 3) Acar, O. A et al: Creativity and Innovation Under Constraints: A Cross-Disciplinary Integrative Review. Journal of Management. 45: 96-121. 2019 4) Heslin PA: Better than brainstorming? Potential contextual boundary conditions to brainwriting for idea generation in organizations. Journal of Occupational and Organizational Psychology. 82: 129–145. 2009

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