問題解決を楽しむための技法 -課題の特定②(類型置換法と機能分析法)-

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梅木駿太 医療法人鶴友会 法人事務長

課題を特定するための具体的な方法は、類型置換法と機能分析法です。類型置換法は過去の事例から類似のパターンを見つけること。機能分析法は現状から機能を抽出することです。これらによって、課題を見つけていきます。さらに見つけた課題のうち、着手する課題を選択します。その時のポイントは実現可能性、つまり答えが出せるということです。答えが出せる、具体的な課題を立てましょう。

前回のコラム「課題の特定①-MECEと因果のパイモデル-」にて、課題を特定するための前提となる考え方をお伝えしました。MECEと因果のパイモデルです。MECEは「漏れなく、ダブりなく」という意味がありました。因果のパイモデルは、原因は一つではなく、いくつかの要素が重なることによってある状況が起こっているという考え方です。その上で今回は、具体的な2つの手法をご紹介した後、課題を立てます。

類型置換法

類型置換法とは、過去に得られた経験や知見をパターン化し、類似のパターンに当てはめていくことにより課題を見出そうとする方法です。1990年以降、医学領域にエビデンスというパラダイムが訪れました。その結果、医学のみならず、あらゆる領域で人の集団を対象とした科学的な手法(疫学)に基づいて経験や知見が蓄積されています。

またテクノロジーの進歩によって、膨大な情報にアクセスできるようになりました。これらによって、類型置換法は現在、課題を特定するための強力な手法となっています。

この方法は、エビデンスを使う¹⁾という態度になります。ちなみに、エビデンスには個人の経験も含まれます(専門家の意見)。そのため経験豊富な人が、“この問題はきっとあのパターンだな”、と直感的に見抜くこともこの方法と言えます。

類型置換法は言い換えると、時間を過去に戻す作業です。時間を過去に戻す言葉は、「なぜ?」です。犯人探しとも言えるでしょう。これまで得られたパターン(エビデンス)と、現在の状態を照らし合わせることにより、原因(犯人)を探すという作業になります。

体重を例にとりましょう。現在の体重は70kg。目標は60kgです。そこで、体重が増加する人の特徴について調べます。食事量が多い、運動量が少ない、ストレスを抱えているなどのパターンが得られました。この情報と現在の状況を照らし合わせて、食事量は問題ないな、しかし運動量が少ない。だから運動量を増やすことが課題になりそうだ。というようにして進めていきます。

機能分析法

機能分析法とは、果たすべき本質的な機能を出発点にして、課題を顕在化させようとする方法です。対象から機能を抽出することが特徴です。機能は初めから与えられていない場合が多いため、現在の状態から導き出します。これにより、今まで気づかなかった課題が見えてきます。機能を考える時の問いは、「何のため」「誰のため」です。

坂元大海氏ののコラム「「問題解決力」より大切な「問題発見力」」にも書かれていたリフレーミングの事例で、エレベーターの待ち時間を例にとってみましょう。あなたはエレベーターの待ち時間が長いという問題に対して、どのように考えるでしょうか。待ち時間を短くする、または待ち時間が苦にならないという状態が理想(ゴール)になりますね。ここで類型置換法を用いると、待ち時間が長くなる原因を分析することになります。

そこで機能分析法を用いて、現在の状態から機能を抽出します。待ち時間が長いのは何のため?待っている時間は何のため?そうすると、この待ち時間を有効活用するという課題が生まれます。ここから、身だしなみを整える、運動する、勉強するなどの活用法が考えられます。そのため、エレベーターの横に鏡を置く、運動法を掲示する、経済情報を掲示する、階段へ誘導するといった解決策に繋がるわけですね。

課題を立てる

これら2つの方法により、問題解決に向けた課題(具体的な手立て)がいくつか出てきたと思います。ではその中からどれを選びますか。あれもこれもという態度では、資源が無駄になります。ここでのポイントは実現可能性、つまり答えが出せるほど具体性がある²⁾ということです。

類型置換法や機能分析法を用いて、体重を減らす、筋力をつける、という課題が出てきました。しかしこれだけでは、具体的とは言えません。どうやって体重を減らすの?どこの筋力をつけるの?となります。類型置換法で例を挙げたように、“運動量を増やして体重を減らす”という形なら具体的ですね。このようにして課題を立てていきます。

ここまで丁寧に時間をかけてきました。じれったく思われた方もいるかもしれません。しかし問題解決の本質は、問題の発見と課題の特定にあります。これらが問題解決の8割を占めると私は思っています。まずは、ここまでお読み頂きありがとうございました。次回から解決手段の選択へと進みます。

【引用文献】 1) Nakayama T: Evidence-based Healthcare and Health Informatics: Derivations and Extension of Epidemiology. J Epidemiol. 16(3): 93-100. 2006 2) リチャード・P・ルメルト:良い戦略、悪い戦略.日本経済新聞出版.2012

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