療法士の皆さまは“ファンクショナルトレーニング”という言葉を聞いたことがありますか?これはトレーナーの世界では非常に有名なトレーニングの概念であり、療法士の知識や技術に加わることで臨床の幅を大きく広げるものです!そこで今回は、ファンクショナルトレーニングの概要と5原則を解説します。

はじめに

今回「リハビリからスポーツ現場まで役立つファンクショナルトレーニングの考え方」をテーマに、コラムを連載させていただきます。ファンクショナルトレーニングを考えるうえで必要な「Joint by joint」「姿勢コントロール」の考えに、徒手療法のエッセンスも加えたものを紹介していきます。

今回は「ファンクショナルトレーニングの概要と5原則」について解説します。

ファンクショナルトレーニングとは?

アメリカのストレングスコーチであるMichael Boyleは「ファンクショナルトレーニングは‘動きを鍛えるトレーニング’である」と述べており、ファンクショナルトレーニングの専門家であるGary Grayらは「単関節運動は機能的とは言えず、多くの筋肉を動員する多関節トレーニングは機能的である」としています¹⁾。

そしてFunctional Movement Scale(FMS)を考案したGray Cookは「体幹の強さを得たとしても、スポーツに必要な速度、パワー、および協調性に反映されていなければファンクショナルトレーニングが必要である。スポーツで遭遇する動きや姿勢を想定し、それらに必要な動きの速度と効率を向上させていくようにトレーニングを構築する²⁾」述べています。

これらより、ファンクショナルトレーニングとは『動きの場面の改善・強化を目的とし、全身の動きを伴った運動』と捉えることが出来ます。

これらではスポーツ場合を想定していますが、高齢者のリハビリテーションにおいても応用が可能です。 例えば、療法士はふらつきがあってうまく歩くことが出来ない患者様に対し、様々な運動を処方します。

そこで、実際の場面に似せた運動を行うことがありますが、これはファンクショナルトレーニングに該当すると個人的には考えます(ふらつきが生じる場面が荷重応答期~立脚中期になるのであれば、その場面に似せた運動の負荷量を調整して実施するという風になります:図1)。

ファンクショナルトレーニングの5原則

ファンクショナルトレーニングには以下に挙げる5原則があります。 1.重力を利用する 人間は常に重力の下で活動しています。ファンクショナルトレーニングでは重力に抵抗した運動(抗重力運動)を積極的に取り入れていきます。

2.分離と協同 身体が機能的に動くために、それぞれの関節は「動き:Mobility」と「固定(安定):Stability」の役割に分けられ、運動の際にはそれぞれの役割を共同して実行することが重要です。

この関節ごとに役割が分けられているという考え方を「Joint by joint」といいます。詳しくは今後別のコラムで紹介させていただきます。

3.Kinetic chain(運動連鎖) ここで言うKinetic chain(運動連鎖)は骨の運動連鎖のみならず、神経生理学的なメカニズム、筋肉の同時収縮などによって機能的な動きが出来ると考えます。四肢体幹の全身運動が推奨されます。

4.3面運動(図2) 3面は「矢状面」「前額面」「水平面」のことで、前後・左右・ねじり(回旋)の動きのことを指します。 スポーツ動作・日常生活動作はいずれもこの動きを複合したものになりますので、運動の際は常に3面運動を考慮する必要があります。個人的には特に「回旋」動きを意識的に加えていく必要があると感じています。

5.力の吸収と力の発揮(図3) 日常生活においても該当することですが、特にスポーツ動作では力を発揮する前に力を吸収する動きを見かけることがあります。

例えば、ジャンプ動作では大きく飛ぶ前に一度体を前傾して下肢を屈曲する動作を取りますが、この動作は体を前傾することによりジャンプで使用する筋肉を伸張し、そこからバネのように筋収縮することによって短縮して強い筋発揮を可能とします(伸張・短縮サイクル:Stretch Shortnig cycle)。

運動の中でもこの力の吸収・力の発揮を考慮していく必要があります。

ファンクショナルトレーニングの流れ

ファンクショナルトレーニングのトレーニングは6つの手順を踏みます。

1.アセスメント(評価・分析)・姿勢・動作の修正(図4) 機能的な動きを見つけるために、まずは姿勢や動作のパターンを理解し、より良い方向へ修正していくことが必要です。

リハビリ場面では立位姿勢や歩行動作、スポーツのトレーニングであればオーバーヘッドスクワット、フォワードランジ、トランクローテーションなどでチェックを行います。

2.アクティブストレッチ(ダイナミックストレッチ)  運動を行う前に、動的なストレッチを行い関節可動域の拡大を図ります。

3.コアトレーニング 姿勢コントロールを適切に行えるようにするために、体幹の筋肉に刺激を入れていきます。セルフで行えるのであればそれが一番ですが、1対1で行っている場面であればハンドリングなどで評価・介入することが望ましいと考えます。

4.バランストレーニング 不安定な場面でも、適切に姿勢・運動をコントロール出来るようにするために支持基底面が少ない状態で運動を行います。

5.ストレングストレーニング 実際の動きに近い運動様式での自重で行えるトレーニングを実施します。具体例として立ち上がり・階段昇降練習やスクワット・プッシュアップなどが挙げられます。

6.静的ストレッチ 運動後のストレッチで、筋肉が固くならないようにし、可動域を維持・向上させます。

ファンクショナルトレーニングの考え方は療法士のアプローチにも応用出来る

ここまでの流れをみていると、リハビリテーションにも応用出来そうな部分が多いと感じる方もいるのではないでしょうか? 運動療法に取り入れることで、レパートリーが増加し、動作分析の視点が増えてくるかと思います。

実際、私は様々な対象の方にもこのような流れで介入・アプローチを行っています。

次回は「共同と分離」の中で考慮する必要のある【Joint by joint】について解説していきます。最後までお読みいただきありがとうございました。

【参考文献】 1)中村千秋編, ファンクショナルトレーニング 機能向上と障害予防のためのパフォーマンストレーニング, 2010 2)Gray cook etc, Functional Training for the Torso, Strength and Conditioning, Vol19, Issue2, 1997

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