脳卒中後の上肢運動麻痺に対して電機刺激療法はエビデンスが示されている.しかしそれらの効果は電気の基礎知識や生じる生体反応,各パラメーターを理解し対象者に適した電気刺激を設定することが前提にある.そのため本稿では,電気生理学やパラメーターの理解に焦点を当て解説していく.


キーワード
#電流強度 #周波数 #パルス幅 #化学火傷 #電気抵抗

パラメーターの理解と電流を妨げる抵抗

まずは電気刺激装置に表示されている各パラメーターについて解説していく.ごく短時間に生じる一定の幅を持った電流をパルス波といい,パルス波が生じている時間をパルス幅(μ sec.),電流強度をアンペア(A),1秒間あたりの電気刺激回数(パルス波を送る回数)を周波数(Hz)という.

また電気の伝導を妨げる抵抗のことをオーム(Ω)やインピーダンスといい,人間の身体では皮膚に付着している角質層の厚さや水分含有量により,電気抵抗が異なる.角質層による電気抵抗を低下させるためには,電極を貼り付ける前にアルコール綿で皮膚を拭き角質を取り除くことや,普段から皮膚に対する水分含有量のコンディショニングを行うことで,パラメーターの設定では周波数を増加させることで電気抵抗を低下させることが可能である.

直流と交流とパルス電流

直流とは2つの電極間を一方向性に流れる電流である.直流電流を皮膚に流すとプラス極が体内の塩化物イオンを引き寄せて水素イオンと結合し,プラス極下に塩酸が生じ蓄積することで,酸性の皮膚損傷を引き起こす危険性がある.またマイナス極側ではナトリウムイオンを引き寄せて水酸化物イオンと結合し,マイナス極下に水酸化ナトリウムが生じ蓄積することでアルカリ性の皮膚損傷による炎症や化学火傷を引き起こす危険性がある.

それに対し交流は2極の電極間での電気の流れが交互に逆転する電流である.プラス極は一時的に塩化物イオンを引き寄せるが,極性が入れ替わることで水素イオンとは結合しにくいため,電極直下での化学反応が少ない.¹⁾

我々が使用する電気刺激装置はパルス電流機器と呼ばれ,直流を使用するパルス波を単相パルス波,交流を使用するパルス波を二相性パルス波と呼ぶ.近年の電気刺激装置は二相性パルス波を使用しているものが多く,長時間の使用でも電流直下の化学火傷が生じにくくなっている.

強さ−時間曲線(SD曲線)

神経線維や筋を収縮させるのに必要なパルス幅と電流強度の関係を示したグラフを強さ−時間曲線という.(表1) 電流強度を上げるとはじめに感覚神経(Aβ)の閾値に達し感覚刺激が惹起される.さらに電流強度を上げると運動神経の閾値に達し筋収縮が惹起される.さらに電流強度を上げると,痛覚の感覚神経(Aδ)の閾値に達し鋭い痛みが惹起される.1)また一定の電流強度が担保されている状態でも同様に,パルス幅を広げていくことで感覚神経(Aβ)→運動神経→感覚神経(Aδ)の順番に閾値に達する.これらの特性を理解することで,療法士側は目的に応じて電流を流す神経を選択していくことが可能となる.

周波数の特性

1Hzでは筋が1回単収縮しその後弛緩する.2Hzで刺激すると最初の筋収縮後,筋が弛緩する前に電気で続いて刺激されるため筋収縮が加重され,筋収縮力が大きくなる.このように周波数を上昇させるに伴い強い筋収縮力を発生させることが可能であるが,同一の運動単位を反復して興奮させるため筋疲労も出現しやすくなる特性がある.強縮(目に見える程度の筋収縮)は約20Hzから生じるといわれているため,筋収縮を目的とした電気刺激は20Hz以上で実施することが推奨されている.また50Hz以上100Hzまでの高周波数では筋収縮力には差異がなかったとの報告が多いため,¹⁾強縮を惹起させるには20Hz〜50Hzでパラメーターを設定することが多い.

電気刺激で生じる筋疲労

神経筋電気刺激で生じる筋疲労の観点からも,パラメーターの理解は重要である.Ashraf²⁾らが行った骨格筋の疲労を及ぼす電気刺激のパラメーターに関する研究では,7名の対象者の膝関節伸展筋群に4つのプロトコールで電気刺激を実施した.標準プロトコールは100Hz,450μ/secにて最大トルクの75%を発揮するように設定された.比較プロトコールは,①100Hz,150μ/secの短パルス幅で最大トルクの75%を発揮,②25Hzの低周波,450μ/secで最大トルクの75%を発揮,③100Hz,450μ/secで最大トルクの45%を発揮と設定され,各プロトコールでの筋疲労を計算した.

結果パルス幅や発揮トルクを減少させても筋疲労の変化は認めなかったが,周波数を減少させると標的筋への誘発トルク減少とともに筋疲労の軽減を認めた.また通電時間が長く,かつ休止時間が短いと筋疲労は生じやすいといわれ(オン−オフ時間),オン−オフの割合は1:1〜1:5までが一般的な設定といわれている.

このように対象者に生じる筋疲労を考慮し,周波数やオン−オフ時間を設定すること,筋疲労が出現するタイミングを定期的に評価しながらパラメーターの設定を見直すことが電気刺激療法を進めていく上で重要である.

まとめ 今回は電気の基礎知識や各パラメーターについて解説した.化学火傷等のリスクを回避しながら電気刺激の効能を最大限発揮するためには,用語やパラメーター,生じる生体反応を理解して正しく使用する力を身につけることが望まれる.

【共著】 山田順也(社会医療法人協和会 加納総合病院、作業療法士)

【引用文献】 1.「エビデンスから身につける物理療法」(庄本康治/編)P172-188,羊土社,2017 2.Ashraf S it al:Effects of electrical stimulation parameters on fitigue in skeletal muscle:Journal of orthopaedic & sports physical therapy 39(9):684-692,2009.

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