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急性期におけるConstraint-induced movement therapyの回復メカニズム

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竹林崇 大阪府立大学 教授

脳卒中リハビリテーションを進めるうえで脳の可塑性に関する理解は欠かせない.本コラムでは,急性期におけるconstrained-induced movement therapy(CI療法)の基礎研究と回復メカニズムを紹介するとともに,なぜ急性期から麻痺手を使用することが重要なのかについて解説する.

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#脳卒中,#上肢麻痺,#CI療法,#急性期,#メカニズム

目次

    急性期のCI療法に関する基礎研究

    まず,最初に急性期のCI療法に関する基礎研究の知見を調査する.
    脳卒中ラットを対象にした2013年のZhaoら¹⁾の研究では,CI療法実施群は,脳卒中後なにも実施しなかった群と比較して,麻痺肢の有意な改善に加え,脊髄レベルにおける非損傷側の皮質脊髄路からの,軸索の延長効果を優位に認めたと報告している(図はStrokeを参照).

    また,成熟ラットによる研究からCI療法が損傷部位の神経新生にも影響を与える可能性も検討した²⁾.
    2019年にはZhaiら³⁾が,同様にラットによる研究において脳虚血7日後の早期から麻痺肢の強制使用を促すと,再生された神経細胞が増加し,血管新生と神経再生を促進したと報告している.

    さらにXi-Huaら⁴⁾もラットを用いて,発症当日から麻痺肢を強制使用する群と発症14日目から麻痺肢を強制使用する群を比較した結果,両群に神経栄養因子と神経成長因子が増加し,早期からのCI療法は細胞熱の上昇や興奮毒性により有害であるという過去の報告と矛盾したと述べ,早期からの集中練習は神経可塑性を誘発し機能回復へ導く可能性があると報告した.

    最後に,筆者らは,上記の研究において,発症後数日にて実験を行なっていることから「急性期」と判断している.

    しかしながら,齧歯類の寿命は人間よりもはるかに短く,発症後数日と入った時期が人間で言う急性期と同等かという疑問は残る.これらの疑問を理解した上で,上記の知見を得ることが重要である.

    急性期CI療法のメカニズム

    急性期におけるCI療法のメカニズムの根底となる研究の一つとして,経頭蓋磁気刺激を用いた研究がある.

    これは,CI療法の実施前後において,大脳皮質興奮性や皮質脊髄路の伝導異常,さらに脳梁伝導などを評価し,急性期の上肢集中練習が神経可塑性に及ぼす影響について調査した研究である.

    2015年にEI-Helowら⁵⁾が,急性期脳卒中患者60名を対象に CI療法の効果を検証するために,CI療法を実施した群と,通常のリハビリテーションを実施した対象群に対し,ランダム化比較試験によって検証した報告がある.

    この研究では,両群に同じ時間それぞれのアプローチを行い,運動誘発電位(motor evoked potential:MEP,大脳皮質興奮性の評価)と中枢運動伝導時間(central motor conduction time:CMCT,皮質脊髄路の評価)を測定した.

    結果,急性期からCI療法を実施した群は,通常のリハビリテーションを実施した群に比べて,MEPの振幅の増加とCMCTの短縮を認めた.

    この結果は,CI療法を実施した群は,通常のリハビリテーションを実施した群に比べて,有意な一次運動野の興奮性を認めたことを示している.

    2017年にはYuら⁶⁾が,急性期脳梗塞患者26名を対象に,CI療法を行なった群と神経筋促通術を併用した理学療法・作業療法を行なった対照群に対し,ランダム化比較試験を用いて,CI療法の効果を検証している.

    この研究でも上記の報告と同様にMEPを計測した結果,CI療法を行った群は実施直後から対照群に比べて,MEPの振幅の増加を認めた.

    さらに本報告では,Ipsilateral silent period(iSP,脳梁伝導評価)も測定し,CI療法後にiSPの大幅な減少を認めた.

    この結果は,CI療法群が対照群に比べ,損傷側の運動野の有意な興奮性の増大と,非損傷側からの抑制機構が低下を示しており,これらが上肢機能の改善を反映したと述べている.

    本研究では,急性期における回復メカニズムには,一次運動野の興奮性のみならず,生活期におけるCI療法の実施で認められるような半球間抑制の是正が生じる可能性を示唆している.

    急性期のCI療法の基礎研究や回復メカニズムをふまえると,やはり急性期から「麻痺手の使用」の促進は重要と推察される.

    急性期では,脳の可塑性に関与できる可能性は大きく,痙縮や拘縮,末梢運動器の筋委縮・低下などの廃用的な要素の予防に加え,神経可塑性に働きかける手段を模索し,早期から上肢麻痺に対するアプローチを積み重ねることは,回復期以降にも大きな影響を及ぼす可能性があると理解できる.

    【解説動画】
    本コラムの解説動画です。コラムと併せて視聴いただくことで、理解を深める一助にされてください。

    【共著】
    小渕浩平(JA長野厚生連 長野松代総合病院 作業療法士)

    【引用文献】
    1) Zhao S, et al: Constraint-induced movement therapy overcomes the intrinsic axonal growth-inhibitory signals in stroke rats. Stroke 44: 1698-1705,2013.
    2) Zhao S, et al: Tncreased neurogenesis contributes to the promoted behavioral recovery by constraint-induced movement therapy after stroke in adult rats.CNS Neurosci Ther 19: 194-196,2013.
    3) Zhi-Yong Zhai, et al: Constraint-induced movement therapy enhances angiogenesis and neurogenesis after cerebral ischemia/reperfusion. Neural Regen Res 14: 1743-1754,2019.
    4) Xi-Hua Liu, et al: Early constraint-induced movement therapy affects behavior and neuronal plasticity in ischemia-injured rat brains. Neural Regen Res 14: 775-782,2019.
    5) El-Helow MR, et al: Efficacy of modified constraint induced movement therapy in acute stroke. Eur J Phys Rehabil Med 51(4):371-379, 2015.
    6) Changshen Yu, et al: The Effects of Modified Constraint-Induced Movement Therapy in Acute Subcortical Cerebral Infarction. Front Hum Neurosci 11: 265. doi: 10.3389/fnhum.2017.00265. eCollection 2017.

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