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医療・スポーツ領域における文献の活用方法 ~正確に論文を読むコツとは?~

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谷口 隆憲 福岡国際医療福祉大学 助教

前回は基礎的な論文の検索方法と論文の読み方についてお伝えしました。今回は、より効率的に論文を検索し、より正確に論文を読むためのポイントをお伝えしたいと思います。

目次

    より効率的に論文を検索するためには ~PICO/PECOを整理する~

    皆さんは、医療現場やスポーツ現場での疑問(臨床的疑問)を解決するために論文を検索することが多いかと思います。
    より効率的に論文を検索するためには臨床的疑問を具体化する必要があり、その際によく用いられるモデルが「PICO/PECO」です。

    「PICO/PECO」とは、Patient(対象)・Intervention(介入)/Exposure(暴露)・Comparison(対照)・Outcome(結果)の頭文字をとったもので、臨床的疑問を定式化する際にとても有効なモデルです。

    例えば、臨床的疑問が「変形性膝関節症患者に対して有酸素運動を実施すると疼痛は軽減するのか?」の場合、「PICO/PECO」は

    ・P:変形性膝関節症患者
    ・I:有酸素運動
    ・C:その他の運動療法(筋力増強運動など)
    ・O:視覚的評価スケール(Visual Analog Scale)
    と定式化することができます。

    さらに、「PICO/PECO」で設定したキーワードを論文検索の検索語にすることで、皆さんの目的に応じた論文を検索しやすくなります。

    このように、臨床的疑問を「PICO/PECO」に基づいて整理することで、より効率的に論文を検索することができます。

    早速、ご自身の臨床的疑問を「PICO/PECO」を用いて定式化して、論文を検索してみましょう。

    より正確に論文を読むためには ~バイアスに注意する~

    より正確に論文を読むためには研究の「バイアス(bias)」に注意する必要があります。
    「バイアス」とは、明らかにしたい真の結果を誤らせる要因のことであり、日本語では「偏り」や「誤差」と表現されます。

    実際にはバイアスのない研究はありませんし、完全にバイアスを取り除くことは不可能と言われていますが、皆さんが論文を読む際には、極力バイアスの少ない論文を選択し、読むことが重要となります。論文を読む際に注意すべきバイアスを以下に記載します。

    選択バイアス:

    選択バイアスとは、対象者の選び方で生じるバイアスのことで、多くの場合、論文中の対象者や属性に記載されています。
    選択バイアスは、対象者の集め方、群分けの方法、研究参加後の脱落などの場面で生じます。

    例えば、慢性疼痛患者に対する運動療法の効果を検証するために、慢性疼痛患者から対象者を募り、「(運動療法を実施する)介入群」と「(他の治療法を実施する)対照群」の2群に分け、疼痛の程度を比較したとします。

    その結果、「介入群」が「対照群」よりも有意に改善していたとしても、介入前の状態(疼痛の程度)が2群間で異なっていれば、介入後の状態(疼痛の程度)にも影響するため、運動療法の効果を適切に判断することができません。

    よって運動療法の効果を適切に判断するためには、2群間において介入前の状態(疼痛の程度)に差がないことが条件となります。

    情報バイアス:

    情報バイアスとは、観察方法や計測方法など、データを得る際に生じるバイアスのことで、多くの場合、論文中の計測方法や介入方法に記載されています。

    情報バイアスは、計測方法の再現性が低く、対象者によって計測方法が統一されていなかったり、計測者が研究の方向性を把握していることで、計測結果が偏重したりすることで生じます。

    例えば、頸部痛の有無と頸椎前弯との関係を検証する場合、計測者が「頸部痛がある群は頸椎前弯が減少している」と思い込んで計測すると、頸椎前弯の計測値は頸部痛がある群で低値となる可能性が高くなります。

    この場合、研究の方向性を知らない者が計測したり、頸部痛の有無が分からない状態で計測するなどの工夫が必要となります。

    交絡バイアス:

    交絡バイアスとは、原因と結果が関連をもつとき、その背後に存在する隠れた要因を交絡因子といい、交絡因子が存在するバイアスのことをいいます。

    多くの研究では、原因と結果の因果関係を明らかにすることを目的としますが、その際に、原因でも結果でもない第3の要因によって、検討している因果関係が影響を受けることがあります。

    例えば、「下肢筋力が強ければ歩行速度は速いのか?」という研究では、下肢筋力を原因、歩行速度を結果として、両者の因果関係を検討します。しかし、歩行速度は若年者が高齢者よりも速く、下肢筋力以外にも年齢の影響を受ける可能性があります。

    この場合、年齢は下肢筋力と関連し、歩行速度に影響を与えるため交絡因子となります。よって、下肢筋力と歩行速度の関係を検討する際には、交絡因子である年齢が十分考慮されているかを確認する必要があります。

    他にも様々なバイアスが存在しますが、まずは、「選択バイアス」、「情報バイアス」、「交絡バイアス」が十分に考慮された研究なのか、意識して論文を読んでみてください。残念ながら、すべてのバイアスを瞬時に見つける方法はないため、日頃からバイアスに注意して論文を読む習慣を身に付けましょう。

    【参照】
    さらに正確に論文を読み込むためには、様々なガイドラインを参考にするのも有用です。
    有名なガイドラインを以下に記載します。

    PRISMA声明:システマティックレビュー
    CONSORT声明:無作為化比較試験
    STROBE声明:観察研究
    CARE声明:症例報告

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