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急性期におけるConstraint-induced movement therapy運用の実際(1)

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竹林崇 大阪府立大学 教授

本コラムでは和文を中心に,急性期からConstraint-induced movement therapy(CI療法)をどのように実際の臨床場面に応用していくのかについて紹介する.
【キーワード】
#脳卒中,#上肢麻痺,#CI療法,#急性期,#自主練習

目次

    本邦でもCI療法は早期から取り組める

    筆者が急性期・亜急性期における国内のCI療法に関する報告で最初に目にしたのは,2016年にOTジャーナルに掲載された竹内ら¹⁾の報告である.

    彼らは,中等度から重度上肢麻痺を呈した亜急性期脳卒中患者5名(発症21日~64日)に対して,CI療法をベースにした集中的課題指向型訓練に,電気刺激療法と装具療法を併用した複合的な上肢集中練習を1日2時間(課題指向型訓練50分+transfer package 10分の1時間は療法士と,1時間は自主練習),週6~7日,4週間実施した.

    評価項目には,上肢機能を測るFugl-Meyer Assessment(FMA),麻痺手の使用頻度を測るMotor Activity Logのamount of use(MAL-A),麻痺手の使用の質を測るquality of life(MAL-Q)を用いた.

    結果,5名ともにFMAおよびMAL-A,MAL-Qの有意な改善と効果を示し,介入期間中に重篤な有害事象を認めなかったと報告した.

    実施時間に留意しながら,電気刺激や装具療法などの補助的な手段を用いることで,中等度から重度の対象者においても亜急性期からCI療法に準じた集中練習が安全に導入でき,一定の成果をあげられることを我々に伝えてくれた貴重な報告である.

    2017年には2つの症例報告が出された.一つは木村ら²⁾の,分枝粥種病(Branch Atheromatous Dedease:BAD)を呈した症例に対する急性期からの課題指向型アプローチである.

    入院後2日の間に麻痺の悪化を認めた中等度の上肢麻痺を呈したBAD症例に対し,急性期(5病日)から対象者の意味のある作業を用いた課題指向型アプローチを1日2時間以内(経過で練習時間を増加)で提供した結果,FMAは臨床上意味のある最小変化を超える改善を認めた.

    もう一つは,山本ら³⁾のmodified CI療法の試みである.急性期脳卒中者2名(発症6日と8日)に対し,1日2時間のmodified CI療法(1時間は療法士と,1時間は自主練習)を連続10日間実施し,1年後にFMAとMAL-A・MAL-Qの再評価を実施した.

    結果,短期的変化は,症例1のMAL-Q,症例2のMAL-AとMAL-Qで臨床的に意味のある改善を示し,長期的変化は,全評価で大きな改善を示した.

    長期的改善は急性期以降の影響も大きいが,急性期からのCI療法により,早期から麻痺手を使用することで学習性不使用を防ぎ,長期的な改善に影響を及ぼした可能性を示唆した.

    急性期の自主練習型のCI療法

    上記に紹介した報告は,当時初学者であった筆者にはとても読みやすく,また同じ環境である自身の病院でも十分に応用できると背中を押してくれるものであった.前回までのコラムに紹介した海外の先行研究と,本邦における上記の報告を参考に,未熟ではあるが我々なりに取り組んだ臨床実践を紹介する.

    BAD様の経過をたどり中等度の上肢麻痺を呈した脳卒中患者1例に対し,第5病日よりCI療法と電気刺激療法を併用した複合的な上肢集中練習を1日2時間(1時間は療法士と課題指向型練習+transfer package,1時間は自主練習),週6日,約4週間実施した.自宅退院前には麻痺手の使用促進のために外泊を実施してもらった.

    さらに退院後,長期的効果を調査するため1年間の経過を追った.結果,介入直後および介入から1年後にかけて,FMAとMAL-AおよびMAL-Qで臨床上意味のある改善を認めた⁴⁾.

    ただし,一症例の結果に過ぎないことから,次に複数症例での検討も行った.急性期脳卒中患者5名(発症4日~8日)に対し,実生活での非麻痺手の抑制を行わず,補助的手段(電気刺激療法と装具療法(図1))を併用した上肢集中練習を1日2時間(1時間は療法士と課題指向型練習+transfer package,1時間は自主練習),平均3週間実施した.

    全例退院前には外出・外泊を行い麻痺手のモニタリングを促進した.結果,集中練習実施後の退院時にはFMA,MAL-A,MAL-Qのすべてにおいて臨床上意味のある最小変化を超える改善を認めた上に,介入期間中に有害事象を認めなかった⁵⁾.

    さらに現在は,急性期での集中練習の長期経過を調査しており,全症例が退院後も1年間の⻑期にわたり,FMAやMALが維持または向上していた⁶⁾.

    急性期においても「適応患者」に対しては,上肢集中練習の実施が⻑期的にも,上肢機能と使用行動に良好な変化を与える可能性を示唆している.



    図1)上肢集中練習における補助的手段(電気刺激療法・装具療法)の併用
    小渕浩平,他:急性期脳卒中後の上肢麻痺に対する複合的な上肢集中練習の試み―ケースシリーズ―.作業療法38(2):197-204,2019より引用.

    しかし,この「適応患者」というのが,筆者の取り組み上,セルフケアが概ね自立しており,上肢麻痺の程度が軽度から中等度で,自主練習の管理が可能な,在宅復帰を目指せる症例,とかなり限られてしまっている(もちろん重度例に対しても試行錯誤してアプローチはしているが).

    さらに急性期の介入効果を実証するためには,自然回復の影響を排除するため対照群をおいたランダム化比較試験による検証が必要だが,倫理上難しい部分もある.

    それと同時に,中等度から重度例に対しては療法士と対象者のみではどうしても十分な練習時間がとれず,また回復期転院後の経過を十分に追うこともできず,歯痒い思いをすることもあった.

    このように,急性期では様々な要因が重なり,脳卒中後の麻痺手に対する十分なアプローチが困難な場合もある.現在,より効率的な介入フレームを構築することが早急の課題となっている.

    このコラムの続きは「急性期におけるConstraint-induced movement therapy運用の実際(2)」へ

    【共著者】
    小渕浩平(JA長野厚生連 長野松代総合病院 作業療法士)

    【引用文献】
    1)竹内健太,他:中等度から重度上肢麻痺を呈した亜急性期脳卒中患者に対する複合的な上肢集中練習の試み―探索的・後方視的ケースシリーズ―.OTジャーナル50(10):1155-1162,2016.
    2)木村由貴,他:機能予後が良好であった分子粥種病(BAD)を呈した症例に対する急性期における課題指向型アプローチの経過.作業療法36(4):423-429,2017.
    3)山本勝仁,他:脳卒中後急性期上肢麻痺に対する2時間のmodified CI療法の試み.OTジャーナル51(8):528-532,2017.
    4)小渕浩平,他:中等度上肢麻痺を呈した急性期脳卒中患者に対する 複合的な上肢集中練習の長期経過─症例報告─.作業療法38(2):222-229,2019.
    5)小渕浩平,他:急性期脳卒中後の上肢麻痺に対する複合的な上肢集中練習の試み―ケースシリーズ―.作業療法38(2):197-204,2019.
    6)小渕浩平,他:急性期脳卒中後の上肢麻痺に対する複合的な上肢集中練習の長期経過―ケースシリーズ―.作業療法,投稿中.

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