急性期におけるConstraint-induced movement therapyのエビデンス

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竹林崇 大阪府立大学 教授

Constraint-induced movement therapy (CI療法)は日米のガイドラインにおいて強く推奨される,エビデンスの確立された上肢麻痺に対するアプローチの一つである.しかし,急性期においては一概に効果ありとはいえず,否定的な報告もみられていた.だが近年では,実施時間に配慮したCI療法が急性期では効力を発揮しており,海外での報告は増えている.本コラムでは,CI療法のガイドラインでの位置付けと,急性期でのエビデンスについて解説する.
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CI療法の日米ガイドラインでの位置付け

Constraint-induced movement therapy(CI療法)は,脳卒中後の上肢麻痺の運動機能を向上させるとともに,実生活における麻痺手の使用行動の改善を目的としたアプローチである.

本邦では脳卒中治療ガイドラインにおいてグレードAと推奨され¹⁾,米国のAmerican Heart Association/American Stroke Association(AHA)によるガイドラインにおいてもエビデンスレベルA,ClassⅡaとされており,実施することが理にかなっている治療として位置付けられている²⁾.

しかし,脳卒中治療ガイドライン2015の内容をよくみると,慢性期では軽度麻痺例に機能改善が得られるが(レベル1~2),急性期では根拠に乏しい(レベル2)と記されている.

それでは,以下に急性期のCI療法のエビデンスについて検討する.

CI療法の急性期におけるエビデンス

回復期以降のエビデンスは確立されているCI療法だが,発症から14日以内といった急性期ではその見解が異なっていた.

2000年にDromerickら⁶⁾は,発症後14日以内の脳卒中患者20名において,同じ時間実施したCI療法と伝統的な作業療法の効果を比較検討した結果,CI療法群は作業療法群に比べて上肢機能が有意に改善したと報告した.

追随するように,2005年にはPageら⁷⁾が,発症14日未満の10名の上肢麻痺患者に対し,修正CI療法と従来のリハビリテーションを無作為化対照パイロット試験にて検討した結果,修正CI療法群では上肢機能と麻痺手の使用行動で有意な改善を認めたと報告した.

2007年にはBoakeら⁸⁾も,発症14日以内の23名の上肢麻痺患者において,1日3時間の練習を3か月後までフォローできたCI療法群9名と対象群7名をランダム化比較試験にて比較検討した結果,上肢機能と上肢の使用行動についてCI療法群にて有意な改善を認めたと報告した.

急性期においても一定の結果を示していたところで,Dromerickら⁹⁾は2009年にVery Early Constraint-Induced Movement during Stroke Rehabilitation(VECTORS)と命名したランダム化比較試験を報告した.

VECTORSでは,発症後2週間以内の脳卒中患者を対象に,高強度のCI療法(1日3時間の介入と起床時間の90%の非麻痺手の拘束),低負荷のCI療法(1日2時間の介入と1日6時間の非麻痺手の拘束),伝統的な作業療法(1日1時間のADL練習と1時間の両手動作練習)の3群を比較した.

この結果,介入から90日後の上肢機能において,低負荷のCI療法は伝統的な作業療法と同程度の結果であったが,高強度のCI療法においては,伝統的な作業療法に比べ,上肢機能の有意な低下を認めた.

強度の高い練習による細胞熱の上昇が梗塞巣を拡大させる可能性を指摘し,この報告を機に,急性期からの高強度な練習への批判が強まることとなった.

実施時間に配慮した急性期のCI療法

急性期の高強度の訓練に否定的な意見もあった中,近年では実施時間に留意したCI療法がエビデンスを集めている.

El-Helowら⁷⁾は,14日以内の急性期において, modified CI療法(1日2時間の練習と実生活における5時間の非麻痺手の拘束)を実施した30名と,同時間の通常のリハビリテーションを実施した30名においてランダム化比較試験を行った.

結果は,modified CI療法を実施した群は通常のリハビリテーションを実施した群に対して,麻痺側の上肢機能の有意な改善と,上肢に関連する運動誘発電位の有意な向上を認めた.

さらに,Nijlandら⁸⁾も急性期・ 亜急性期を対象にCI療法を実施した5本のランダム化比較試験をレビューし,2時間前後のCI療法であれば,急性期においても通常訓練より有益である可能性を示した.

これらの報告より,現在急性期におけるCI療法については,実施時間に配慮する必要があり,上肢練習は「1日2時間以内で」という点が注意すべき内容として挙げられている.ただ本邦においては,自然回復の影響が大きい急性期のアプローチに関する報告はまだ多くはないのが現状である.

【共著】 小渕浩平 (JA長野厚生連 長野松代総合病院 作業療法士)

【文献】 1) 日本脳卒中学会脳卒中ガイドライン委員会.脳卒中治療ガイドライン2015.東京:協和企画:2015.p292-294. 2) Winstein CJ, et al:Guidelines for Adult Stroke Rehabilitation and Recovery:A Professionals From the American Heart Association/American Stroke Association.Stroke 47(6):e98-e169,2016. 3) Dromerick AW et al: Dose the application of constraint-induced movement therapy during acute rehabilitation reduce arm impairment after ischemic stroke. Stroke 82: 2984-2988,2000. 4) Page SJ, et al: Modified constraint-induced therapy in acute stroke: A randomized controlled pilot study. Neurorehabil Neural Repair 19(1):27-32, 2005. 5) Boake C, et al: Constraint-induced movement therapy during early stroke rehabilitation. Neurorehabil Neural Repair 20: 1-12, 2007. 6) Dromerick AW, et al: Very Early Constraint-Induced Movement during Stroke Rehabilitation (VECTORS):A single-center RCT. Neurology 73(3):195201, 2009. 7) El-Helow MR, et al: Efficacy of modified constraint induced movement therapy in acute stroke. Eur J Phys Rehabil Med 51(4):371-379, 2015. 8) Nijland R, et al:Constraint-induced movement therapy for the upper paretic limb in acute or sub-acute stroke:A systematic review. Int J Stroke 6(5):425-433, 2011.

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