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  3. 医療保健領域における人工知能応用の現状①

AIは現在、医療保健領域においてどのような実践例があるのか。ここでは最近の報告のうち、国内外で実践されているいくつかの具体例をご紹介していきたいと思います。今回ご紹介する4つのAIの機能タイプもあわせて知っておくと、分類しやすくなります。

目次

    AIの機能別4タイプ

    前回記事「医療・ヘルスケア・スポーツ専門家のためのAI活用」では、大まかにではありますが、AIの概要についてお話させて頂きました。

    AIを体系的に学んでいくためには、数学・統計学・プログラミング・機械学習等、多岐にわたる知識が必要となってきます。

    このシリーズではそれらのような実践のための情報は思い切って割愛します。
    現在医療保健領域では、AIが国内外で実際にどのように実践・導入されているのかを、ご紹介していきたいと思います。

    まずはAIを、機能別に4タイプに分けると全体像がつかみやすくなりますのでご紹介します。

    図1に示すように、人の前頭葉や後頭葉、側頭葉や頭頂葉、そして小脳など各部位の役割に相当するように

    ①識別系AI(見て認識する)
    ②予測系AI(考えて予測する)
    ③会話系AI(会話する)
    ④実行系AI(身体/物体を動かす)

    といったタイプに分けます¹⁾。


    (図1 AIの機能別4タイプ)

    本記事ではまず①識別系AI、②予測系AIの2つの現場での応用例をそれぞれいくつか、ご紹介していきたいと思います。

    識別系AIの医療応用例

    近年のAI技術の発達により、「音声を認識するAI」、「画像を認識するAI」、「動画を認識するAI」などが普及してきています。

    医療の現場では、主に医師がこれまで行ってきたレントゲン画像やMRI(核磁気共鳴画像法)の画像における異常所見を見つける報告が、さまざま診療科で研究報告・臨床応用が多くなっています。

    肺がんのスクリーニングへの応用²⁾をはじめ、さまざまながんの画像診断技術が発達してきています。


    (医療画像からセラピスト・トレーナーが情報を得るのためは、十分な知識や経験が要求される)

    昨年開催された国際学会において、ある分野のエキスパートである医師の先生が海外のAI研究者による画像診断に関する講演を聞いたその日の夜の食事の席で、「もう10年もしないうちに、診断は我々医師の仕事ではなくなってくるかもしれない…」とおっしゃられていたのが印象的でした。

    業務が大きく変化するのはなにも医師だけではありません。
    たとえば、これまで患者やアスリートの動作の分析というのは、主にセラピストやトレーナーの方々の得意とする分野・技術の1つであったかと思います。

    近年は”OpenPose”や”VMocap”などに代表される、動画の中から人体の動きを自動で検出するシステムが開発されております。

    これまで優れたセラピストやトレーナーはリアルタイムでは単人数のみの分析を、それも基本的には経験則による分析しかできなかったかと思います。

    これらのすごいところは、リアルタイムでも複数人の動作を解析できるため、医療・介護領域ではデイケアなどの集団体操、病棟での集団レクリエーションにおいて対象者全員の動作チェックを、スポーツの現場では複数人が同時にプレイするゲーム中においても、選手全員の動作を定量的にチェックすることができるという点です。

    優れたセラピスト・トレーナーが監修した上で独自のAIアルゴリズムを導入し、製品開発することに至ることができれば、どうでしょうか?

    一流のチェック技術が、経験の浅い方であっても全国どこでも適応することも、可能になってくるかもしれませんね。

    予測系AIの医療応用例

    医療保健領域・あるいはスポーツの現場でよく遭遇する1つの愁訴として、いわゆる“腰痛”が挙げられます。
    現場では千差万別の病態評価や治療プログラム・対処方法がとられているのが現状かと思います。

    ある程度臨床・現場での経験がある方は、どういった方がほぼ自然によくなるか、どういった方が回復に難渋するかは予測もできるかもしれません。
    ですが知識や経験、技術も少ない若手の方ではなかなかそうはいきません。

    表面筋電図で体幹の動かした際の波形から得られるマップをAIが解析することで、予後が良好であるかどうか(回復が順調にいきそうかどうか)を判断することができるという報告が2017年に脊椎関連の有名ジャーナルである”Spine”に掲載されました3)。


    (このようなTopographyをみても、普通の人間の目ではなにも有用な情報は得られませんが…)

    また、そこまで重症でない腰痛がある方に対する臨床意思決定支援システムとしてのAIの報告も出てきています⁴⁾。

    初診でその方から得られた情報(体重変化、心理状態、筋力の変化等)をもとに、機械学習を用いて生成されたモデルを応用することで、どういった治療を受けるのが適切かを判断してくれるツールです。

    医師の診療を継続するか、理学療法の適応となるか、セルフケア程度で十分かなどが明らかになるようで、今後本邦にも応用・導入されてこないかが気になります。

    今回は腰痛に絞ってみましたが、運動器疾患はもちろん、脳神経疾患、循環器疾患、呼吸器疾患等さまざまな疾患の発症予測システムや予後予測システムの報告がここ数年は非常に増えてきています。

    いずれ、熟練の技術・知識がなくても病態の判断や回復の予測がAIにより可能になってくるとすると、我々はどのようなスキルを今後磨いていくべきか、ヒントが得られますね。

    さて、本記事では医療保健領域における、識別系AIと予測系AIの人工知能応用の現状についてお話させて頂きました。次回記事では、会話系AIと実行系AIについての情報を提供させて頂く予定です。

    次回もどうぞ、ご期待下さいませ。

    〈参考文献〉
    1)野口竜司著. 文系AI人材になる. 東洋経済新報社.
    2)中田典生. 画像診断と人工知能. 日本がん検診・診断学会誌. 2019.
    3)Naifu Jiang et al., A Machine Learning-based Surface Electromyography Topography Evaluation for Prognostic Prediction of Functional Restoration Rehabilitation in Chronic Low Back Pain. Spine. 2019.
    4)WO Nijeweme-d'Hollosy et al., Evaluation of Three Machine Learning Models for Self-Referral Decision Support on Low Back Pain in Primary Care. Int J Med Inform. 2018.

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