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本稿ではEvidence Based Medicine(EBM)の実践に関する話を展開する.EBMの実践にあたってはマクマスター大学のEBMワーキンググループが以下の5つのstepに従う必要があると示しており,それらの内容について解説する.

目次

    EBMの5STEP

    前回のコラム「EBM(evidenced based medicine)とは ~歴史と定義からリハ領域での活用を考える~」ではEvidenced Based Medicine (EBM)に関する歴史や定義を解説した.

    本稿ではEBMの実践に関して話を展開していく.
    EBMの実践にあたってはマクマスター大学のEBMワーキンググループが以下の5つのstepに従う必要があると示している.

    ■step1:対象者に対する疑問・問題の定式化
    ■step2:必要な情報源を検索する
    ■step3:情報の批判的評価
    ■step4:情報の対象者への適用
    ■step5:step1~4の再評価

    といった工程であり,以下でそれぞれ解説していく.

    Step1:対象者に対する疑問・問題の定式化

    まず,目の前の対象者に対する疑問点や問題点を抽出し,整理していく.その際にPICO/PECOを使用することでstep2の情報収集の際に役立つ.
    なお,PICO/PECOの記載内容に関して表1に記載する.対象者に対してPICO/PECOを用いることで,現状の問題の把握または問題に対する介入方法に関する事柄を言語化することができる.

    言語化するメリットとして療法士自身の考えを整理することができ,また対象者に対して今直面している問題に対する介入方法やその介入がもたらす効果を説明することができるため,EBMを実践するにあたって非常に有用である.

    Step2:必要な情報源の検索

    具体的に対象者に対する問題をPICO/PECOで整理した後は情報収集を行っていく.
    昨今インターネットで検索すれば誰もが簡単に情報を得ることができる世の中である.そのため,情報の信憑性に関しては吟味しなければ誤った情報を対象者に伝えることになりかねない.

    プログや口コミなどの情報よりは,査読者を介している論文の方が情報の正確性は長けている.論文検索の際,使用する論文データベースとしては,PubMedや医中誌Web,Cochrane Library等がある.これら有効活用することで必要な情報を得ることができる.

    その際,PICO/PECOで提起した事項に対して研究デザインの検討及びその中でエビデンスレベルの高い論文を選択する必要がある.米国医療政策研究所(Agency for Healthcare Research and Quality)がエビデンスレベルを提示している.表2に記載するので参考にして頂きたい.

    【論文検索に役立つコラム】
    「インターネットを活用した論文の検索方法と読み方」(谷口 隆憲 著)

    Step3:情報の批判的評価

    Step2で,得られた情報の正確性を吟味する作業を行う.例え一次情報であっても,交絡因子の配慮が不十分であったり,評価者の盲検化といった実行バイアス,主要アウトカムの報告がなされていない,などの可能性がある.

    その例としてBoutronら³⁾ は抄録や本文の結果,考察,結論などが意図に関わらず歪められている「SPIN」に関して医療分野(外科学,産化学,心臓病学,等)のRCT論文を対象に行った研究がある.

    この研究では205件のRCT論文のうち主要な結果が統計的に有意差ないと示された72件の論文を特定して評価された.結果は72件の抄録のうち49件(68.1%;95%CI,56.0%―78.6%)および44件(61.1%;95%CI,48.9%―72.4%)の本文は,少なくとも1つのセクションにSPINがあると分類された.

    また論文の40%以上が少なくとも本文で2つのセクションでのSPINを認めた.その他にHowardら⁴⁾はインパクトファクター(学術雑誌の影響度を評価する指標)の高い神経学ジャーナルにおいてもSPINが認められている事を報告している.

    リハビリテーション分野においては藤本ら⁵⁾が多くのRCT論文でのSPINを認めたことを報告している.

    上記のことからエビデンスレベルが高い研究デザインや名高い学術雑誌であってもバイアスリスクが高い危険性を孕んでいることを心に留めて情報を吟味する必要がある.

    Step4:情報の対象者への適応

    これまでのstepで得られた情報を元に対象者に対して適応可能かを判断していく.
    参考にしているエビデンスと目の前の対象者の背景(疾患,病期,年齢,障害部位,等)が類似しているかどうかを吟味し,適応可能なエビデンスを選択していく.

    またいくらエビデンスレベルが高くても,資源(経済状況や機材)による問題や害の要素が大きかったり,対象者の意向に沿うものでなければ実施することは推奨されない.

    エビデンスレベル,対象者の価値観や利益,資源,医療者の専門的な知識や技術を統合した上で実施されることがEBMの実践における定義であることを忘れてはいけない.

    Step5:step1~4の再評価

    具体的にはstep1で設定したPICO/PECOの内容の妥当性,step2における論文の検索,収集の進め方,step3における批判的吟味の妥当性,step4における対象者に対するエビデンス適用の妥当性や実施結果などの振り返りを行なう.

    このように結果の事後評価を行なうことでリハビリテーションを実践するにあたって自身の臨床に対する批判的吟味を行なうことができる.
    批判的吟味をする姿勢が培われることで,結果が伴わなかった場合の修正が効き,対象者に対してより有効なリハビリテーションを提供することに繋がることが考えられる.

    また木村⁵⁾は自己の批判的吟味をすることをとおして新たな研究的疑問(reserch question:RQ)の抽出が行われ,より効果的な介入のための妥当性,信頼性のある臨床研究の展開につながることが期待されると報告している.

    まとめ
    今回は,EBMを実践するにあたって行なう5stepについて簡単に解説した.
    エビデンスを用いる為にはstep2でも触れたが研究デザインを知る必要があり,尚且つバイアス評価等の批判的吟味をする能力が必要となってくる.
    またリハビリテーション分野における医療の不確実性は高い為,特にstep4で情報を対象者に対して適応する際エビデンス重視とならずに,対象者の価値観や利益等を踏まえたEBMの遂行が望まれる.

    【解説動画】
    本コラムの解説動画です。コラムと併せて視聴いただくことで、理解を深める一助にされてください。

    【共著】
    横山広樹(関西医科大学くずは病院 リハビリテーションセンター  理学療法士)

    【引用文献】
    1.藤本修平,他:PT・OT・STのための診療ガイドライン活用法.医歯薬出版株式会社:1-2,2017.
    2.Boutron I ,et al:Reporting and Interpretation of Randomized Controlled Trials With Statistically Nonsignificant Results for Primary Outcomes .JAMA. 303(20):2058–2064,2010.
    3.Howard B et al . “Systematic review : Outcome reporting bias is a problem in high impact factor neurology journals.“ PloS one vol.12(7),2017
    4.藤本修平,他:リハビリテーション分野における論文報告の質-ランダム化比較試験を対象とした文献調査-.理学療法科学,33:669-674,2018.
    5.木村貞治:総論-レビューのための論文の検索・収集・整理.総合リハ,第46巻,4号:2018.

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